「あなたのことが気になるのは、10年前に亡くなった妻に似ていたから」。成瀬千次(三浦友和)は、吉野千明(小泉今日子)に打ち明ける。千明が初めて診察に来たとき、驚いたのだという。挙動不審だった理由を謝罪する成瀬に、千明は「気があると思っていたから残念」と冗談めかしながらも、その律儀さに好感を抱く。彼女の中に「愛される人生も悪くない」という想いが芽生え始めていた。
和平は市長選出馬の打診が受ける
一方、長倉和平(中井貴一)は、現職市長から次期市長選への出馬を打診される。自己評価の低い和平に対し、市長は「困るのが誠実な人間の証だ」と告げ、期待のまなざしを向ける。「期待される時間を味わえ」という助言に、和平はその世界の一端に心を動かされていく。
市長のポスターに自分を重ねて妄想し、ニヤける和平。その姿を目撃した千明は「じゃあデートでも」と冗談交じりに誘う。悪道で足を取られた千明の「鎌倉市長になって直してよ」の一言が、和平の胸に刺さる。
その後、2人のインバウンド観光の話は盛り上がるが、場面は一変。長倉真平(坂口憲二)一家が現れ、真平の様子に不安を感じさせる空気が漂う。
「助けて、くらちゃん」
そこへ和平に「助けて、くらちゃん」と早田律子(石田ひかり)から電話。駆けつけた和平が出会ったのは、観光中の未亡人。律子は孤独と苛立ちで他の観光客とトラブルを起こし、和平に「身体の関係を持ちたい」と突飛な提案までしてしまう。キャラの濃さが際立つ律子の奔放さは、一種の癒しでもある。
一方、千明は担当ドラマの時間帯昇格の報を受ける。しかし、予算は据え置きで結果を求められるという現実。チームは困惑しつつも前向きに盛り上がる。
夜、千明は長倉万理子(内田有紀)に「話がある」と連絡。万理子は「合わせる顔がない」と言い、自分の中にやりたいことが見つからず、自分の企画が出せないと打ち明ける。だが、原因もわからず流れる涙は、成長の兆しだと千明は優しく言う。「いつか心の成人式を迎える日が来る」と語る千明に、万理子は「あなたから離れたくない」と涙ながらに訴える。千明はそんな万理子の心の芽生えを見逃さず、希望を語る。
そして、長倉えりな(白本彩奈)は、海辺でゴミ拾い中に優斗と再会する。青春の一場面としての再会が、物語の中で静かに温もりを灯す。
真平に典子が説教
翌朝、長倉家では真平の件で家族会議が開かれる。水谷典子(飯島直子)は、真平がかかりつけ医の死を黙っていたことを責める。「逃げてるでしょ」と真平を叱り、「死を見たくない、考えたくない気持ちはわかる。でも家族はあなたをわかろうと努力している」と言葉を投げかける。和平は「心配かけたくないなんて、家族にとっては一番悲しい言葉だ」と重く静かに語る。そして、「今すぐ知美(佐津川愛美)のところに行って話せ」と背中を押す。
真平がいない間、長倉家は家業である民宿の団体客対応で大忙し。帰宅した真平を迎える家族のぐったりした様子に、家族の支え合いがにじみ出る。
千明はこの日、出会った人たちと次々に記念写真を撮っていた。59歳、独身。それでも周囲には笑顔があふれ、心の通い合いがある。母親は「心配している」と言うが、千明は結婚に縛られない幸せな人生を歩んでいる。その姿は、形にとらわれない豊かな生き方を体現している。
登場人物
吉野千明(小泉今日子)
長倉和平(中井貴一)
長倉真平(坂口憲二)
長倉万理子(内田有紀)
水谷典子(飯島直子)
長倉えりな(白本彩奈)
長倉知美(佐津川愛美)
水谷広行(浅野和之)
水野祥子(渡辺真起子)
荒木啓子(森口博子)
成瀬千次(三浦友和)
早田律子(石田ひかり)