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香港映画の象徴、ゴールデンハーベストが市場から撤退 – 55年の歴史に幕


香港の映画史を彩ってきた大手映画会社のゴールデンハーベスト(嘉禾)が、2025年6月29日をもって香港の映画館事業から完全に撤退した。ブルース・リーやジャッキー・チェンを世界に送り出した名門の撤退は、香港映画界の転換期を象徴する出来事といえる。

 

最後の灯火が消える

 

ゴールデンハーベストは、香港内に残っていた最後の4つの映画館(オリンピアンシティ2の「the sky」、屯門タウンブラザの「StagE」、大埔の「GH Taipo」、筲箕湾の「GH Galaxy」)を、賃貸契約の満了に伴い6月29日に閉館した。同社は声明で、「これらの場所での賃貸契約が2025年6月29日に終了するため、以降の香港での映画館事業を終結する」と発表した。

なお、オリンピアンシティ、屯門、大埔の3館については、新たな運営会社が引き継ぐ予定だが、その社名はまだ公表されていない。

今回の4館の閉館に先立ち、同社は今年に入ってからGHメガボックス、GHワンポア、そして56年の歴史を誇ったチムサーチョイのグランドオーシャンシネマ(豪華戲院)といった象徴的な映画館も閉鎖していた。

 

香港映画界の栄光と撤退の背景

 

1970年、レイモンド・チョウ(鄒文懐)氏らによって設立されたゴールデンハーベストは、当初は映画製作会社としてスタートした。ブルース・リーの「ドラゴン危機一発」やジャッキー・チェンの一連のカンフー映画を大ヒットさせ、香港映画の黄金時代を築き上げた。チョウ・ユンファ、ミシェル・ヨー、ジョン・ウー、ツイ・ハークといった数多くのスターや監督を国際市場に紹介した功績は計り知れない。

1977年には初の直営映画館をオープンし、映画興行にも進出。2009年には香港で初めて全館デジタル対応のシネマコンプレックスを開館するなど、常に業界をリードする存在だった。1994年に香港証券取引所に上場し、2009年には中国の事業家、呉克波氏が筆頭株主となったことで社名をオレンジスカイ・ゴールデンハーベスト(橙天嘉禾娯楽)に変更した。

しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、香港の興行収入は低迷が続いている。2023年の香港全体の興行収入は13億4000万香港ドル(約1億7270万米ドル)と、過去13年で最低を記録した。ストリーミング配信サービスの普及や、物価の安い中国本土で余暇を過ごす香港市民の増加といった消費行動の変化も、映画館離れに拍車をかけている。

今年に入ってから、ゴールデンハーベストの閉館を含め、MCL系列の2館(ニューポートシアター、グランドコーンヒルシネマ)など、すでに9つの映画館が閉鎖されており、香港の映画興行市場の苦境を浮き彫りにしている。

 

シンガポール事業は継続

 

香港市場からは撤退するものの、オレンジスカイ・ゴールデンハーベストはシンガポールでは事業を継続する。子会社のゴールデン・ビレッジを通じて、同国最大の映画興行会社として15のシネマコンプレックスと119のスクリーンを運営している。

香港映画の黄金期を支えた企業の撤退は、一つの時代の終わりを告げるものだ。製作会社として香港映画の国際的な地位を確立し、長年にわたり市民に娯楽を提供してきたゴールデンハーベストの劇場が姿を消すことに、多くの映画ファンから惜しむ声が上がっている。

ソース:Golden Harvest exits Hong Kong cinema market | News | Screen