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【一橋大学アウティング事件から10年】社会の変化と希望を綴る書籍が発売へ アウティング防止の今を問う


2015年に起きた「一橋大学アウティング事件」から10年の節目となる2025年8月24日、事件を風化させず、この10年間の社会の変化と未来への希望を多角的に綴った書籍『一橋大学アウティング事件がつむいだ変化と希望 10年の軌跡』が、サウザンブックス社から発売される。本書はクラウドファンディングで250万円以上の支援を集めて書籍化が実現したもので、次世代へのメッセージとして広く世に問う。

アウティングで失われた命、事件の風化を防ぐために

この事件は、2015年6月、一橋大学法科大学院の男子学生が、同級生間のLINEグループで本人の同意なくゲイであることを暴露(アウティング)されたことに端を発する。心身の不調を訴え、大学の相談窓口などに助けを求めたものの状況は改善せず、同年8月24日に校舎から転落死した。

事件から10年。現在では改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、企業にアウティングを防ぐ措置が義務付けられるなど、個人のプライバシーや人権への配慮は社会的に広がりを見せている。しかし、当時はまだその認識が十分ではなく、また現代社会においてもアウティングの危険性は依然として潜んでいる。本書は、この悲劇的な事件を風化させることなく、関係者の声を形にして広く伝えることを目指している。

 

社会を動かした判決、そして法整備へ

学生の死後、遺族は同級生と大学を相手取り損害賠償を求めて提訴した。東京地裁・高裁ともに遺族の請求は棄却されたものの、判決ではアウティングが「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為であることは明らか」と明言された。これは、司法の場でアウティングの違法性が日本で初めて言及された画期的な判決であった。

この判決は社会を動かす大きな一歩となった。2018年には大学の所在地である国立市でアウティング禁止を盛り込んだ条例が施行され、さらに2020年6月にはパワハラ防止法で事業者にアウティング防止策を講じることが義務付けられた。一つの事件が、国や自治体の制度を動かし、社会に確実な変化をもたらしたのである。

 

多様な視点で綴る10年の軌跡と次世代へのメッセージ

本書は、単なる事件の記録に留まらない。LGBTQ+当事者や支援者、学者、新聞記者など、様々な立場にある8名の執筆者が、それぞれの視点からこの10年の歴史と変化、そして希望を論じている。

編著者であり、自身もゲイ当事者である松中権氏は、当時「彼は私だ」と強く感じたことをきっかけに、LGBTQ+と社会をつなぐ活動を本格的に開始した。本書には、亡くなった学生の家族や友人が語る当時の想いのほか、「大学内部で何が起きたのか」「なぜ人はアウティングをしてしまうのか」「法制度の現在地」など、多角的な論考が収められている。

次世代へのメッセージを届けるという趣旨に賛同した200名以上の支援者から250万円以上の寄付が集まり、今回の出版が実現した。

 

編著者・松中権氏「次の一歩を踏み出す背中を支えるものに」

編著者の松中権氏は、本書に込めた想いを次のように語っている。

「彼が亡くなられて10年という節目に、歴史と変化と希望をきちんと書籍としてまとめて残し、多くの方に手に取っていただく機会をつくりたい。8名がそれぞれに見つめてきた10年間の変化を文章に綴りました。この書籍が、一人ひとりが当然にもっている権利を勝ち取るために、次の一歩を踏み出す、みなさんの背中をやさしく支えるものとなりますように」

なお、本書は特定の個人を糾弾することを目的としたものではなく、あくまで著者8名の視点でつむいだ内容であるとしている。

 

書籍情報

  • 書名:『一橋大学アウティング事件がつむいだ変化と希望 10年の軌跡』
  • 編著:松中 権
  • :本田 恒平、太田 美幸、川口 遼、木山 直子、松岡 宗嗣、奥野 斐、神谷 悠一
  • 発行・発売:サウザンブックス社
  • 発売日:2025年8月24日
  • 定価:2,300円(税別)
  • ISBN:978-4-909125-67-5
  • 詳細・購入http://thousandsofbooks.jp/project/outing/