ライアン・クーグラー監督とマイケル・B・ジョーダンが再びタッグを組んだオリジナル映画『Sinners(シナーズ)』が、北米週末興行収入で約4560万ドルを記録し、初登場1位を獲得した。R指定のヴァンパイア・スリラー作品ながら、高い評価と主演・監督コンビの知名度によって好調な滑り出しを見せた。
『Sinners』は、1930年代を舞台に、双子の兄弟スモークとスタック(ジョーダンが一人二役)が南部の故郷で開いたジューク・ジョイントに吸血鬼たちが襲来するという物語。劇場観客向け調査CinemaScoreではA評価を獲得しており、ホラー作品としては35年以上ぶりの高評価とされる。Rotten Tomatoesでも98%という高スコアを記録しており、口コミ効果も期待されている。
一方で、製作費は9,000万ドルに上るとされており、今後の収益動向が黒字化のカギを握る。業界アナリストのデヴィッド・A・グロス氏は、「時代背景のあるホラー映画としては優れたオープニングだ」としつつ、「莫大な製作費が利益確保のハードルを上げている」と指摘する。
IMAX・ドルビーなど高品質フォーマットが追い風に
観客の約45%がドルビー・4DXなどのプレミアムスクリーンで鑑賞し、IMAX単体でも20%を占めた。IMAXのCEOリッチ・ゲルフォンド氏は「クーグラー監督との協業は素晴らしい体験であり、『Sinners』が好調なスタートを切れたことを嬉しく思う」とコメントした。
観客の構成では、黒人が約40%、白人が35%、ヒスパニック系が18%、アジア系が5%と、多様な層に支持されたことが確認されている。
ジョーダン×クーグラー、ブランド化する実力派コンビ
ジョーダンとクーグラーは『クリード』『ブラックパンサー』などでも組んできたが、今回が完全オリジナル企画としての初挑戦。ワーナー・ブラザースは本作に対し、将来的にクーグラー監督が25年後に著作権を取得できるという異例の契約を結んだ。これはスティーヴン・スピルバーグでさえ得られていない優遇であり、スタジオの期待度の高さを物語っている。
『マインクラフト・ムービー』が第2位に後退も累計7億ドル突破
同じくワーナー・ブラザース配給の『マインクラフト・ムービー』は今週末4130万ドルを記録し、2位にランクイン。公開3週目にして全米累計は3億4400万ドル、全世界では7億2080万ドルを突破し、2025年におけるハリウッド映画として最大のヒット作となっている。
ワーナー復調の兆し 他作品の動向
ワーナーにとっては『Sinners』と『マインクラフト』の連続ヒットが、ロバート・デ・ニーロ主演の『The Alto Knights』、ポン・ジュノとロバート・パティンソンの『Mickey 17』といった不振作品のダメージを和らげる形となった。
ワーナー・ブラザース映画部門の共同代表、マイク・デ・ルカとパム・アブディは「『Sinners』と『マインクラフト』が多くの観客の心を動かしたことを嬉しく思う。映画は我々を別世界に連れて行く力を持っており、これからもスクリーンでしか体験できない物語を届けていきたい」と声明を出した。
興行全体は前年超えもコロナ前比では依然苦戦
Comscoreの集計によれば、今週末までの全体興行収入は前年同期比で5%増となったものの、2019年比ではなお29%下回っている。数週間前には前年比11%減、2019年比40%減という水準だったため、改善傾向にはある。今後は『サンダーボルツ』(マーベル)、『ミッション:インポッシブル/ザ・ファイナル・レコニング』(トム・クルーズ)、『リロ&スティッチ』(ディズニー)といった大作の公開が回復のカギを握る。
その他の作品:信仰映画、スパイアクション、インディーズも健闘
第3位はアニメーション信仰映画『The King of Kings』(Angel Studios製作)が1700万ドルで、前週比わずか10%減。累計では4500万ドルに達した。
第4位にはディズニー配給のスパイアクション『The Amateur』が680万ドルでランクイン。公開2週で国内累計2700万ドル、世界累計6400万ドルと伸び悩んでおり、6000万ドルの製作費に対して赤字の可能性が高い。なお、同じく不振となっている『スノーホワイト』は、2億5000万ドルの予算に対し、1億8400万ドルで足踏みしている。
第5位はA24製作の戦争スリラー『Warfare』で、480万ドルを記録。公開2週で累計1780万ドルに達し、インディーズとしては好成績だが、製作費2000万ドルの回収にはもう一押しが必要だ。
なお、ブリーカーストリート配給の『The Wedding Banquet』は初登場で約92万ドルと苦戦。1993年のアン・リー監督作の再構築として注目されたが、観客動員にはつながらなかった。