『恋は闇』第2話では、報道の倫理と、そこに交錯する人間の感情が鋭く描かれた。連続殺人事件「ホルスの目殺人事件」をめぐる取材を進める筒井万琴(岸井ゆきの)と設楽浩暉(志尊淳)の距離は、互いの想いと葛藤を通して急速に縮まっていく。冒頭とラスト、どちらも万琴と浩暉が同じベッドに寝ているシーンなのに、全くそこにある感情は異なっている。
物語は、万琴が目を覚ますシーンから始まる。隣にいたのは浩暉。万琴が酔い潰れた夜を介抱したという浩暉の優しさに、万琴の心は揺れているような、いないような。しかし、この時点では、彼女は他人の前に酔いつぶれて迷惑をかけたバツの悪さの方が勝っていそうだ。
一方、連続殺人「ホルスの目殺人事件」について、刑事の小峰正聖(白洲迅)と大和田夏代(猫背 椿)は、犯人が履いていたスニーカーと同型の靴を浩暉が持っていることに気づく。スニーカーは流通量が多く決め手に欠けるが、浩暉に対する疑念が生まれる。
テレビ番組「モーニングフラッシュ」では、鮮度あるネタはないのかと檄を飛ばす総合演出の野田昇太郎(田中哲司)が苛立ちを露わにする中、万琴は事件の専属チーフに任命される。新人ADの木下晴道(小林虎之介)は、スマホばかりいじっているが、リサーチだと言い張るなど、チームの士気も様々である。
万琴は苦手な遺族取材に挑むが、そこに現れた浩暉の過去のキャバクラ記事が原因で、取材拒否の憂き目に遭う。一度は浩暉の記事を「良い」と思った自分に嫌悪を感じた万琴は、親友の内海向葵(森田望智)にその思いを打ち明ける。向葵は「もう恋が始まっている」と言い、万琴の心の変化を言い当てる。恋の反対は無関心、少なくとも万琴はムカついてはいても、無関心ではないことは確かだ。
一方、浩暉は自身の手が血に染まった夢を見る。彼の過去を示唆するような不穏な描写である。また、万琴と浩暉は再び遺族取材を試み、テレビと雑誌の違いを語りながら、取材への理解を得ることに成功する。だが、顔出しNGという条件に野田は納得せず、「事件はエンタメだ」と言い放つ。確かに顔が写っているだけで映像の説得力は変わる。それでもカメラを向けることは暴力ではないかと万琴はなかなか割り切ることができないでいる。真摯な葛藤だと思う。
その帰り道、万琴は一人の高齢男性から事件の扱いを訴えられる。どのメディアも無視したという彼の声に、万琴は心を動かされる。浩暉は「地味な記事は埋もれる」と冷めた反応を示すが、男が自力で自販機の防犯カメラ映像を入手したと聞くと、なにかに気づいた様子で「なるほどねえ」とつぶやく。
その後、浩暉と万琴は、被害者の葬儀に出席。浩暉の影を追う怪しい男(萩原聖人)の視線を受けながら、万琴は香典袋に名刺と手紙を忍ばせ、取材への突破口を探る。ついに遺族の許可を得た万琴は、事件現場でもある自宅での撮影に臨む。
血痕の残る部屋で泣き崩れる母親を前に、万琴は一度はカメラを下ろしかける。しかし、浩暉の言葉に背中を押され、撮影を決意。遺族は、万琴と浩暉から届いた手紙に心を動かされたと語る。記者としての真摯な想いが、取材対象者の心を開いた瞬間であった。
万琴は手紙に、取材をしていいのか悩んでいると正直に打ち明けた。それがかえって遺族には真摯な態度に映ったようだ。浩暉の手紙には、犯人がどんな人生を送った人の命を奪ったのか教えてやりたいと書かれていた。それは遺族と全く同じ気持ちだったことで心が動かされたのだという。
万琴は渾身の取材映像が撮れた。いつもは手厳しい野田も絶賛した。しかし、その映像が放映されることはなかった。とつぜん、人気アイドルの略奪婚のスクープが飛び込んできて、番組の予定が変更になってしまったのだ。
失意の中、万琴と浩暉は遺族にその事実を伝え、「他人にこれ以上傷つけられたくない」と拒絶されてしまう。浩暉は「他の記事に埋もれないように仕切り直す」ととっさに言ってしまった自分を責め、万琴とともに悔し涙を流す。
この悔しさを万琴と浩暉は共有する。この時、初めて2人の気持ちが重なった。そして、二人は想いを押えきれずに求め合う。
一方、小峰は現場付近の車載カメラ映像を確認しようとするが、なぜか該当データが消されていた。その車の持ち主には浩暉が既に接触していたことが判明。果たして彼は、証拠隠滅を図っているのか。
2話にして、主人公の2人が結ばれることになった。浩暉は強引な姿勢ではあるものの、報道に対して真摯に向き合っている。だが、裏の顔があることも確かだ。彼の真意はどこにあるのか。車載映像のデータを消去したのは、誰なのか。萩原聖人が演じる男の正体はなにか。
そして、報道することの大切さと暴力性に対して、このドラマがどう向き合うのか。今後の展開も楽しみだ。