アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は2025年6月25日、独立行政法人国立高等専門学校機構の旭川工業高等専門学校(以下、旭川高専)および富山高等専門学校(以下、富山高専)と、地域創生に向けたデジタル・AI人材育成に関する包括連携協定を締結したと発表した。本連携を通じて、クラウドとAI技術を活用し、地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引する人材の育成を加速させる。
深刻化するデジタル人材不足と高専への期待
日本国内でDXが急速に進む一方、それを支えるデジタル人材の不足は深刻な課題である。経済産業省の試算によれば、AIやロボットを活用する先端IT人材は2040年に326万人不足すると予測されている。また、AWSが実施した調査では、日本企業の82%が必要なAI人材の確保に困難を感じている実態が明らかになった。
こうした中、政府は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、地域におけるデジタル人材の育成と確保を目指している。特に、実践的な技術者教育を行う高等専門学校(高専)は、地域産業のニーズに直結した人材を育成する重要な拠点として位置づけられている。
しかし、高専卒業生をはじめとする若手人材が首都圏に流出する傾向があり、地域産業のDXを担う人材が依然として不足しているのが現状だ。地域創生を実現するには、地域の人材が地元で活躍できる環境を整え、テクノロジーを活用して地域課題を解決するサイクルを確立することが急務である。
地域課題解決へ、AWSと高専がタッグ
今回AWSジャパンが連携する旭川高専と富山高専は、文部科学省の「Society 5.0型未来技術人財」育成事業(COMPASS 5.0)の拠点校として、AI・数理データサイエンス分野の教育を推進している。
この度の連携は、両高専が目指す「地域経済のDXを支える人材育成」と、AWSが持つ最新のクラウド技術やAI教育に関する知見を融合させることを目的としている。AWSが教育リソースを提供することで、両高専と共に地域で活躍できるデジタル・AI人材を育成し、地域DX推進の担い手を創出する。
連携協定の具体的な4つの柱
本協定に基づき、AWSジャパンと両高専は以下の4つの分野で連携を推進する。
- AIに関する実践的な教育支援 AWSの無償クラウド学習カリキュラム「AWS Academy」やデジタルトレーニング「AWS Skill Builder」を活用したクラウド技術教育を提供。また、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(MDASH)」に関する支援も行う。
- AIに関する教育モデルを全国の高等専門学校へ普及 本連携で確立した教育手法やノウハウを、全国の他の高専へ展開するために協力する。
- 実践的なインターンシップ機会の提供 AWSのハンズオンイベントなどを通じた実践的な技術体験や、職業体験プログラムを提供する。
- 地域創生に向けた共同事業の推進 地域のデジタル化プロジェクトへの学生参画を促し、産学連携による技術開発や研究を推進する。
3年間で100人以上の専門人材育成へ
本協定に基づく取り組みは2025年度から順次開始され、3年間で100人以上の高度な専門性を持つデジタル人材の育成を目指す。育成された人材が地域DXの中核として活躍することを通じて、持続可能な地域創生への貢献が期待される。
教育の中核となる「AWS Academy」は、すでに日本全国200以上の教育機関で採用されている実績を持つ。また、「AWS Skill Builder」では、生成AIに関する99以上の日本語コンテンツが無償で提供されており、学生は最新の技術を実践的に学ぶことが可能だ。
関係者の声
今回の連携に対し、各校の校長およびAWSジャパンの担当者は次のようにコメントしている。
旭川工業高等専門学校 校長 矢久保 考介氏 「AWSとの連携により、最先端のAI・クラウド技術に触れる機会が深化することを期待している。農業などの第一次産業や先端半導体企業を含む全ての産業への展開も見据え、実践力を強化したデジタル人材を輩出し、地域活性化に貢献する」
富山高等専門学校 校長 國枝 佳明氏 「この連携により、教職員・学生が最新のAI・クラウド技術に容易にアクセスできる環境が整う。富山高専で確立した教育モデルを全国高専へ展開し、地域創生を担う中核人材の輩出を目指す」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 常務執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮氏 「高専は日本のものづくりを支えてきた実践的技術者育成の最前線だ。今回の連携を通じて次世代のデジタル人材を育成し、地域のデジタル化と地域創生に貢献できることを大変嬉しく思う。引き続き『日本のために、社会のために』邁進していく」