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【巨額赤字下での決断】カリフォルニア州、ハリウッドへの7.5億ドル税優遇に「ノー」。議員が明かす経済政策の問題点


カリフォルニア州議会で、映画・テレビ産業に対する税優遇措置を年間7億5000万ドル(約1125億円)へと大幅に拡大する案に対し、ロジャー・ニエロ上院議員が反対票を投じた。州が巨額の財政赤字に直面する中、特定の産業への優遇は州全体の経済にとって最善策ではないと警鐘を鳴らしている。

120億ドルの財政赤字下での税優遇拡大に疑問符

カリフォルニア州は現在、120億ドル(約1.8兆円)という深刻な財政赤字に直面している。このような状況下で、映画・テレビ産業への税額控除を現行の3億3000万ドルから7億5000万ドル以上へと倍増させる案が予算審議で推進されていることに、ニエロ議員は強い懸念を示した。

同議員は、州の予算は無限ではないと指摘。「優れたプログラムは、いかに早く予算を使い果たすかで測られるべきではない」と述べた。

この状況について、プロデューサーのスコット・バドニック氏は最近のPoliticoの記事で「この金を使い果たし、来年はさらに多くの資金を求めて知事の元へ戻らなければならなくなることを願っている」と発言しており、この優遇措置がさらなる財政負担を招く可能性を示唆している。

経済効果への懐疑的な見方―専門機関の分析

ニエロ議員の懸念を裏付けるように、州の非党派組織である立法アナリスト室(LAO)が今年初めに発表した報告書は、税優遇措置の効果に疑問を投げかけている。

報告書は「映画税額控除が州経済全体の規模にプラスの効果をもたらすという説得力のある証拠は、現時点では存在しない」と結論付けている。この客観的な分析は、税優遇政策の前提そのものを揺るがすものだ。

州全体の利益にならず、一部地域に偏る恩恵

現在の税優遇政策は、州内でも特に経済的に優位な大ロサンゼルス圏に集中する産業への大規模な資金提供となっている。ニエロ議員は、経済開発政策は州全体を活性化させるべきであり、特定地域の優位性をさらに強化するものであってはならないと主張する。

また、映画やテレビの制作は本質的に一時的なものであり、プロジェクトが終了すればセットは解体される。これに対し、製造業などのインフラを支援すれば、より多くの雇用を必要とする地域社会に、持続的で安定した成長をもたらすことができると対比させている。

「機会費用」―見過ごされる他の重要産業

ニエロ議員は「機会費用」の問題も指摘する。映画産業への優遇に1ドルを費やすことは、他の重要な分野でその1ドルを使えなくなることを意味する。

例えば、カリフォルニア州の農業は年間約600億ドルの経済効果を生み出し、これは映画産業の経済的足跡の約2倍に相当する。しかし、農業従事者が人件費の高騰や厳しい環境規制に直面しているにもかかわらず、政策立案者からの具体的な支援はほとんどないのが現状である。

ニューサム知事は、巨額の財政赤字にもかかわらず、ハリウッドへの7億5000万ドルの税優遇を最優先課題としており、この優先順位の付け方に多くの産業が疑問を感じている。

根本的な問題はビジネス環境の悪さ

ニエロ議員によれば、特定の産業への税優遇は、カリフォルニア州が抱えるより根深い構造的問題に対する「対症療法」に過ぎない。

CNBCの2024年のランキングでは、カリフォルニア州は「ビジネスコスト」で全米45位、「生活費」では最下位にランク付けされた。これは、長年にわたる過剰な規制と税金が積み重なった結果であり、多くの雇用主が州外での成長を選択する原因となっている。

「我々の州がビジネスを行う上で高コストな場所であることは分かっている。だから、その助けとして税制優遇措置を提供する」というアプローチは、問題の根本解決にはつながらないと議員は断言する。

カリフォルニアの未来に向けた提言

ニエロ議員は、ハリウッドを真に支援するのであれば、生活費の抑制やビジネス環境の改善といった、より広範な問題に取り組むべきだと結論付けている。補助金に頼らずとも、人々や企業が「ここに留まりたい」と思えるようなカリフォルニア州を築くことこそが、本当の経済政策であると主張する。

同議員は、120人の議員の中でわずか2人しかいない反対票を投じた自身の決断を、ロバート・フロストの詩『The Road Not Taken(選ばれなかった道)』の一節を引用して締めくくった。「森の中で道が二つに分かれていた。そして私は―人の通らぬ道を選んだ。それがすべてを変えたのだ」と。

ソース:California Senator: Why I Voted No On Hollywood’s $750M in Incentives