ハリウッド・ボウルで今週末に上演されるミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』の画期的なキャスティングが注目を集めている。イエス・キリスト役にトニー賞受賞女優であるシンシア・エリヴォが抜擢されたことに対し、一部で議論が巻き起こる中、ユダ役を演じる歌手のアダム・ランバートがエリヴォを擁護する声明を発表した。
アダム・ランバート、エリヴォの起用を「挑戦であり、作品の要点」と支持
ランバートは米ビルボード誌に対し、黒人でLGBTQの女性であるエリヴォがイエス役を演じることの意義を力説した。
「シンシアは素晴らしい。彼女の声、存在感、そして力強さと脆さを同時に表現する力には完全に圧倒されており、彼女と共に仕事ができるのは夢のようだ」と述べた上で、「女性であり黒人である『イエス』が率いる作品を観客に提示するという挑戦に興奮している。観客には少し心を開いてほしい。もともとロックンロールを用いた『ジーザス・クライスト・スーパースター』は、観る者を挑発し、問いかけることを意図した作品だ。それこそがこの作品の要点なのだ。そして、イエスの教えはジェンダーを超えるべきではないだろうか?」と語り、今回のキャスティングを全面的に支持する姿勢を示した。
当事者シンシア・エリヴォ「なぜダメなの?」
イエス役への抜擢が発表された2月以降、エリヴォ自身もこのキャスティングをめぐる言説に言及している。彼女はビルボード誌のインタビューで、「なぜダメなの? 全ての人を満足させることはできないわ」とコメント。
さらに、「これはハリウッド・ボウルでの3日間の公演で、私は思う存分歌うことができる。だから、観に来てくれれば『ああ、これはミュージカル。地球上で最もゲイな場所なんだ』と気づいてくれることを願っている」と、作品の本質に目を向けてほしいとの考えを明らかにしている。
豪華キャストが集結したハリウッド・ボウル公演
アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲、ティム・ライス作詞による伝説的なロックオペラである本作は、8月1日から3日までの3日間、ハリウッド・ボウルで特別公演として上演される。
キャストには、イエス役のエリヴォ、ユダ役のランバートのほか、ペテロ役にマイロ・マンハイム、ポンティウス・ピラト役にラウル・エスパーザ、マグダラのマリア役にフィリッパ・スーといった実力派が名を連ねる。また、当初ヘロデ王役で出演予定だったジョシュ・ギャッドが新型コロナウイルス感染症により降板し、代役としてジョン・ステイモスが出演することも発表された。
演出と振付はトニー賞受賞者のトニー・トルヒーヨが担当し、指揮と音楽監督はスティーヴン・オレマスが務めるなど、盤石の布陣で作品の新たな解釈に挑む。この公演は、現代社会における多様性と表現の可能性を問いかける、重要な試みとして大きな注目を集めている。