押井守×天野喜孝による伝説的アニメ、40年の時を経てカンヌ初上映へ
アニメーション映画『天使のたまご 4Kリマスター』が、第78回カンヌ国際映画祭(2025年5月13日[現地時間]開幕)クラシック部門(カンヌ・クラシックス)に正式出品されることが決定した。本作は押井守が原案・脚本・監督を務め、アートディレクションを天野喜孝が手がけた1985年の異色作であり、今回の上映が世界初となる4Kリマスター版のワールドプレミアとなる。
クラシック部門は、過去の映画史に重要な位置を占める名作を修復し再評価する目的で2004年に創設された。日本作品ではこれまでに黒澤明監督『七人の侍』4K修復版や、日本初のカラー長編アニメ『白蛇伝』などが上映されてきた由緒ある部門である。なお、押井守の代表作『イノセンス』も同年のカンヌで公式コンペティション部門に選出されている。
『天使のたまご』は、今年2025年に公開40周年を迎えるにあたり、35mmフィルム原版からのスキャニングと4Kリマスター化を実施。音響はDolby Atmos仕様にリミックスされている。リマスターは押井守自身が監修した。さらに、サウンドトラック盤『天使のたまご 音楽編「水に棲む」』も徳間ジャパンコミュニケーションズより発売され、アナログLPおよびUHQCDとして入手可能となっているほか、各種音楽配信サービスでも配信中である。
押井守・天野喜孝、出品へのコメント
押井守は「巧く世の中に出してあげられなかった不憫な娘のような作品」と『天使のたまご』を形容し、「ひとりでも多くの方に見ていただければこれに優る幸せはありません」と語った。
一方、天野喜孝は「原版制作当時30歳そこそこの僕には思いもよらない快挙」と驚きを述べ、「あの頃の苦労が40年の時を経て報われたような気持ち」と喜びを語っている。
『天使のたまご』とは
本作は、水没した都市を舞台に、謎めいた少女と少年の出会いと別れを描く幻想的なアニメーションである。少女は天使のたまごを抱き守り続け、少年は夢に見た“鳥”を探して街を彷徨う。言葉少なに展開される物語は、観る者に深い余韻と哲学的問いを投げかける。
制作当時としては異例の少ないカット数(約400カット)、台詞の抑制、長回し、モノトーンに近い色彩といった禁欲的なスタイルが話題となり、押井守が初めて手がけたオリジナル長編作品としても高く評価されている。
作品情報
原案・脚本・監督:押井守
原案・アートディレクション:天野喜孝
美術監督:小林七郎
作画監督:名倉靖博
音楽:菅野由弘
キャスト:少年=根津甚八/少女=兵藤まこ
初出:1985年OVA・限定劇場公開
配給・製作:徳間書店
カンヌでの上映を皮切りに、『天使のたまご 4Kリマスター』は今後、全世界での展開を予定している。アニメ史における重要作の復活と世界的再評価に注目が集まる。
公式X(旧Twitter):@AngelsEgg_anime