2025年6月18日、『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞を受賞した巨匠ダニー・ボイル監督が、待望の新作『28年後…』と、それに続く壮大な3部作の構想について語った。2002年に公開され、ゾンビ映画のジャンルを再定義した『28日後…』から20年以上を経て、再び世界を席巻する。
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『28年後…』は壮大な3部作へ、2作目はニア・ダコスタ監督が担当
ボイル監督と脚本家のアレックス・ガーランドは、最新作『28年後…』だけでなく、その続編となる『28 Years Later: The Bone Temple(原題)』の脚本もすでに完成させていた。この2作品を連続で撮影するという前代未聞の計画に、ハリウッドでは争奪戦が勃発。最終的にソニー・ピクチャーズが権利を獲得した。
ボイル監督は、ソニーとのパートナーシップについて次のように語る。
「最初の映画を製作した時、我々は無名の存在だった。しかし今回は、待望の続編となるため、低予算では作れない。我々はそれを理解し、2作目にも投資してくれるパートナーを探していた」
スケジュールの都合上、ボイル監督は1作目の監督に専念し、2作目の監督は『キャンディマン』などで知られるニア・ダコスタに託された。ボイル監督は「彼女は素晴らしい仕事をした。彼女自身の映画を作り上げた」と全幅の信頼を寄せる。
さらに、成功すれば3部作の最終章を自身で監督する意欲も示しており、「それが計画だ。神を笑わせたいなら、自分の計画を話せばいいと言うがね。でも、それが計画だよ」と、壮大な構想の存在を明言した。
名優たちのキャリアを切り開いた瞬間:ユアン・マクレガーとキリアン・マーフィー
ボイル監督は、キャリアを共にしてきた俳優たちとの出会いについても振り返った。
『トレインスポッティング』で主役のレントンを演じたユアン・マクレガーについて、監督は当初、彼の「信じられないほど素晴らしい髪」から、時代劇のロマンス作品が似合うと考えていたという。しかしマクレガーは、正式なオファーの前に自ら髪を剃り、減量して役作りに没頭。「彼はその役を勝ち取った。時に俳優は監督よりも役を理解していることがある」と、その情熱を称賛した。
また、『28日後…』で主演を務め、今やアカデミー賞俳優となったキリアン・マーフィーの起用については、ある一言が決め手だったと明かす。物静かなマーフィーが、凶暴性を内に秘めた役を演じきれるか不安視していた監督に対し、マーフィーは「僕はアイルランドのコーク出身だ。信頼してほしい。コークは闘う男を生み出す土地なんだ」とだけ言ったという。監督はその言葉を信じ、結果として映画史に残る名演が生まれた。
幻に終わった『エイリアン4』とジェームズ・ボンド
『トレインスポッティング』の成功後、ボイル監督のもとにはハリウッドから多くのオファーが舞い込んだ。その中には、人気SFシリーズの第4弾『エイリアン4』も含まれていた。
シガニー・ウィーバーやウィノナ・ライダーとも面会し、プロジェクトは本格的に進んでいたが、当時移行期にあったCG技術への不安から、最終的に監督を辞退した。「自分はこの作品に適任ではない、と珍しく明晰な瞬間があったんだ」と語る。
また、長年ファンの間で待望論が上がっているジェームズ・ボンド映画の監督については、「(オファーの)ドアを叩かれたことはないよ」と笑いながら、現時点での関与を否定した。
『127時間』の衝撃とピクサーでの失神騒動
アカデミー賞受賞作『スラムドッグ$ミリオネア』の次に、ほとんどの場面が渓谷に閉じ込められた男の一人芝居という異色の作品『127時間』を監督したボイル。
ジェームズ・フランコが自らの腕を切断するシーンのリアリティは凄まじく、試写会では失神者が続出したという逸話がある。特に有名なのがピクサーでの試写会だ。「素晴らしい一日になると思ってピクサーに行ったら、劇場の外に救急車が停まっていたんだ!」と、その衝撃的な出来事を振り返った。監督は、観客が失神したのはリアルな特殊メイクだけでなく、その瞬間のフランコの鬼気迫る「目」の演技にあったと分析している。
新作『28年後…』は、ボイル監督がこれまでのキャリアで培ってきた全てを注ぎ込んだ作品となる。3部作構想という壮大な計画の第一歩として、世界中の映画ファンがその公開を待ち望んでいる。