TBS日曜劇場『19番目のカルテ』の第2話は、現代社会が抱える深刻な問題「ヤングケアラー」に焦点を当て、観る者の胸に深く突き刺さるエピソードとなった。松本潤演じる総合診療医・徳重晃が、病気の裏に隠された患者の心の叫びにどう向き合うのか。その真価が早くも問われる物語が展開された。
弟の死に「ほっとした」兄の告白 ― 浮き彫りになるヤングケアラーの苦悩
物語の中心は、生まれつき心臓の弱い弟・咲(黒川晏慈)を14歳で亡くした兄の拓(杉田雷麟)。弟の死を父親に告げる彼の姿からは、深い悲しみとともに、どこか張り詰めたものが感じられた。徳重は、咲の付き添いが常に兄の拓であったことに違和感を抱き、彼の心の内に隠された闇に気づき始める。
やがて拓は、足に力が入らなくなるという奇妙な症状に見舞われる。それは熱中症の後遺症などではなく、彼の心が引き起こした悲鳴だった。徳重との対話の中で、拓は衝撃的な本心を吐露する。「咲が死んだ時、ほっとした」。
母親に「お兄ちゃんだから守ってあげて」と言われたその日から、拓の人生は弟の介護一色になった。学校から帰れば弟の世話、夜中も気が休まらない。友達と遊ぶ時間も、自分の将来を考える余裕もない。彼は、いわゆる「ヤングケアラー」だったのである。
厚生労働省の調査によれば、中学2年生の約17人に1人が家族の世話をしているという現実がある。ドラマで描かれた拓の苦悩は、決してフィクションの中だけの話ではない。彼は弟を愛していた。だからこそ、その死に安堵してしまった自分を「怪獣」だと思い込み、許せずにいたのだ。この痛切な葛藤を、若手俳優・杉田雷麟が圧巻の演技で表現し、物語に凄まじいリアリティを与えていた。
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「君はお兄ちゃんじゃない」― 徳重の言葉が拓を救う
拓の症状を、徳重は「機能性神経障害」と診断する。強い精神的ストレスが、身体的な症状として現れる病気だ。神経の病気と似た症状が出るが、検査をしても異常は見つからない。原因は、心にある。
徳重は拓にこう語りかける。「君はお兄ちゃんじゃない。岡崎拓という一個人で、ヒーローの側面も怪獣の側面も、どっちも君の一部だ」。
「お兄ちゃん」という役割から解放し、矛盾した感情を抱える自分自身を丸ごと肯定する徳重の言葉は、拓を長年の呪縛から解き放った。「病は気から」という言葉があるが、徳重はそれが精神論ではなく、医学的根拠に基づいたアプローチであることを示す。強く「立てる」と意識することが、機能回復に繋がるのだ。そして、「これからの話をしよう」と未来に目を向けさせることで、拓に生きる希望を与えた。
総合診療科の存在意義と、次週への期待
当初は総合診療科に懐疑的だった小児科医の有松しおり(木村佳乃)が、拓の異変に気づいた徳重を頼り、「拓を診てほしい」と頭を下げるシーンは、本作の重要な転換点だ。専門分化された医療の中で、領域を横断し、患者を”まるごと”診る総合診療医の必要性が、病院内にも少しずつ浸透していく様子が描かれた。
一方で、有松がカメラに向かって心情を吐露する演出には、やや唐突な印象も受けたが、それ以上に物語の核心が力強かった。
ラストでは、人気アナウンサー(津田健次郎)が喉のガンを宣告されるという衝撃的な展開が予告された。声を生業とする声優・津田健次郎が、声を失うかもしれない役柄をどう演じるのか。非常に挑戦的なキャスティングであり、来週もまた、人間の根源的なテーマに迫る物語が期待できそうだ。
第2話は、社会問題と個人の心の救済を見事に描ききった。徳重晃という医師が、これからどんな”見えない病”と向き合っていくのか、ますます目が離せない。
✒️ 第𝟯話𝟴月𝟯日よる𝟵時放送 📚
𓏸𓈒𓂃 日曜劇場『19番目のカルテ』 𓂃𓈒𓏸◌アナウンサーが直面する
声という宝を失う現実🎤治すこと、生きること
救い方に正解はあるのか?「”助けたい”って想いがあるからだよ」
🔗 𝗧𝗩𝗲𝗿・𝗨-𝗡𝗘𝗫𝗧では全話配信中🔗 pic.twitter.com/JziLkim1qu
— 19番目のカルテ ⿻ TBS7月期日曜劇場⦅公式⦆ (@19karte_tbs) July 27, 2025