株式会社マイナビ出版は3日、ドイツおよびEU圏内での自社発行書籍の流通事業を開始すると発表した。従来の現地出版社との版権契約による翻訳出版から、自社主導による海外展開へと戦略を転換する。
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海外展開の新戦略 版権契約の制約を解決
これまで同社の海外展開は、現地出版社との版権契約による翻訳出版が中心であった。しかし、この方式では現地出版社との契約が成立しなければ翻訳版の実現が困難で、コンテンツの海外展開に大きな制約があった。
今回、ドイツに販売代理店を設置することで、この制約を解消し、自社コンテンツを直接海外市場に流通させる体制を構築した。海外向けサイトも開設し、順次情報を充実させる予定である。
ドイツ選択の理由 欧州最大の出版市場を狙う
ドイツを最初の展開国として選んだ理由について、同社は「ドイツがヨーロッパ最大の出版市場を持つ国であり、日本関連のイベントも多く、日本文化への関心の高さを感じたため」と説明している。
6月6日から8日にかけてドイツ・デュッセルドルフで開催される日本ポップカルチャーイベント「DoKomi(ドイツコミックマーケット)」にブース出展し、同社の強みであるイラスト関連書籍の販売から事業を開始する。
第一弾商品ラインナップ イラスト技法書を投入
DoKomiでの販売第一弾として、以下の2作品を投入する:
ドイツ語版
- 「Manga besser zeichnen Figuren & Kompositionen」
- 底本:「イラスト解体新書」(著者:ダテナオト、弐藤潔)
- 販売価格:27ユーロ(税込み)
英語版
- 「The Best of Everything! Master The MANGA Drawing Techniques」
- 底本:「いいトコどり!人物パーツの描き方」(著者:KawaiiSensei)
- 販売価格:22ユーロ(税込み)
DoKomi出展戦略 20万人規模イベントで認知度向上
DoKomiは来場者約20万人規模のジャパンポップカルチャーイベントで、1500を超える企業・クリエイターが出展する大規模展示会である。同社はこの機会を活用して、ドイツにおける自社および商品の認知度向上を図る。
ブース出展では第一弾ラインナップに加え、日本で刊行したイラスト作品集も販売予定である。販売予定のイラスト作品集(すべて日本語版)は以下の通り:
双方向の文化交流を促進 ドイツ人作家の作品も日本で出版
単なる日本コンテンツの輸出にとどまらず、ドイツおよびEU圏のクリエイター発掘と日本への紹介も目指している。DoKomiとの共同イラスト・マンガコンテストを開催し、多数の応募作の中からNicole Wisniewski氏のイラストが最優秀作品賞に選ばれた。今後、同氏のイラスト作品集を日本で電子出版する予定である。
業界展望 日本出版業界の海外戦略に新たなモデル
経営推進部部長の小山氏は「日本は出版不況と言われて久しいが、日本の出版物のクオリティは世界に通用するものと誇りに思っている。アジア圏に比べ、ヨーロッパは版権契約が成立しづらかったが、今回新たな挑戦に挑めることに喜びを感じている」とコメントしている。
同氏は「マンガやアニメに限らず、他の多くの出版物にも大きな可能性がある。自社に限らず、日本の素晴らしい出版物をドイツ市場に供給できるよう、志を共有する方々と一緒に大きなムーブメントに育てていきたい」と今後の展望を語った。