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【戦後80年】小泉悠氏が高校生と激論「なぜ戦争は起こるのか?」愛知県大府市で特別授業を開催


戦後80年を迎える2025年、ロシアによるウクライナ侵攻など、世界では今なお戦火が絶えない。こうした中、「なぜ戦争は起こるのか?」という根源的な問いを次世代と共に考えるイベントが開催された。

株式会社Gakkenの協力のもと、愛知県大府市主催のイベント「おおぶ平和のつどい」が2025年8月3日、おおぶ文化交流の杜こもれびホールで開かれ、その一環として書籍『僕らは戦争を知らない』を題材にした特別授業が行われた。講師には同書の監修者である軍事専門家、小泉悠氏(東京大学先端科学技術研究センター准教授)が登壇。中学生以下75人を含む200人以上の市民が参加し、高校生平和大使と共に戦争と平和について考えを深めた。

きっかけは一冊の本とウクライナからの避難者

今回の特別授業は、2025年7月にGakkenから発売された書籍『僕らは戦争を知らない 世界中の不条理をなくすためにキミができること ハンディ版』がきっかけである。同書の制作過程で、当時ウクライナから大府市に避難していたマリヤ・ボイコさんに取材協力を得たことが縁となり、今回の開催が実現した。

授業の冒頭、小泉氏は「なぜロシアはウクライナに攻め込んだのか」というテーマで、複雑な国際情勢を参加者にわかりやすく解説。現代の戦争が決して他人事ではないことを訴えかけた。

高校生が問う「なぜ戦争はなくならないのか」

授業の後半では、小泉氏と5人の大府市高校生平和大使によるパネルディスカッションが行われた。高校生たちは7月に鹿児島県の知覧特攻平和会館を訪れ、日本の戦争体験を学んできたばかり。その経験を踏まえ、3つのテーマで小泉氏と議論を交わした。

人はなぜ戦争をやめられないの?

最初のテーマに対し、高校生からは「国という大きな集団になると、個人間のけんか以上に解決が難しい」「『武力行使』という考えが根付いてしまっている」といった意見が出された。

これに対し小泉氏は、「人類史の中で戦争の数は減ってきている」と指摘。「戦争をするか、やめるかの二者択一ではなく、その間にある多様な選択肢をグラデーションで考えることが重要だ」と、多角的な視点を促した。

なぜ話し合いで解決できないの?

「宗教や領土、民族の歴史など、お互いに譲れない価値観があるからではないか」という高校生の意見に対し、小泉氏は「話し合いだけで解決するのは難しい」としつつも、「人類は暴力に頼らないための知恵も絞ってきた。話し合いを含むさまざまな方法を学んでほしい」と語った。

日本の戦争の記憶をどう継承するか?

最後のテーマでは、知覧での学びを踏まえ、「自分が学んだことを後世に伝えていきたい」「体験を文章にし、SNSなどで世界に発信したい」という力強い意見が高校生から述べられた。

小泉氏は「個人の戦争体験を風化させないことは難しいかもしれない」と現実的な視点を示しつつ、「『なぜ戦争が起こったのか』という歴史は残る。特攻の悲惨さを感じた後、『なぜ特攻隊員が生まれたのか』と考えてみてほしい」と、歴史を深く考察することの重要性を説いた。

「戦争は天災ではない」未来を担う世代へのメッセージ

授業の最後に、小泉氏は「戦争から目を逸らしてはいけない。戦争は『天災』ではなく、起こるかどうかは人間次第。どうすれば戦争が起こらないのか、少数の専門家だけでなく、多くの人が考えてほしい」と締めくくり、未来を担う世代への期待を述べた。

参加した高校生は、「これまでとは異なる視点を学んだ」「戦争をなくすためには、その理由を知ることが必要だと感じた」「自分の頭で考えることの大切さを知った」と、それぞれに新たな気づきを得た様子だった。

この日、若い世代の心に蒔かれた平和への探究心の種が、未来の世界で大きな花を咲かせることが期待される。

イベントおよび関連書籍の概要

イベント概要

  • 名称: 大府市制55周年記念事業 おおぶ平和のつどい ~私たちがつなぐ平和~
  • 開催日: 2025年8月3日(日)
  • 場所: おおぶ文化交流の杜こもれびホール
  • 内容:
  • 第1部:平和に関する特別授業「僕らは戦争を知らない」
  • 第2部:映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」上映

書籍概要

  • 書名: 『僕らは戦争を知らない 世界中の不条理をなくすためにキミができること ハンディ版』
  • 監修: 小泉悠
  • 定価: 1,760円(税込)
  • 発売日: 2025年7月10日
  • 発行: 株式会社 Gakken