5月4日「スター・ウォーズの日」を記念し、映画『スター・ウォーズ』の誕生秘話を描いたコミック『ルーカス・ウォーズ』について、映画監督の山崎貴氏と樋口真嗣氏が語り合う特別番組『俺たちのスター・ウォーズ』が、キネマ旬報社の公式YouTubeチャンネルにて配信されている。
山崎監督(『ゴジラ-1.0』)と樋口監督(Netflix『新幹線大爆破』)はともに1960年代生まれで、1978年に日本公開された『スター・ウォーズ』に強い影響を受けた世代である。番組では、同作の創造者ジョージ・ルーカスの挑戦を描いた仏発のグラフィックノベル『ルーカス・ウォーズ』を手に、映画制作の原点を語る濃密な対談が展開された。
伝説の幕開けを語る、熱量あふれる対談
番組冒頭、山崎監督は「スター・ウォーズ」が自身の映画キャリアの原点であると語り、劇中で描かれるルーカスとスタッフの苦闘に共感を示す。一方、かつて『宇宙からのメッセージ』を支持していたという樋口監督との軽妙なやりとりが、映像クリエイター同士の信頼関係と“推しカルチャー”への愛を浮き彫りにする。
番組では、ルーカスがイラストレーターのライフ・マクォーリーに構想を伝える場面に焦点が当てられ、「この段階ですでに世界観が完成していた」と両監督は驚きを隠さなかった。また、VFXの先駆者たち──ジョン・ダイクストラ、ジョー・ジョンストン、ベン・バートらの仕事ぶりも詳細に語られ、映像技術の革新を支えた人物たちへのリスペクトがにじむ。
ILM創設とVFX史の転換点
山崎監督は、「自分のお金で全てを立ち上げたルーカスは、まさに超絶先駆者」と評し、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)が後のプリビズ(Pre-visualization)手法を確立するに至った経緯を解説。黎明期のVFX制作現場の混乱と、それを乗り越えてスタンダードを築いた功績に言及した。
また、音楽パートの収録を「収穫祭のような幸せな時間」と形容する山崎氏に対し、「まだ何かできるのでは」と語る樋口氏との対比も、映像作家としての志向の違いが浮かび上がる興味深い一幕となっている。
『ルーカス・ウォーズ』の魅力と意義
『ルーカス・ウォーズ』(キネマ旬報社刊)は、脚本・演出・編集のすべてを掌握し、スタジオ幹部や現場スタッフとの軋轢を乗り越えて『スター・ウォーズ』を完成させたルーカスの奮闘を描く大河ドラマ的ノンフィクションである。完成直後の社内試写で酷評されながらも、公開と同時に世界的ヒットを記録した“逆転劇”は、「痛快でしかない」(山崎)と最大限の称賛が贈られた。
両監督は「SWファンなら必携の一冊」(山崎)、「末代まで語り継ぎたい」(樋口)と口をそろえて本書を推薦し、番組内でサイン入り書籍を販売。5冊の限定本は配信直後に即完売した。
映像業界に示す“原点回帰”の意義
本番組と『ルーカス・ウォーズ』は、映画制作における困難と創造、そして業界革新の歴史を俯瞰する貴重な資料である。新技術の導入やスタジオ体制の変化が進む現代の映像業界においても、創造の原点に立ち返る機会を提供するコンテンツとして位置づけられるだろう。
番組は全8話構成で、計66分。現在、YouTubeのキネマ旬報チャンネルにて無料公開中である。『ルーカス・ウォーズ』はKINEJUN ONLINE SHOPおよびAmazonにて販売中。電子書籍版も用意されている。
なお、5月11日までの期間中、KINEJUN ONLINE SHOPで書籍を購入したユーザーには、発売1周年を記念した非売品のアクリルスタンドキーホルダー(4種セット)がプレゼントされる。
番組タイトル:俺たちのスター・ウォーズ
出演:山崎貴(『ゴジラ-1.0』監督)、樋口真嗣(『新幹線大爆破』監督)
配信:キネマ旬報YouTubeチャンネル
URL: https://www.youtube.com/playlist?list=PLt8OOIdL02TW9tPTgotcFE5V-J5OdeVbl
書籍情報:
『ルーカス・ウォーズ』作:ロラン・オプマン/画:ルノー・ロッシュ
監修:河原一久/翻訳:原正人
A4判/208頁/価格:4620円(税込)/電子版:2500円(税込)