TBSの日曜劇場『キャスター』第4話のテーマは家族と報道の責務の相克といったところか。仕事としての報道と家族を守ること、どっちが大事か葛藤する父親の姿が描かれた。
夜明け前、暗がりの中を歩く若い女性が背後から男に襲われるショッキングな幕開け。事件の不穏さを強調する導入は、その後の物語に影を落とす。
舞台は変わり、とある高校で発覚した更衣室の盗撮騒ぎ。女生徒・灯里(あかり)は、ニュースゲートの記者・海馬浩司(岡部たかし)の娘。自身の娘が被害に遭ったかもしれないという憤りに、海馬は父としての顔を露わにする。一方、進藤壮一(阿部寛)は部下・本橋悠介(道枝駿佑)に早朝から警察への張り込みを命じ、情報収集を急がせる。記者たちは日常のニュース報道とは異なる緊張感の中に身を置いている。
海馬は現場の会議で、新コーナーとして「未来のスター発掘」企画を提案するが、進藤がこれを意外にも好評価。娘の通う学校での取材を通じて盗撮問題を掘り下げようという算段だ。ほどなくして、女子大生殺人事件で誤認逮捕されていた吉木が釈放されたという情報が入り、その瞬間を中継する。これは進藤の仕掛けた報道プランだった。
私情を報道に挟んでいいか
進藤と本橋、崎久保華(永野芽郁)は、取材を名目に学校を訪問。実は本橋には、海馬から娘・灯里が被害に遭っていないか内々に調べるよう密命が下っていた。報道と私情の境界が揺らぐ場面である。
その頃、進藤に一本の電話が入る。電話の主は娘のすみれ。離婚後疎遠になっていた娘との会話に、彼の表情は複雑に歪む。さらに、学校の裏サイトの存在が浮上。灯里が顧問教師・芳賀を擁護する書き込みをしているという。教師が盗撮事件に関与している可能性がある中で、灯里の行動が意味を持ち始める。
やがて灯里は崎久保に、自身が盗撮に関与していた過去を告白。「ヒロト」と名乗る人物に脅され、家族への危害をちらつかせられていたという。真相を知った進藤は、記者の原則を口実に灯里の取材を強行しようとし、海馬と対立。家族を守りたいという海馬の思いと、報道の意義を説く進藤の信念が激突する。
事態は緊迫のクライマックスへ。灯里のSNSに、ヒロトからの呼び出しメッセージが届く。実は進藤の策略で、灯里に成りすました崎久保が囮となってヒロトを誘き出す(ここでは永野芽郁が中学の制服姿を披露していてSNSが盛り上がった)。学校の警備員として働いていたヒロトが現れ、襲いかかるが海馬が飛びかかるも返り討ちに。最終的に灯里は父と和解し、自らの過ちを報道を通じて証言することを決意する。
「社会を少しでも良くするためにニュースをやっている。それは灯里が大事だから」。かつて父から言われたこの言葉の意味を、灯里はようやく理解する。そしてその証として、ニュースゲートで彼女の取材映像が放送される。
しかし事件はまだ終わらない。ヒロトは真犯人ではなかった。闇サイトは偽装であり、すべては灯里を罠にかけるための工作だった。誤認逮捕された吉敷こそが真犯人であることが、進藤の粘り強い追跡によって明らかになる。
同時に、進藤が追っていた臓器売買の闇組織のロゴが盗撮サイトに発見される。報道の矛先は、さらに大きな社会悪へと向かいはじめている。
家族と報道、二つの正義が交錯する
第4話では、「家族の私情」と「報道の責務」という二つの正義がぶつかり合う様を描いた。海馬の「父」としての怒りと葛藤、進藤の「記者」としての冷徹さと内に秘めた後悔。彼らの行動は対照的でありながら、どちらも真実と向き合う姿勢を貫いている。
また、灯里やすみれといった若い世代の心の揺れも丁寧に描かれ、報道によって傷つく人々の姿と、そこからの再生への希望が提示された。犯罪報道というジャンルにおいて、“真実”がいかに人の人生を左右するかを見せつけた一話である。
また進藤の真の目的が顔をのぞかせたエピソードでもあった。回想シーンで進藤の妻が通り魔に刺されるシーンがあったが、妻との離婚と報道マンとして追いかけている事件に関連があるのか、ここにも家族と報道の交錯がある。
登場人物
進藤 壮一(阿部寛)
崎久保 華(永野芽郁)
本橋 悠介(道枝駿佑)
小池 奈美(月城かなと)
尾野 順也(木村達成)
チェ・ジェソン(キム・ムジュン)
戸山 紗矢(佐々木舞香)
鍋田 雅子(ヒコロヒー)
松原 哲(山口馬木也)
崎久保 由美(黒沢あすか)
横尾 すみれ(堀越麗禾)
進藤 壮一 (幼少期)(馬場律樹)
羽生 剛(北大路欣也) (特別出演)
尾崎 正尚(谷田 歩)
羽生 真一(内村 遥)
滝本 真司(加藤晴彦)
南 亮平(加治将樹)
梶原 広大(玉置玲央)
安藤 恵梨香(菊池亜希子)
市之瀬 咲子(宮澤エマ)
海馬 浩司(岡部たかし)
山井 和之(音尾琢真)
国定 義雄(高橋英樹)