ウォルト・ディズニー・カンパニーとITVは2025年7月10日、互いのストリーミングサービスでコンテンツを共有する初の試みとなる画期的な提携を発表した。このパートナーシップは、7月16日からそれぞれのプラットフォームで「Taste of ITVX」および「Taste of Disney+」として展開され、厳選されたコンテンツが定期的に更新される予定だ。
補完的な視聴者層が提携の鍵
今回の提携は、両社の主要な視聴者層が補完関係にあることから生まれたものだ。Disney+ EMEAのゼネラルマネージャーであるカール・ホームズ氏は、「もし我々がITVXと同じ層の視聴者を抱えていたら、この提携はうまくいかなかっただろう」と述べた。Disney+の主要な視聴者層が34歳以下の若年層である一方、ITVXは45歳以上、55歳以上の層が中心であり、この違いが今回の協業を可能にした。
ホームズ氏は、「これにより、Disneyが子どもや家族向けのコンテンツばかりだと通常考えている層に対し、大人向けの優れたDisney作品を提供できる」と語った。ITVの視聴者は『ラブ・アイランド』、『Mr Bates vs The Post Office』、『Spy Among Friends』などをDisney+で視聴でき、逆にDisney+の視聴者はFXの『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン1やルーカスフィルムの『キャシアン・アンドー』などをITVXで楽しめるようになる。
欧州における先行事例と今後の展望
このようなコンテンツ共有の取り組みは、欧州ではフランスやドイツで既に類似の「バンドル」が行われている。今回の英国での提携は、今後同様の協業が拡大する可能性を示唆している。
ホームズ氏によると、Disneyは数ヶ月にわたり欧州の無料放送局との関係構築に取り組んできたという。その理由は、「彼らがほぼ全ての市場で最大の視聴者を集めているからだ」と説明している。今回のITVXとの合意が最初に実現したが、今後他の市場の放送局とも同様の取り決めを期待しているとのことだ。
公共放送の未来と成功の指標
英国の公共サービス放送局は、Disney+、Netflix、Appleなどのストリーミングサービスが英国の高品質テレビ制作にもたらす脅威についてこれまで公然と発言してきた。今回の提携が、そうした公共放送の未来にとって解決策となる可能性もある。
ホームズ氏は、「それはおそらくITVに聞くべき質問だが、Disney+にとっては、これまでコンテンツを見たことのない視聴者に宣伝できるため、間違いなく役立つ」と述べた。さらに、「ITVXにとっても非常に相互に利益があると考えている。これは我々が彼らのコンテンツを全て取り込むというものではない。ITVXが通常考慮されない視聴者にコンテンツを提供することを可能にするものだ」と強調した。
今回のパートナーシップの成功は、両社が新規登録者数の増加と顧客エンゲージメントの向上を主な指標として測る予定だ。両社は数ヶ月ごとに会合を開き、エンゲージメントの高いコンテンツや各プラットフォームで今後公開されるコンテンツに基づいて、「味見」するコンテンツの選定と議論を行う。
ホームズ氏は、他のストリーマーと放送局の間でも同様の取引が行われることを期待している。「模倣は最大の賛辞だが、我々は他の市場の他の放送局ともこうした提携をもっと行いたいと考えている」と述べた。ただし、市場の具体的な状況によって提携の内容は異なるとの見方を示している。