Netflixの大ヒットドラマ『私のトナカイちゃん』のクリエイターであるリチャード・ガッドが、制作過程で幻の第8話が存在したこと、そしてそれを自身がカットするよう強く主張したことを明かした。このエピソードは、度重なるストーカー行為で精神的に追い詰められた主人公ドニーが、故郷スコットランドで家族と過ごすことで一時的な「休息」を得るという内容だったという。
「暗すぎる」との声を受け挿入された「休息」エピソード
ガッドはメルボルンで開催されたテレビ会議「Future Vision」で、Netflix幹部から「番組が暗すぎる」「視聴者に息抜きを与える必要がある」との意見が寄せられたことを明かした。これを受け、ドニーがロンドンを離れ、故郷スコットランドで父親のマーク・ルイス・ジョーンズとサッカー観戦をするというエピソードが制作された。
緊張感の維持を優先し、幻のエピソードをカット
しかし、ガッドは編集段階でこのエピソードをカットすることを決断した。ストーカーであるマーサの脅威が一時的に消えることで、作品全体の緊張感が薄れてしまうと感じたためだ。「多くの意味で、早く彼女(マーサ)の元に戻るべきだと感じた」とガッドは語っている。この決断により、第3話は複数の予定されていたセグメントの素材を組み込む形で再構築され、カットされたエピソードのクライマックスであった「マーサがドニーのキッチンに侵入する」シーンは、改訂版の第3話の冒頭に配置された。
ガッドは、カットされたエピソードで素晴らしい演技を見せたマーク・ルイス・ジョーンズの貢献を失ったことを残念に思っているが、この編集上の選択が結果的に作品の成功に繋がったと確信している。
世界的ヒットとエミー賞受賞、そして新たな挑戦
『私のトナカイちゃん』は世界中で大ヒットを記録し、批評家からも高い評価を受け、ガッド自身もエミー賞を3部門受賞するなど、数々の栄誉に輝いた。
本作はガッド自身の演劇作品から派生したものであり、エディンバラ・フリンジでの経験をテレビフォーマットに落とし込んだものだ。彼の舞台活動は、個人的なトラウマやハラスメントを探求する受賞歴のあるパフォーマンスを含んでいる。
法廷闘争と次なる作品への期待
しかし、この成功の裏では、作品の事実関係に関する名誉毀損訴訟も進行中であり、ガッドはこの件に関して公の場でコメントすることを差し控えている。
また、ガッドは『私のトナカイちゃん』の役作りのため、大幅な減量を行ったことも明かしている。その変貌ぶりは、近隣住民が健康を心配するほどだったという。
ガッドの次なるプロジェクトは、ジェイミー・ベルを主演に迎えたBBCとHBOの共同制作ドラマ『Half Man』だ。全6話で、家族関係の断絶を描くこの作品は、彼の次の主要な作品となる。
『私のトナカイちゃん』のリリース後、ガッドのSNSフォロワー数は飛躍的に増加し、一夜にしてセレブの地位を確立した。彼は、この番組が困難な個人的経験に対して率直に向き合ったことが、視聴者に強い影響を与えたと考えている。