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娘の死と誘拐の衝動──北川景子主演『あなたを奪ったその日から』第1話の衝撃展開を考察


カンテレ・フジテレビ系のテレビドラマ『あなたを奪ったその日から』。主演の北川景子が演じるのは、娘を失った母・中越紘海。第1話は、その悲劇と、そこから始まる危うい方向性に向かおうとする母性愛の物語を静かに、しかし確実に深淵へと導いていく。

甲殻類アレルギーで娘を亡くした主人公

紘海は料理教室で包丁で指を切ってしまう。しかし、それはフリに過ぎなかった。YUKIデリの社長・結城 旭(大森南朋)に近づくための芝居だったのだ。彼女はこの男とどういう因縁があるのか、話は1年前にさかのぼる。

かつて、彼女には灯(あかり)という最愛の娘がいた。しかし、アレルギーを持つ灯が口にした惣菜ピザに甲殻類が混入しており、アナフィラキシーで命を落とすという痛ましい事故が発生したのだ。

そのピザの製造元こそが「YUKIデリ」だった。社長である結城は、会見で深く頭を下げるものの、責任の所在を曖昧にしたまま、どこか他人事のような態度を見せる。子どもの命を奪われた親の怒りと悲しみは、単なる「企業と消費者」の関係を超え、個人への憎悪へと変貌していく。紘海もまたやるせない怒りを抱えるものの、娘を守れなかった強い自責の念も抱え、怒りと自分を責める気持ちの板挟みになっていた。そして、夫に離婚を切り出し、一人で復習の計画を練るようになっていく。

復讐を考えるようになる紘海

やがて紘海は、事故の責任者・結城の住所や家族構成を調べ上げ、ついには彼の娘・萌子を誘拐するに至る。もちろんそれは、綿密な計画に基づいたものではなく、偶然のきっかけから起きた突発的な行動だった。しかし、娘を亡くした母の心は、すでに境界線を越えていた。灯の形見のリボンを萌子の首に巻き、命を奪おうとするその瞬間、紘海は灯の笑顔を思い出し、思わず萌子を抱きしめてしまう。

このシーンが、本作の第1話の核心である。人は、愛する者を失ったとき、どこまで壊れるのか。そして壊れた心が向かう先が、復讐か、それとも愛か──。紘海が萌子に「お母さん」と名乗る。これは単純な復讐の物語ではないかもしれない、復讐心と愛がねじれ合う、非常に危うい母性の物語として、展開していくのではないか。

ここで思い出したのは、坂元裕二脚本の傑作『Mother』だ。あれも誘拐して、実の娘のように育てようとする女性の物語だった。『Mother』の松雪泰子演じる主人公には復讐心はなく、逆探されている子どもを助けたい一心だったが。

とはいえ、結城家には母親がおらず、その理由は1話では明かされない。萌子は母親を恋しがっていると思しき描写もあり、ここに紘海の母性が萌子に届いてしまう可能性が生まれる構成になっている。

 

平祐奈は阿部亮平を誘惑する

長女の梨々子(平祐奈)が萌子に冷たいのも気にかかる。そして、梨々子はどうも性格の歪みがあるようだ。家庭教師の玖村毅(阿部亮平、Snow Man)を誘惑しようとするそぶりを見せる。結城家が何の問題もない家庭なのかどうかはまだわからない。

そして、甲殻類がどうしてピザに混入したのかの謎が残る。週刊誌の記者・東砂羽(仁村紗和)は、この事件について調べており、結城は何かを隠しているというタレコミがあり、それが事実なら結城は人殺し同然だという。この東の働きによって、本作はミステリー要素も持つような構成になっている。

第2話以降、紘海の選択がいかなる地獄を招くのか、あるいは救済へとつながるのか。すでに目が離せない。

Mother

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坂元 裕二
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