『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 』は、初代の『機動戦士ガンダム』のパラレルな世界を描いていることもあり、多くの引用に満ちている。そのため、予備知識がないと楽しめないと思う人が出てしまっている。
全然そんなことはない。ガンダムシリーズの知識がなくとも充分に楽しめるように設計されている。というか、引用はちょっとした調味料みたいなもので、物語自体はきわめてわかりやすいし、キャラクターも目的意識も明確に描かれていて、予備知識を必要とするような作品ではないと思う。
シンプルに思春期で人生を窮屈に感じている少女が宇宙へと飛び出していく。無鉄砲さと大胆さが災いして事件を引きおこしてしまうも大人たちの策略の中に飲まれていく、という感じの「巻き込まれ型冒険譚」としてとても良くできている。
逆立ちから始まる物語
この作品は主人公・マチュの「逆立ち」から始まる。世の中を逆さに見るような奴で反抗精神のある奴なんだと、一発で示してみせる上手い描写だ。
恵まれた家庭に育ったマチュだが、それゆえに刺激の足りない生活と窮屈なコロニーの生活から逃れたくて、偶発的にモビルスーツへと乗り込み、危険なゲームに身を投じていく。キラキラという不思議な現象を一緒に体感したシュウジに特別な感情を抱き、そのキラキラを自分抜きでシュウジとともにしたニャアンに敵愾心を抱いてもいく。未熟な思春期の登場人物の心理が共感できるようにわかりやすく描かれている。
ジオンの権力抗争がそこに重なってきて、ニャアンとマチュは離れ離れになることとなり、マチュにはシャリア・ブルが、ニャアンにはキシリア・ザビが付き、2人は別勢力としてそのうちどこかで相まみえそうな雰囲気だ。シュウジとの三角関係も解決していない状態なので、戦場で相まみえると危険そうだ。
そうした少女たちの等身大のドラマが宇宙戦争、さらには並行宇宙の大きな話に巻き込まれていくことになる。その展開が実にわかりやすく整理されているので、特別な知識はなくてもすんなり頭に入ってくる。むしろ、本筋の物語を堪能するという点で、ファーストガンダムの知識はそこまで必要ない作りになっている。
コロニー暮らしを閉じ込められているかのように窮屈に思っていたマチュの前に、シャロンの薔薇に囚われているララァの存在が登場する。シャロンの薔薇が物語のキーポイントになるようで、この物語は、ここから囚われた女性の解放の物語が描かれることになるのではないか。
そのテーマは脚本の榎戸洋司さんの代表作『少女革命ウテナ』でも描かれたテーマと言えるが、むしろ現代にも必要なものだろう。だからと言ってウテナの知識が必要な作りにも、もちろんなっていない。
キャラクターのドラマを追えば充分面白い作品であって、妙なうんちくがないと楽しめないなんてことはない。うんちくを知っていれば、より面白がれる部分はあるだろうが、何を描こうとしているのか、きちんと見失わずにいれば、知識がなくても楽しめる。
別に、SNS上のうんちく合戦に乗る必要はないのだ。乗りたい人は乗ればいいと思うし、それも楽しみ方の一つだが、画面と脚本にこの作品の面白さはきちんと詰まっているので、ガンダムを見たことのない人も安心して見てほしいなと思う。
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