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「Materialists」快進撃!セリーヌ・ソン監督とA24が仕掛ける、新時代の映画プロモーション戦略


セリーヌ・ソン監督の最新作「Materialists」は、公開週末に推定1,200万ドルの国内興行収入を記録し、A24作品史上3番目のオープニング成績を収めた。これは、同社の従来の配給戦略とは一線を画すものであり、商業性と芸術性の融合という新たな成功モデルを提示している。

従来の枠にとらわれない配給戦略

通常、インディペンデント映画は映画祭でのプレミア公開や限定公開を経てから拡大公開されることが多い。しかし、「Materialists」は映画祭での上映もなく、プラットフォーム公開も行わずに公開された。この異例の戦略にもかかわらず、同作は「Civil War」(2,550万ドル)、「Hereditary」(1,350万ドル)に次ぐA24作品の歴代オープニング成績を記録。当初の予測である700万~800万ドルを大きく上回り、約2,800スクリーンでの公開で「ミッション:インポッシブル」や「バレリーナ」を抑えて週末興行収入3位にランクインしたことは特筆に値する。

商業性と芸術性の絶妙なバランス

A24は「Materialists」の配給において、セリーヌ・ソン監督の「パスト ライブス/再会」でコアなファン層を獲得した層と、ダコタ・ジョンソン、クリス・エヴァンス、ペドロ・パスカルといった人気俳優によるラブトライアングルを求める幅広い層という、異なる観客層を繋ぐという難しい舵取りを成功させた。「パスト ライブス/再会」は全世界で4,260万ドルを稼ぎ出したが、そのうち国内興行収入は1,130万ドルにとどまっていた。「Materialists」はすでにこの数字を上回っており、スター俳優の存在が幅広い観客を劇場に呼び込んだことは明らかだ。

議論を呼ぶ作品内容と巧みなマーケティング

「Materialists」は、そのジャンルミックスや予想を裏切る展開が多くの議論を呼んでいる。A24はこのような作品の特性を逆手に取り、大胆なマーケティング戦略を展開した。ニューヨーク証券取引所の看板を一時的にジャックし、「ロマンチックな価値」を変動させるという斬新なプロモーションを展開したほか、ジョンソンをはじめとするキャストのSNSでの拡散、そしてソン監督自身のメディア露出を積極的に行った。特に、ソン監督がNew Yorker誌で「ズートピア」を最後に観たい映画だと語った発言は、大きな話題を呼んだ。

ニューヨークやロサンゼルスといった主要都市圏では、キャストよりもソン監督自身が観客を劇場に引きつける最大の要因であったという分析もされている。これは、ユニバーサルが「オッペンハイマー」でクリストファー・ノーラン監督を前面に押し出したように、A24がクリエイターを「イベント化」する戦略を成功させたことを示している。

監督中心のマーケティングが鍵

対照的に、同週末に公開されたNeon配給の「The Life of Chuck」は、210万ドルの興行収入で9位にとどまった。この作品もジャンルミックスでマーケティングが難しく、スターキャストを前面に押し出していたにもかかわらず、結果は振るわなかった。マイク・フラナガン監督がソン監督ほど積極的にメディアに登場しなかったことが、この差を生んだ可能性も指摘されている。フラナガン監督のヒット作がストリーミング配信で成功していることから、「The Life of Chuck」もストリーミングで新たな命を吹き込まれる可能性が高いと見られている。

A24は、「Materialists」がソン監督のコアなファン層によって今後数週間にわたって好調を維持することを期待している。今回の成功は、今後のA24作品の配給戦略にも大きな影響を与えるだろう。「Eddington」のアリ・アスター監督や「The Smashing Machine」のベニー・サフディ監督といったクリエイターを、ホアキン・フェニックスやドウェイン・ジョンソンといったスター俳優と同等に、あるいはそれ以上に前面に押し出す戦略が採用される可能性が高い。商業的アピールのあるオリジナル映画を求める観客は多いが、それを強力に売り込む「作家」の存在が不可欠であることが、「Materialists」の成功によって改めて示された形だ。

ソース:How A24 Made ‘Materialists’ a Surprise Box Office Hit