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白組35人のスタッフが挑んだVFX革命の舞台裏を再び
NHK総合テレビは、「新プロジェクトX~挑戦者たち~」において、山崎貴監督の映画『ゴジラ-1.0』のVFX制作に挑戦した人々の軌跡を描いた特別版「ゴジラと35人の海賊~アカデミー賞への道 特別版~」を6月21日午後8時から放送すると発表した。
この特別版は、2月1日に初回放送された「ゴジラ、アカデミー賞を喰う~VFXに人生をかけた精鋭たち~」とは異なる角度から制作されており、アカデミー視覚効果賞を受賞した日本映画の快挙を支えた技術者たちの新たな側面に迫る内容となっている。
2月1日放送「ゴジラ、アカデミー賞を喰う」で描かれた制作現場
若手VFXアーティストの才能に光
2月1日に放送された初回では、『ゴジラ-1.0』の印象的な水の表現を手がけた25歳のVFXアーティスト・野島達司氏が取り上げられた。番組では野島氏の技術の秘密として、水面と白波の境界線に半透明の膜を敷くという革新的な手法が紹介された。
野島氏はSNSでスカウトされた人材で、自身のYouTubeチャンネルでHoudiniによる波のシミュレーション動画を公開するなど、高い技術力で注目を集めている人物である。
「植木職人」佐藤昭一郎氏の背景
初回放送では、映画冒頭の大戸島シーンを制作した佐藤昭一郎氏にもスポットが当てられた。木や植物の表現を得意とし、白組内では「植木職人」の愛称で親しまれている佐藤氏は宮城県出身で、小学校時代に東日本大震災を経験し、祖父母に育てられた背景が紹介された。
番組では、YouTubeを活用した独学で様々な技術を習得する能力に長けており、寿司の握り方まで習得したというエピソードも取り上げられた。
「ひとりハリウッド」田口工亮氏
さらに初回では、「ひとりハリウッド」の異名を持つ田口工亮氏も登場した。極めて高い技術力を誇る田口氏は、『ゴジラ・ザ・ライド』制作でも辣腕を振るったことが紹介された。
阿部秀司プロデューサーへの追悼が番組の柱
失われた良きパートナー
2月1日の放送では、山崎貴監督を見出し育てたプロデューサー・阿部秀司氏への追悼が大きな柱となった。『ジュブナイル』でデビュー作ながら4億5000万円の予算を山崎監督に託し、以降全ての山崎作品にプロデューサーとして関わってきた阿部氏は、アカデミー賞授賞式の数か月前に惜しくも世を去っていた。
宮崎駿監督に鈴木敏夫プロデューサーがいるように、山崎貴監督には阿部秀司氏という良きパートナーがいた。阿部氏の口癖「やってみればいいじゃん」は、挑戦を恐れない白組の企業文化を象徴する言葉として番組で紹介された。
山崎監督の今後への決意
続編制作への謙虚な姿勢
初回放送では、アカデミー賞受賞後にハリウッドや世界各国からオファーが殺到する中、山崎監督が『ゴジラ-1.0』の続編制作を決断したことも取り上げられた。この選択には、成功に奢ることなく、まだハリウッドには追いつけていないという謙虚な姿勢と向上心が込められていることが語られた。
今回の特別版「ゴジラと35人の海賊~アカデミー賞への道 特別版~」は、こうした初回とは異なる角度から制作現場を描き、6月21日午後8時からNHK総合テレビで放送される。日本映画界の歴史的快挙を支えた技術者たちの情熱と創意工夫に満ちた物語が、新たな視点から語られる貴重な機会となる。