豪州・インドの映画共同製作協定を背景に誕生した新ファイナンス企業「Southern Sitara」が、2025年カンヌ国際映画祭マーケットにて正式発表された。文化的真正性と投資効率を両立する新たな試みに注目が集まっている。
オーストラリアとインド間の映画共同制作に対する関心の高まりを受け、両国市場を結ぶ新たなファイナンス・ベンチャー「Southern Sitara」が誕生した。同ベンチャーは、オーストラリアとインドの共同製作協定を活用し、320万~700万米ドル(約500万~1100万豪ドル)規模の映画作品を対象とする。
ハイブリッド型資本モデルで制作資金を確保
「Southern Sitara」は、自社資金と共同調達資金を組み合わせたハイブリッド型の資本モデルを採用。開発資金や製作投資、ギャップファイナンス、キャッシュフロー融資など、クロスボーダー制作における課題に対して包括的に対応する。
同ベンチャーは、東南アジア、ロンドン、オーストラリアに投資ネットワークを有するロシュニ・パンデイ氏とジャグディッシュ・シドゥ氏の投資家コンビと、『Australia India Film Fund』創設者で映画監督のアヌパム・シャルマ氏により共同設立された。シドニーのディズニースタジオ・オーストラリアを拠点とする制作会社Templeと連携し、開発から配給までを一貫して支援する体制を整える。
現地パートナーとインセンティブ制度を活用
同プロジェクトには、既にJhumka Filmsのプラドニャ&テジ・デュガル氏、ロンドンのメディア投資家ジャッキー・ミラー=チャールトン氏、シドニーの投資家チャンドル・トラニ氏、エンジェル投資家シャル・クンドラ氏らが参加。配給面では、英語作品はIcon Film、インド語作品はForum Filmsとそれぞれファーストルック契約を締結している。
「私たちは、映画投資のリスクを軽減するビジネスモデルを試行してきた。オーストラリアの協定とインセンティブ制度が、こうした取り組みを支えている」とパンデイ氏は述べている。
初期ラインナップに文化融合型作品が並ぶ
最初のラインナップには、アヌパム・ケール主演・監督のスリラー『The Return』(オーストラリアで撮影)、ファースト・ネイションとインド神話が交差するホラー『Shadows』、インドのカントリー歌手ボビー・キャッシュに着想を得た『The Indian Cowboy』などが名を連ねる。
開発中のタイトルには、Screen AustraliaとScreen Queenslandが支援するリチャード・ジェームソン監督作『Bidjara Kumari』、Screen NSWおよびSBSが支援する『Framed』も含まれる。
また、『Last Cab to Darwin』のリサ・ダフ氏、『Downriver』のジャニーン・バーンズ氏、『Bromley – Light After Dark』のキャシー・ロッダ氏、『The Flood』のヴィクトリア・マッキンタイア=ワーフ氏といったオーストラリアの著名プロデューサー陣が参画する。
投資回収性と文化的意義の両立を目指す
ファイナンス・コンプライアンスはシンガポール拠点のシドゥ氏が、戦略・投資家対応はパンデイ氏がそれぞれ担当する。「オーストラリアの制作インセンティブと条約は、映画投資においてリスクの少ない道を提供しており、高い投資回収性と文化的価値の両立を可能にしている」とシドゥ氏は語る。
「Southern Sitara」は、グローバルな観客と出資者をつなぐ新たなプラットフォームとして、今後の国際共同製作のモデルケースとなる可能性を秘めている。
ソース:Australia-India Financing Entity Southern Sitara Bows at Cannes Market