[PR]

桜井ユキ主演『しあわせは食べて寝て待て』第5話――干し柿の甘さが教えてくれる、変わっていける日々のこと


今一番心にしみるドラマは間違いなく『しあわせは食べて寝て待て』だ。何事も大きな事件が起きるわけじゃない、淡々とした日常に、温かい瞬間がたくさんある。

目の乾きに苦しむ麦巻さとこを、泣いているのではと勘違いする羽白司。気づけば、さとこの副業だったレンタルルームも辞めることになり、薬の量も増えている。家と会社を往復するだけの自分ような毎日は誰かにとってはつまらない人生かもしれない。でも、そうしかできない時もある――さとこは、そんな日々を生きている。さとこも好きでそうしているわけじゃないのだ。

山上りに挑むさとこ

そんなさとこが山登りに挑むことを決める。、司の趣味が山登りでたまにふらっと出かけていくのだそうだ。美山から「行ってみれば」と背中を押されるが、仕事があるからと一度は断るさとこ。しかし、山の緑に囲まれた妄想を浮かべるうちに、休みをとって登ってみようと心が動く。山ガール姿を想像して頬をゆるめるその瞬間、ほんの少し、彼女に陽の光が射した。上司もあっさりOKしてくれて小躍りする姿がかわいい。

しかし、いざ山に出かけてみれば、やはりさとこにとって山の坂道はきつい。けれど、司と共に食べた弁当の味と静かな自然に、少し心がほどけていく。ふと司が語り出す。祖母と母の介護、結婚を誘われた時に「まだ続くのか」と感じてしまった過去。自由でいなければ、自分が保てない――その言葉に、どこかさとこは自分を重ねる。

山でさとこは母からの電話にうんざりする。「働けないのに山には行けるのか」と詰られる。誰にも知られず、ただ呼吸を整えたくて登った山。それすら責められるのは、あまりに切ない。

司と父親の確執とは

だが、それでも山登りは良い気分転換になったらしい。美山はさとこに司のことをどう思っているのか尋ねる。そして、まださとこが知らない司の「父」の話を漏らす――。

時は2年半前にさかのぼる。美山が川沿いで出会った司。風邪をひいていた彼にスープを差し出し、今度は美山が寝込む。思い出の詰まった夫の部屋に、泊まっていくよう促す美山。朝食に司が作ったお粥と味噌汁、スクランブルエッグ――その味がまた、彼女の心を温める。

やがて司は、美山の家で彼女の思い出の品を整理する手伝いを始める。「写真に残して処分していこう」そのやさしい提案から、二人の距離が縮まり、司は住み着くことになった。

再び弓に部屋を貸すことにするさとこ

一方で、現在のさとこのもとには、レンタルルームで出会った女子高生・目白弓が再び訪れる。勉強できる場所が家にない、だからここを使わせてほしいと頼む。父親は大音量のテレビ、弟と部屋も共有。さとこは、お金を受け取らずに部屋を貸すことにする。

後日、弓の母が訪れ、お金の代わりにお米券を手渡す。「娘は難しい子だけど、ここに来るのを楽しみにしている」と言う。さとこは弓の家庭を心配していたが、母親のその言葉に少し救われる。

さとこは、牡蠣料理に挑戦する。不安を和らげる効能があるからだという。ふっくらと焼けた牡蠣を見つめるさとこの表情には、少しの自信と静かな喜びがにじんでいた。

「どうでもいい」とつぶやくことがある弓を、さとこは心配する。自分も同じ感情を抱いたことがあるからこそ、その行き先を知っている。くらい気持ちは、一度芽生えると根が深い。だから、彼女を守ってやりたいのだ。

そんなさとこに、司は干し柿を手渡す。それは、美山との思い出の品でもある。2年半前、司は父のことを語った。赤ん坊のころに蒸発した父。最低な男だと軽蔑していたのに、最近ではその気持ちが少しずつわかるようになってきた――それが怖いのだと。

甘い干し柿を渡す美山。「柿は身体を冷やすけれど、干すと変わる」。その言葉は、司の心にやわらかな灯をともす。そして今度は、その干し柿をさとこが受け取る。甘いものは、心を軽くする。干して、時を経て、変わるものもある――それを知ることで、人もまた少しだけ前に進めるのかもしれない。

『しあわせは食べて寝て待て』。何げない日々の中に潜む重さや痛みを、料理と会話と記憶の温もりで包み込む。干し柿のように、ゆっくりと優しく沁みてくる、そんな幸せがここにはある。

桜井ユキ主演『しあわせは食べて寝て待て』第3話感想 |“無理してた顔”を手放した女性の選択 – Film Goes with Net

『しあわせは食べて寝て待て』第2話レビュー:桜井ユキ、宮沢氷魚、加賀まりこが織りなす「ていねいな暮らし」と人間模様 – Film Goes with Net

【良作の予感】桜井ユキ主演『しあわせは食べて寝て待て』第1話レビュー:病と向き合う女性の静かな再出発 – Film Goes with Net

登場人物
麦巻さとこ(桜井ユキ)
羽白司(宮沢氷魚)
美山鈴(加賀まりこ)
唐圭一郎(福士誠治)
青葉乙女(田畑智子)
マシコヒロキ(中山雄斗)
巴沢(ともえざわ) 千春(奥山 葵)
反橋りく(北乃きい)
八つ頭仁志(西山潤)
高麗なつき(土居志央梨)
目白弓(中山ひなの)
麦巻惠子(朝加真由美