欧州連合(EU)の貿易担当相は、米国のトランプ前大統領がEUからの輸入品に対し30%の関税を課す可能性を示唆したことに強い警戒感を表明した。しかし、米国のハイテク大手やストリーミングサービスに影響を与える可能性のある報復措置の発動は見送り、交渉による解決を目指す構えだ。
EU、トランプ氏の突然の関税案に強い警戒感
EUの貿易担当相はブリュッセルで会合を開き、米国の最大の貿易相手であるEUに対し、トランプ氏が週末に突如として高率の関税を課す考えを示したことへの対応を協議した。
この動きは欧州各国の政府および産業界に大きな動揺を与えており、米・EU間の貿易関係に新たな緊張が走っている。
報復措置は一時保留、交渉による解決を模索
EUは27の加盟国に代わって貿易交渉を行っており、米国への対抗措置を8月1日まで延期することを決定した。これは、それまでにトランプ政権との間で貿易協定に達することへの期待を示すものだ。
EUの貿易代表であるマロシュ・シェフチョビッチ氏は、「交渉による解決が、8月1日以降に起こりうる緊張状態よりもはるかに良いと100%確信している」と述べた。その一方で、「我々はあらゆる結果に備えなければならない」とも付け加え、交渉が決裂した場合の選択肢も残していることを示唆した。
関税の対象品目と映画業界への影響
欧州から米国への主な輸出品には、医薬品、自動車、航空機、化学製品、医療機器、ワイン、蒸留酒などが含まれる。これらの品目に関税が課されれば、欧州経済に深刻な打撃を与える可能性がある。
一方、映画への関税適用については依然として不透明だ。トランプ氏はかつて、国外で製作された映画に100%の関税を課すと発表したが、その脅威は後退したと見られている。
チェコの映画プロデューサー、ヤン・カリスタ氏はカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のパネルディスカッションで、「彼(トランプ氏)が関税をちらつかせては撤回するのを我々は見てきた。結果がどうなるかは分からない」と述べ、業界内でも先行きが不透明であるとの見方を示した。
「デジタルサービス税」が報復の切り札となる可能性
EUが報復措置を検討する場合、その一つとして「デジタルサービス税」が再び浮上する可能性がある。この税は、Meta(旧Facebook)、Google、Netflixといった米国の巨大IT企業を対象とするもので、一度は緊張緩和のために計画が撤回されていた。
しかしアナリストは、もし米・EU間で本格的な関税戦争が勃発すれば、EUがこのデジタルサービス税を対抗策として復活させる可能性は十分にあると指摘している。今後の米・EU間の貿易交渉の行方が、世界経済およびデジタル市場の動向に大きな影響を与えることは間違いない。
ソース:European Trade Ministers Alarmed by Trump’s EU Tariffs, Try for Deal