2025年8月6日(水)、スイスで開幕した第78回ロカルノ国際映画祭のオープニングナイトで、今年亡くなった映画界の巨匠デヴィッド・リンチ監督を追悼するサプライズの短編映画が上映された。盟友ドゥウェイン・ダナムが編集を手掛けたこの作品は、満員の観客に深い感動を与えた。
巨匠へのサプライズ、ロカルノの夜に響く追悼
第78回ロカルノ国際映画祭のオープニングナイト。上映作品が始まる前、芸術監督のジオナ・A・ナザーロ氏は、リンチ監督の名前を伏せたまま「映画に消えることのない足跡を残した」創造主への追悼の意を表明した。
「彼は我々の魂に触れ、すべての感情を揺さぶった」とナザーロ氏は語り、次のように続けた。「美と夢、そして芸術への彼の貢献は決して忘れられることはない。今夜、我々はこの小さくも素晴らしい傑作をもって彼を称える」。
その言葉に続いて、ピアッツァ・グランデ広場の巨大スクリーンに『An Unfinished Room…』と題された短編映画が映し出されると、会場は期待と興奮に包まれた。
短編映画『An Unfinished Room…』が描くリンチの世界
この追悼フィルムは、リンチ監督自身の肉声を中心に構成されている。自身の絵画や映画制作について語る言葉と共に、『ツイン・ピークス』、『ブルーベルベット』、『エレファント・マン』といった代表作や、近年の作品『ジャックは何をした?』の象徴的なシーンが織り交ぜられた。
さらに、アトリエで絵を描く姿や音楽を制作する貴重な映像も含まれており、多岐にわたる彼の芸術活動を垣間見ることができる。
編集を手掛けたのは、『ツイン・ピークス』の新シリーズで監督を務め、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』や『ブルーベルベット』、『ワイルド・アット・ハート』で編集者としてリンチ監督を支えてきたドゥウェイン・ダナム。クリエイティブ・プロデューサーとして、ダナム、S.E.ファインバーグ、デヴィッド・ネグロンがクレジットされている。
『ツイン・ピークス』のテーマと共に捧げる万雷の拍手
短編映画の終盤、スクリーンに『ツイン・ピークス』のあまりにも有名なテーマ曲が流れ始めると、会場の感動は最高潮に達した。そして暗転した画面に「David Lynch 1946-2025」の文字が映し出されると、観客席からは熱狂的で万雷の拍手が鳴り響いた。
編集を手掛けたダナム監督は、自身の新作『Legend of the Happy Worker』のワールドプレミア上映のためロカルノを訪れている。オープニングナイトでは、レッドカーペットを歩くダナム監督と彼のチームの姿もスクリーンに映し出された。
デヴィッド・リンチ監督が遺した夢幻の世界は、スイスの夜空の下で数分間だけ蘇り、その偉大な功績が改めて称えられる感動的な一夜となった。