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米ビルボード「2025年グローバル・パワー・プレイヤーズ」に日本から4名選出 世界音楽市場は過去最高の296億ドル規模に


世界音楽市場が拡大を続ける中、業界の舞台裏で活躍するエグゼクティブを称える米ビルボードの「2025年グローバル・パワー・プレイヤーズ」が発表され、日本からエイベックス黒岩氏ら4名が選出された。

世界音楽市場が過去最高を記録、ストリーミングが200億ドル突破

米音楽業界誌ビルボードが30日、音楽業界で影響力を持つエグゼクティブを選出する「2025年ビルボード・グローバル・パワー・プレイヤーズ」を発表した。

国際レコード産業連盟(IFPI)が発表した「グローバル・ミュージック・レポート2025」によると、2024年の世界音楽レコーディング売上高は296億ドル(約4兆2,594億円)に達し、前年比4.8%の成長を記録した。この成長を牽引したのはストリーミング収益で、初めて200億ドル(約2兆8,778億円)を突破し、全体の約70%を占めている。

音楽著作権分野でも成長が見られ、著作権協会国際連合(CISAC)は楽曲権利者へのロイヤリティ徴収額が前年比7.6%増加したと報告した。ライブ市場においても、世界最大のコンサート・プロモーターであるライブネーションの2024年調整後営業利益が14%増加するなど、音楽業界全体の好調ぶりが浮き彫りとなった。

日本市場は横ばいも世界第2位を維持、新興市場が急成長

地域別では、米国が依然として世界最大の音楽市場を維持しているものの、2024年の成長率は2.2%と前年の7.2%から鈍化した。日本は世界第2位の地位を保ったが、成長は横ばいにとどまった。

一方、その他の主要市場では堅調な成長を記録した。英国4.9%増、ドイツ4.1%増、中国9.6%増、フランス7.5%増、カナダ1.5%増、ブラジル21.7%増、メキシコ15.6%増となった。韓国は5.7%減少した。

特に注目すべきは新興市場の急成長である。ラテンアメリカ22.5%増、中東・北アフリカ22.8%増、サブサハラ・アフリカ22.6%増と軒並み20%を超える伸びを示し、サブサハラ・アフリカでは初めて1億ドル(約143億円)の大台を突破した。

日本から4名のエグゼクティブが選出

ビルボード・グローバル・パワー・プレイヤーズは、所属企業や同業者の推薦を受けた候補者の中から編集部が選出するもので、米国以外の市場を主に担当し、世界音楽レコーディング収益の約60%を占める地域で活躍するエグゼクティブが対象となる。

今年、日本からは以下の4名が選出された:

  • 黒岩克巳氏(エイベックス株式会社 代表取締役社長兼CEO)
  • 林香里氏(株式会社ハヤシインターナショナルプロモーションズ 代表取締役)
  • 藤倉尚氏(ユニバーサルミュージックジャパン合同会社 社長兼CEO)
  • 齋藤妙子氏(EMPIRE アジア太平洋地域ビジネスアフェアーズ担当シニアバイスプレジデント)

エイベックス、米国新法人設立でグローバル展開を本格化

エイベックスの2024年最大の動きは、米国に拠点を置く新法人「エイベックス・ミュージック・グループ」の立ち上げだった。CEOにS10エンターテインメントのブランドン・シルヴァースタインを迎え、所属アーティストのグローバル展開や音楽出版事業の強化を進めている。

同社所属アーティストの成果も目覚ましく、ボーイズ・グループONE OR EIGHTが「Don’t Tell Nobody」でビルボードジャパンの「Heatseekers Songs」チャート1位を獲得。プロデューサー兼作家のグラントは、米ビルボード・アルバム・チャート「Billboard 200」1位を獲得したテイト・マクレーのアルバム『ソー・クロース・トゥー・ワット』に8曲を提供した。

黒岩氏は「グローバル市場でアーティストを取り巻くビジネス環境が進化する中、多角的な投資が重要になっている。そのためには強力な現地パートナー企業の存在が不可欠である」とコメントしている。

ユニバーサル・ミュージック・ジャパン、11年連続増収達成

ユニバーサル・ミュージック・ジャパンは2024年に11年連続となる収益増を達成した。藤倉氏は日本市場の課題について「特に若年層の人口減少が進む中で、市場を維持し続けることが最大の課題の一つである」と指摘。

成長維持のための戦略として「シニア層のユーザー拡大、ユーザー一人当たりの収益向上、海外市場の開拓」を挙げ、「市場の縮小を防ぐ戦略を実行する必要がある」と述べた。

H.I.P.、ライブネーション�傘下で存在感強化

日本最大級のコンサート・プロモーターであるハヤシインターナショナルプロモーションズ(H.I.P.)は、2024年に数々の大規模公演を成功させた。デュア・リパのさいたまスーパーアリーナ公演は2公演ともソールドアウト、ブルーノ・マーズの東京ドーム公演は7日間すべて完売という記録的な快挙を達成した。

マルーン5の東京ドーム3公演も完売し、「2022年のツアーを上回る興行収入を記録した」と林氏は報告している。

こうした実績を背景に、2024年4月にはライブネーションがH.I.P.を買収し、日本市場における存在感をさらに強化した。ただし林氏は現在の課題として「高額チケットへの抵抗感が見られるようになった」と指摘している。

EMPIRE、グローバル音楽の架け橋として影響力拡大

EMPIREアジア太平洋地域担当の齋藤氏について、西アジア・北アフリカ担当マネージング・ディレクターのスヘル・ナファル氏は「グローバル音楽市場の橋渡しを進め、異文化間のコラボレーションを促進している」と評価した。

具体例として、モロッコのラッパー・ダダとスーダンのラッパー・ソルジャが制作した、310バビーのヒット曲「Soak City (Do It)」のアラビック・リミックスが米ビルボード・リズミック・エアプレイ・チャート1位をマークしたことを挙げた。

また、G-DRAGONをはじめとする韓国・東南アジアの大物アーティストとの契約により、「グローバル音楽業界の未来を形作るうえで重要な存在」としての地位を確立している。

ナファル氏は業界の課題について「単にデータ上で好成績を収めているものに便乗するのではなく、才能を育て開花させる努力をもっとすべきである。アーティスト性と革新性が音楽ビジネスの中心にあり続けなければならない」と述べている。