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Netflix映画『新幹線大爆破』は現代版パニックヒューマンドラマの秀作だった!草彅剛&のんら普通の人々ががんばる話


Netflixのオリジナル長編映画『新幹線大爆破』が好評だ。実際、僕も見たが面白かった。2時間17分と日本映画の中では長い方だが、飽きないで最後まで見てしまえる。

本作は、1975年の東映映画『新幹線大爆破』(佐藤純彌監督、高倉健主演)を原作にするオリジナルの映画という位置づけだ。というより実質、続編だ。舞台は現代に置き換えられ、キャラクターも一新されている。75年版のコアなアイディアを引継ぎ、その上で一部の登場人物に75年版と関わりを持たせている。とはいえ、75年版を見ている必要はあまりなく、見ていたら少し感情移入の度合いが違うかなくらいの感覚だ。

日本映画としてはビッグスケールの作品と言えるが、他国の大作映画と並べられても見劣りすることはない出来だ。

普通の人々が頑張るパニックアクション・ヒューマンドラマ

本作は、東京行きの東北新幹線に爆弾が仕掛けられ、その爆弾が時速100km以下になると爆発するという仕掛けになっている。そのために、走り出した新幹線は停まることができないし、駅でも減速できない。

そんな限定空間の緊迫した中で、乗り合わせた乗客と車掌、運転手の決死の行動が描かれる。そして、外ではJRの運航責任者たち、政治家、刑事が鎬を削る人間ドラマが展開される。

この映画の美点は、普通の人々が頑張るところにある。中心となる車掌の草彅剛も運転手ののんも、誰もスーパーヒーローではない。運航責任者の人々も同様だ。しかし、仕事の責務において、みんな自分のやるべきことを全うしようと全力を出す。そういう仕事する人の矜持みたいなものがたっぷり描かれる作品だ。

そして、そんな人たちの前にいろんなものが立ちはだかる。前に停泊する車両を交わす必要もあり、100kg以上の速度のまま線路の乗り換えを実行したりといったイベントが次々と襲い掛かってくる。

だが、それだけではなく乗り合わせた一癖ある連中が色々と騒ぎを起こしていく。人気YouTuberや、事故で多くの人の命を奪った会社の代表が暴れたりなど、社内でもいろんなトラブルが起きていく。このあたりは軽薄さもありつつ、しっかりと人間ドラマできているなという部分もありつつ、全体としては見ごたえあるものになっている。

基本的に、アクション映画というよりは人間ドラマだ。限定された空間でのパニック・アクション・ヒューマンドラマといった感じ。『タワーリング・インフェルノ』や『ポセイドン・アドベンチャー』に近い作品と言える。

前作とのつながりは?

そして、ドラマ的な見せ場は前作とのつながりの中で発揮される。75年版の犯人の関係者と警察関係者が登場し、その因縁が今回の事件にもつながっているという流れだ。

しかし、そこは知らなくても全然大丈夫な作りになっている。それら関係者の苦しみや悩みは、前作を見ていなくても充分にこの映画の中で描かれており、復習しないとついていけないということはない。

森達也がいい味出している。この役に森達也を起用するのはなかなか変化球だが、いぶし銀であった。

地道な作業が見せ場になる

この映画、派手な新幹線の爆破とか、あわや衝突かというような回避シーンとかももちろん見せ場なのだが、それだけでなく、地道に作業するシーンが面白いのだ。大急ぎで線路を拡張させるために、頑張る作業員とか、乗客の救出のために、走りながら車両を切り離す電気工事士のおじさんの作業シーンとか、連結する時にみんなで力を合わせて頑張るところとか、そういう地道な作業シーンがとにかくいいのである。

このあたりは『シン・ゴジラ』っぽいかもしれない。普通の人たちがその日常業務を結集させてゴジラを倒す『シン・ゴジラ』に対して、新幹線の爆破を阻止しようと、不通の人たちが普段の業務で培ったスキルと経験を生かして、力を合わせて危機に立ち向かう。

JR東日本が全面協力しているのも、このあたりの仕事人の矜持がきちんと描かれているというのも大きいのかもしれない。資本がでかいNetflix作品だからというだけではなく、JR的にもこの描かれ方なら、自社のブランディングとして効果的と思ったろう。

ちなみに、75年版を見ていなくても楽しめると書いたが、75年版もとても面白いので、そっちもぜひ見てほしい。新幹線が現代日本の何を象徴していて、どんな人物がそれに抗っている話なのかに注目するといい。