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『PJ ~航空救難団~』第2話 石井杏奈が演じる“女だから”を越える救難員の覚悟と成長


『PJ ~航空救難団~』第2話は、航空救難団という極限の現場を描く本作において、「女性であること」を巡る葛藤が前景化した。65期生の一人、藤木さやか(石井杏奈)の視点から、「女だから」「女なのに」といった社会的な視線をどう乗り越えるか、そして乗り越えた先に何があるかを示すエピソードであった。

女であるがゆえに──特別視と無視のあいだ

水中訓練で腕を封じられた状態での浮力維持に苦戦する藤木に対し、周囲は「65期の花」と形容する。だが、その言葉は無邪気な賞賛ではない。女性であるがゆえに過剰に注目され、同時に「救難員としては色物」と見なされる藤木は、「特別扱いはされたくない」と真っ向から抗議する。これは、男女平等を掲げながらも、実際には“女性性”を添え物のように扱う社会構造への違和感を代弁する姿だ。

さらに、勇菜(吉川愛)からのインタビュー申し込みに対し、「女だから大変なんじゃない、みんな大変だ」と拒絶する姿も印象的だ。自らの苦しみをジェンダーの問題として切り取られることを拒むその姿勢は、「女性であることを理由にしたラベリング」への反発である。

消費された「女性像」との距離

藤木は2年前、女性救難員の卵として取材を受けた際、「がんばる女子」の物語に仕立て上げられた過去を持つ。その時感じた「消費された」感覚こそ、彼女の心に深く刺さった棘である。同性の森野明里(野村麻純)が「女性であることを活かせばいい」と助言しても、藤木は「それで本当に認められたことになるのか」と自問する。

この問いかけは、「女性らしさを活かすことで評価される」ことへの根源的な疑義であり、真にフラットな評価とは何かを問うものだ。「女性として頑張る」のではなく、「個人として、仲間として力を尽くす」ことの方が、藤木にとってははるかに重みを持つ。

恐怖と信頼──水中で知る、仲間の意味

水中での応急対処訓練でパニックを起こしてしまう藤木。その姿を見て、仲間の一人・白河が足をすくませてしまう場面も印象深い。極限状況では、誰もが無力になりうる。だが、その中で「仲間を信じて補完し合えるかどうか」が救難団の本質であると物語は語る。

訓練の終盤、藤木と沢井(神尾楓珠)はバディとして再び挑戦する。以前はいがみ合っていた2人が、水中で見事に連携し、恐怖を乗り越える姿には、言葉以上の説得力があった。仲間を信じることが、性別や過去を越えて、人を救う行為そのものになる。

藤木は唯一の女性であるから、絶対に負けたくない、特別扱いされたくないという思いが強く、そのことがかえって他の訓練生に対して壁を作ってしまっていた。しかし、潜水は脱力が重要で、水中での応急対処は仲間を信頼してこそ達成できるものだと気づいた時、藤木は大きな前進をすることになる。

宇佐美の「心を丸投げしろ」という言葉の意味

指導教官・宇佐美(内野聖陽)の言葉「心を丸投げしろ」は、精神論ではない。極限状況において、計算ではなく相手への信頼と感情をぶつけることが信頼の礎になるのだと、彼は語る。藤木の苦しみを見続けてきた宇佐美の「女だからと言い訳にせず、逃げなかったお前はあっぱれだ」という一言は、性別を越えた真正の評価である。女性としてではなく、一人の仲間として見られた瞬間、藤木の心は救われたのだ。

PJは命だけでなく心も救えと宇佐美は第一話で言っていた。その言葉が実践されたエピソードになった。

第2話は、「女性であること」に起因する苦悩と、「仲間としての信頼」によってそこから脱却していく過程を丁寧に描いた回である。「女だからできない」と他人が言うのではなく、「女だからこそ」と自分に言い聞かせることなく、自らを突き詰める藤木の姿は、女性視聴者の共感を呼ぶだろう。救難団という男社会的な構造を舞台にしつつも、そこに女性が対等に立つための葛藤と突破の物語が、確かな説得力をもって描かれていた。

宇佐美は救助現場で助けを待つ人にとって、救助来た人間が男か女かは関係ない、そのために男女で訓練メニューを変えられないという。災害救助現場では人間社会の常識が通用しない。その常識外のものに挑むためには、社会の常識では測れない倫理観で対応していく必要があることを、本作は描いている。

登場人物
宇佐美誠司(内野聖陽)
沢井仁(神尾楓珠)
藤木さやか(石井杏奈)
白河智樹(前田拳太郎)
長谷部達也(渡辺碧斗)
西谷ランディー(草間リチャード敬太(Aぇ! group))
東海林勇気(犬飼貴丈)
近藤守(前田旺志郎)
乃木勇菜(吉川愛)
上杉幸三(和田正人)
沢井瑞枝(奥貫薫)
仁科芽衣(黒川智花)
大山順一(眞島秀和)
滝岡賢(長谷川朝晴)
中林誠(高岸宏行(ティモンディ))
森野明里(野村麻純)
堀越正一(宍戸開)
仁科蓮(濱田岳)
乃木真子(鈴木京香)