巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が手がけた最新作『Megalopolis(メガロポリス)』が、劇場公開を続けるなかで再評価の兆しを見せている。初公開時には批評的にも商業的にも不振に終わった本作だが、2024年の米大統領選でドナルド・トランプ氏が再選した後、特に若年層や都市部を中心に「予言的作品」としての注目が集まっているという。
劇場上映が続く理由──「所有されるべきではない作品」
コッポラ監督はGQ誌のインタビューで「『Megalopolis』はまだ配信もソフト化もされていない。なぜなら劇場でこそ観るべき作品だからだ」と語っている。「私はこの映画を誰にも所有してほしくない」とも述べ、映画の本質的な体験は映画館での集団的鑑賞にあるという信念を強調した。
この発言には背景がある。『Megalopolis』は、近未来のニューヨークを舞台に、古代ローマ帝国の政治的崩壊を現代に重ね合わせた野心作。コッポラは「アメリカはローマと同じ道を辿る。共和国を失うかもしれない」と作品のテーマを語り、選挙後の現在、このメッセージに共鳴する観客が増えていると述べた。
実際にボストンやデトロイトなどでは上映回が完売し、「まるで『地獄の黙示録』のときのような反響だ」と語っている。
120億円を投じた大作、酷評にも関わらずカルト的人気へ
コッポラは『Megalopolis』に自ら1億2000万ドル(約180億円)を投じ、1983年から構想してきた本作を完成させた。しかし、批評家からは酷評され、全世界での興行収入はわずか1430万ドル(約21億円)にとどまった。それでも彼は「『地獄の黙示録』と同じように、時間が経てば評価される」と信じているという。
主演はアダム・ドライバーで、コッポラは「金に左右されない創造性」を称えられた。
トランプ政権の関税政策に反発──「豊かな国が自ら扉を閉ざす行為」
インタビューのなかで、コッポラはドナルド・トランプ前大統領が提案した「外国製映画に対する100%の関税」に対しても強く反発した。「この関税政策が意味するのは、単に不確実性を生み出すことだ」と述べ、過去の経済政策との比較を交えて批判した。
「前政権下でアメリカ経済は世界的インフレのなかでも最も成功していた」と指摘し、関税による閉鎖的政策が、その豊かさを自ら閉ざす結果になりかねないと警鐘を鳴らした。
トランプ氏は先週、「海外で制作される映画は国家安全保障上の脅威」とし、100%関税を導入する意向を示している。これにより、グローバルな映画制作に大きな影響が及ぶ可能性がある。
ソース:Francis Ford Coppola Talks ‘Megalopolis’ Cult Status & Trump’s Tariffs