恵水流生(えみ・りゅうせい)監督の最新短編映画『Family And War』が、2025年カンヌ国際映画祭のショートフィルムコーナー(Short Film Corner | Rendez-vous Industry)で上映されることが決定した。
本作は、「戦場」と「家族喧嘩」という異なるようで似通った“争い”をテーマに据え、16mmフィルムによる詩的な映像美で観る者に問いを投げかける意欲作だ。
争いの本質に迫る『Family And War』とは
『Family And War』は、戦争という遠い世界の出来事と、身近な家族の口論を重ね合わせ、「なぜ人は争うのか」「争いを終わらせるために必要なことは何か」を静かに問いかける作品である。
舞台は、国や民族といった大きな対立ではなく、最も身近な存在である「家族」。相手を理解したいのにできず、わかりあいたいのに傷つけ合ってしまう――。そんな感情の根底には、戦争とも通じるものがあるのではないかという視点から物語は展開される。
監督の恵水流生は、前作『狐の嫁入り』で国内外の映画祭を賑わせた注目の若手映画作家。16mmフィルムならではのざらついた質感と詩的な映像が、本作でも強い存在感を放つ。
小田原の森を舞台に描く、兵士と少年の物語
撮影は神奈川県小田原市の森で敢行された。静寂の中に響く銃声や川のせせらぎ、朝の光に包まれる木々――。リアルと幻想の境界を16mmフィルムが繊細に描き出している。
主演には、実力派俳優の伊藤慶徳を起用。舞台、インディーズ作品、商業映画、ドラマと幅広く活躍し、ヤクザ者から心優しい人物まで演じ分ける力量を持つ。近年は『沈黙の艦隊』(吉野耕平監督)、『命の満ち欠け』(小関翔太・岸健太朗監督)などの話題作にも出演している。
【あらすじ】
森の中。川辺で対峙する兵士たち。その様子を遠くから見つめる少年・ヤマト。響く銃声、訪れる沈黙。ヤマトの瞳に映るのは、憎しみか、希望か――。そして兵士たちが辿り着く運命とは。
『Family And War』作品情報
-
タイトル:Family And War
-
監督・脚本:恵水流生(えみ・りゅうせい)
-
製作会社:株式会社emir heart
-
キャスト:伊藤慶徳、蓮尾たかせ、七海悠貴、古川時男
-
上映時間:14分(16mmフィルム撮影)
監督コメント
「争いは、遠い誰かの話ではなく、実はとても身近なところから生まれているのかもしれない。家族のなかにある“わかりあえなさ”と、世界の争いはどこかつながっている。この映画は、その痛みと希望の間を歩く作品です。」
(恵水流生/監督・脚本)