鎌倉のやわらかな光と潮風の中で、登場人物たちは今日も“第二のスタート”を切る。新しい通訳スタッフ・早田律子(石田ひかり)が「人生の第二のスタートなんです」と胸を張れば、定年後も現役で働く長倉和平(中井貴一)は「無理したい年ごろってある」と笑う。若さではなく、今の自分の輝きを信じる――それが今回のキーワードだ。
律子は初日だからか異様に張り詰めている。リラックスさせようと和平は和やかに話しかけるのだが、「甘やかさないでください」と言い出す律子。だが、観光客の通訳をはりきっている姿を褒められると、「私、未亡人なんです」とアプローチをかけていく律子。和平は意味がわからなくて困惑するが、亡き父が隠していた成人雑誌のタイトルが未亡人ものだったので、しかもそれが「倉ちゃん」宛ての段ボールに入っていたので、未亡人好きだと思い込んでいるのだ。
吉野千明(小泉今日子)は動悸をきっかけに医師・成瀬千次(三浦友和)と出会い、偶然ランチを一緒になり「走り続けるにはピットインも必要」と諭される。千次の穏やかなまなざしに照れながらも、千明は月9ドラマの新企画へ挑む決意を固める。還暦目前でも最高傑作を撮りたいという熱が彼女を前へ押し出す。
とおころで千次の亡き妻が千明にそっくりなことで、千明のことが気になっている様子。そんな特別な視線を千明も感じているようで、水野祥子(渡辺真起子)と荒木啓子(森口博子)の親友コンビには自意識過剰にならなようにたしなめられる。この3人の砕けた会話は、この作品の見どころの一つだ。
一方、和平は鎌倉の日本遺産ブランドを守るため、予算がないことで困っている。家庭では、病を抱える弟・真平が「毎日幸せだ」と語る姿に胸を打たれる。失う怖さを抱えつつも、今日より明日を良くしたい――そんな思いが世代を越えて響く。
刺激を求める人は他にもいる。水谷典子は「つまんねえ」の一言から、週刊誌の“湯けむり美人”スカウトを受けて“セクシー系セカンドライフ”に乗り出す勢い。バカげているようで、本人が楽しそうだから誰も止められない。人生は一度きり、やってみたいことをやる――そんな背中が少しうらやましい。
物語を包むのは、古都鎌倉の風景と長年の友人同士のたわいない会話。そのぬくもりが、登場人物の不安や張り切りをやさしく受けとめる。年齢を重ねるほど「無理しないで」と言われるが、本当は少し無理をしたくなる瞬間がある。挑戦の痛みも、仲間の笑い声があれば怖くない。
「若さより輝く時だってあるんだぜ」。このタイトルは大人たちへの応援歌だ。体力も肩書も若い頃ほどではない。けれど経験と愛着が紡ぐ今こそ、自分だけの光を放てる――本作はそう背中を押してくれる。次の朝が来るのが楽しみになる温かな一話だった。
この作品は、変わらないルーティンが描かれることがとても心地よい。毎朝、みんなで朝食をとり、遅刻しそうになって、夜飲みに行く。そんな繰り返しがなぜか退屈に感じさせない。役者の芝居が醸し出す空気感がいいのだろう。小泉今日子も中井貴一も本当に楽しんで演じているのだろうなというのが伝わってくる。
登場人物
吉野千明(小泉今日子)
長倉和平(中井貴一)
長倉真平(坂口憲二)
長倉万理子(内田有紀)
水谷典子(飯島直子)
長倉えりな(白本彩奈)
長倉知美(佐津川愛美)
水谷広行(浅野和之)
水野祥子(渡辺真起子)
荒木啓子(森口博子)
成瀬千次(三浦友和)
早田律子(石田ひかり)