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ハリウッド復活へ カリフォルニア州、映画・TV制作の税優遇を7.5億ドルに大幅増額


カリフォルニア州の立法指導部は、州内の映画およびテレビ番組制作に対する税制優遇措置の年間予算を、現在の3億3000万ドルから7億5000万ドルへと大幅に増額することで合意した。これは、制作活動の落ち込みに直面する業界および、増額を推進してきたギャビン・ニューサム知事にとって大きな成果となる。

制作減少への対策として知事が主導

この増額案は、昨年10月にニューサム知事が州内の映画・テレビ制作の急激な落ち込みへの対策として初めて提案したものである。今回の予算編成サイクルにおける最優先事項の一つとされており、州上院および下院の指導部が知事の提案した資金レベルを受け入れた形だ。関係者によると、増額を正式に決定するためのトレーラー法案(予算関連法案)の投票が金曜日に予定されている。

カリフォルニア映画委員会(California Film Commission)の試算によると、この追加資金により、税制優遇プログラムが支援する映画関連の雇用は40〜50%増加し、新たに4,400人から5,500人の雇用が創出される見込みである。

優遇措置を拡充する新法案「AB 1138」

資金増額と並行して、議員らは優遇措置の内容をさらに拡充するための関連法案「AB 1138」の策定も進めている。この法案の主な内容は以下の通りである。

  • 税額控除率の引き上げ: 各プロジェクトが受けられる税額控除の基本比率を、現行の20%から35%に引き上げる。さらに、ロサンゼルス地域外で撮影を行う場合には、最大で40%まで控除率が上昇する可能性がある。
  • 対象作品の拡大: これまでの対象に加え、新たにシットコム(コメディドラマ)、アニメーション作品、大規模なコンペティション番組(リアリティショーなど)も優遇措置の対象となる。

この法案は7月4日までに承認され、即時発効する見込みだ。

低所得者層コミュニティへの配慮と多様性の促進

新しい法案には、低所得者層コミュニティに利益をもたらすことを目的とした条項が新たに追加された。当初検討されていた経済的に困窮した地域での撮影に対する5%のボーナスは、運用が困難であるとして見送られた。

その代わりに、以下の2つの措置が盛り込まれている。

  1. 研修生雇用ボーナス: 「伝統的にサービスが行き届いていない」コミュニティを対象とした雇用プログラムから1〜4人の研修生を雇用した制作に対し、2%の追加ボーナスを付与する。この際、研修生が経験豊富な既存の労働者の職を奪うことのないよう、エンターテイメント関連の労働組合に配慮した規定も設けられている。
  2. 多様性報告の強化: 既存のプログラムでは、人種、民族、性別ごとの従業員の多様性報告が義務付けられていたが、これに新たに郵便番号と退役軍人ステータスが追加される。これにより、地理的な多様性の確保も目指す。

ロサンゼルス一極集中への懸念と残る課題

一方で、この優遇措置がロサンゼルスに過度に集中しているとの批判も存在する。ベイエリアなど州内の他地域の独立系映画製作者で構成される「アウト・オブ・ゾーン連合」は、州の映画・テレビ関連労働力の90%以上が集中するロサンゼルスが不釣り合いな恩恵を受けていると主張。ロサンゼルス以外の地域での撮影に対するボーナスを現行案の5%ではなく10%に引き上げるよう求めたが、この要求は認められなかった。

今回の増額と制度拡充は、州全体の映画産業活性化に大きく貢献することが期待される一方で、地域間の格差という課題も浮き彫りにしている。

ソース:California Lawmakers Agree on $750 Million for Film and TV Credit