マーベル映画のドクター・ストレンジ役で知られる俳優ベネディクト・カンバーバッチが、ハリウッドの映画産業が抱える深刻な浪費体質について「ひどく浪費的な産業だ」と痛烈に批判した。自身の役作りにおける過剰な食事を例に挙げ、業界全体に蔓延する環境への配慮の欠如に警鐘を鳴らしている。
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ドクター・ストレンジ役の食事が「恐ろしい」ほどの浪費
カンバーバッチは2025年7月23日に公開されたポッドキャスト番組「Ruthie’s Table 4」に出演し、ドクター・ストレンジ役を演じるための肉体改造について語った。スーパーヒーローの体格を維持するため、彼は1日5回の食事を摂る必要があったという。
彼は当時の食生活を振り返り、「自分が食べている量で、一つの家族を養うことができる。責任や持続可能性を考えると、自分はいったい何をしているんだ、という気持ちになる」と告白。「食欲を超えて食べるのは恐ろしいことだ」と述べ、食料の大量消費に対する罪悪感をあらわにした。
ハリウッドは「ひどく浪費的な産業」
カンバーバッチの批判は、自身の体験だけにとどまらない。彼はハリウッド全体を「ひどく浪費的な産業だ」と断じ、その具体例を次々と挙げた。
「リサイクルされない撮影セットのこと、輸送、食料、住宅、そして照明やエネルギーのことを考えてみてほしい」と彼は語る。特にスタジオ撮影においては、一貫した照明環境を作り出すために膨大な電力(ワット数)が必要となり、莫大なエネルギーが消費されていると指摘した。
撮影現場のプラスチックごみと時代遅れの慣習
さらにカンバーバッチは、撮影クルーに日常的に提供されるペットボトル飲料の問題にも言及。「クルーにプラスチックボトルを渡す必要はない。砂漠の真ん中でガラス瓶が手に入らないというなら話は別だが、僕たちは21世紀に生きているんだ」と述べ、環境に配慮しない時代遅れの慣習を強く非難した。
同業者も問題提起、ステラン・スカルスガルドの取り組み
カンバーバッチと同様の問題意識を持つ俳優は他にもいる。俳優のステラン・スカルスガルドは、クルーへの待遇改善と環境配慮の重要性を訴えている。
彼はノルウェー映画『Sentimental Value』に出演した際、自身の出演料を約5万ドル(約700万円)削減し、その費用をクルーの昼食の質を向上させるために充てたという。スカルスガルドは「食事はプラスチックや紙ではなく、本物の陶器で提供されるべきだ。皆が座って食事をすることで、現場の雰囲気は良くなり、結果的に映画の質も向上する」と主張している。
これらの発言は、華やかなハリウッドの舞台裏で、サステナビリティや環境配慮がいかに軽視されているかを浮き彫りにした。今後、映画業界全体でのより一層の意識改革と具体的な行動が求められることは間違いないだろう。