俳優ウィレム・デフォーが主演を務める英語のダークコメディ映画『The Souffleur(ザ・スフルール)』が制作中であることが明らかになった。監督はアルゼンチン出身の注目若手、ガストン・ソルニツキ。本作は現在ポストプロダクション段階にあり、カンヌ・フィルムマーケットを前に、Magnifyがオーストリアを除く全世界での販売権を獲得した。
舞台はウィーンのインターコンチネンタルホテル。デフォーはこの歴史的ホテルの名物支配人を演じる。ホテルがアルゼンチンの開発業者によって買収され、全面的に取り壊され再建されることを知った彼は、強い執着と偏執的な行動に突き動かされて新オーナーへの復讐に乗り出す。やがてホテルの配管は詰まり、時計は狂い、彼の代名詞だったスフレさえ膨らまなくなるという奇妙な現象が次々と起こる。
共演には監督でもあるソルニツキのほか、新人のリリー・セン、ステファニー・アルゲリッチ、クラウス・フィリップが名を連ねる。撮影監督には、ミゲル・ゴメス監督の『Grand Tour』でカンヌ監督賞を受賞したルイ・ポシャスが起用された。
本作の製作は、ウィーンを拠点とするLittle Magnet FilmsおよびKGP Filmproduktion、また『Peter Hujar’s Day』のプロデューサーであるエウヘニオ・フェルナンデス・アブリルが担当。プロデューサーの一人であるMagnifyのオースティン・ケネディ氏は「デフォー演じる“スフルール”を中心に、階級や現代性を風刺的に描いた魅力的な作品。ソルニツキ監督のキャリアで最も野心的な試みだ」と述べている。
ソルニツキ監督はこれまでにも『Kékszakállú』でヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に出品し、国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI)を受賞。『Introduzione all’Oscuro』や『A Little Love Package』などの作品もベルリンやトロントをはじめとする主要映画祭で高く評価されてきた。
本作の着想は、ブエノスアイレスのレストランでの失敗体験に由来するという。監督自身が若い頃にフランスの伝統的な料理学校で学んだ経歴を持ち、「スフレは愛と信仰の行為」だと語る。作品は、ルイス・ブニュエル作品に通じる超現実的かつ寓意的な展開を取り入れながら、建物と人間の“崩壊”を重ね合わせたストーリーとなっている。
監督とデフォーは本作で初タッグを組む。ソルニツキは「創造的に最も過酷で、最も豊かなコラボレーションだった」と振り返り、「互いの世界が予想外に共鳴し、個人的かつ生命力に満ちた作品が生まれた」と述べている。
デフォーは現在、ジェニファー・ピーダム監督『Tenzing』の撮影中で、最近ではケント・ジョーンズ監督作『Late Fame』を撮り終えたばかり。今後はナディア・ラティフ監督の『Man in My Basement』やミゲル・アンヘル・ヒメネス監督の『The Birthday Party』、パトリシア・アークエット監督の『Gonzo Girl』などが控えている。
Magnifyはほかにも、イザベル・ユペール主演の『The Blood Countess』や、Film4と共同製作したラファエル・マヌエル監督作『Filipinana』、ベルリン世代部門受賞作『The Botanist』(監督:ジン・イー)など、注目作の販売を手がけている。