「先生は俺のことが好きなんだよ」「俺もそうだから」――。カヲル(ラウール)からのあまりにもまっすぐな告白で幕を開けたドラマ『愛の、がっこう』第5話。しかし、小川愛実(木村文乃)が提案したのは、「先生と生徒」という関係を続けることだった。互いの好意を封印し、危ういバランスの上で始まった二人の新たな関係。だが、周囲の思惑と、抑えきれない本心が、その脆い壁を容赦なく突き崩していく。
「ずるい」自分と向き合う愛実――木村文乃が体現する大人の葛藤
カヲルの告白に対し、「すぐに飽きる」と笑顔で受け流し、大人の女性として冷静さを装った愛実。婚約者の洋二(中島歩)に浮気を告白されれば、自身もカヲルに文字を教えていることを打ち明け、「教師として成長できる」とあくまで“教師”としての立場を貫こうとする。しかし、その態度は、カヲルへの想いに必死でブレーキをかけようとする自分自身への言い訳に他ならない。
この、自分の心に嘘をつく「ずるさ」と、それでも教師としての矜持を保とうとする健気さという二面性を、木村文乃は繊細な演技で巧みに表現している。 カヲルの弟・勇樹に絵本を読んであげる時の慈愛に満ちた声色と、カヲルへの想いを自覚しながらも教師の仮面を被り続ける苦悩の表情。彼女の葛藤が、この歪な関係の切なさを一層際立たせている。
剥き出しになるカヲルの痛みとプライド――ラウールが見せる魂の叫び
「先生と生徒」という関係を受け入れたものの、カヲルの心は揺れ動く。そんな彼の心の奥底にある傷が、最も生々しく現れたのが、弟に絵本を読んでやれないシーンだった。文字が読めないという現実を突きつけられた時の、彼の辛そうな表情。それは、ホストとしての彼ではなく、一人の青年としての純粋な痛みだ。
その痛みは、愛実の母・早苗(筒井真理子)が店に乗り込んできた場面で、誇りとなって爆発する。大金で娘から手を引かせようとする早苗に対し、「僕らはお金を恵んでほしいんじゃない」「注文して楽しんでってください」と悔しそうに言い放つカヲル。ラウールは、蔑まれたことへの怒りと、自分たちの存在意義を守ろうとする必死のプライドを、震える声と強い眼差しで見事に体現した。 それは、彼の魂からの叫びであり、愛実との間に横たわる「壁」の存在を痛感させられた瞬間の心の悲鳴でもあった。
崩壊の引き金となった「大嫌い」
周囲の人間たちは、それぞれの正義や思惑で二人を引き裂こうとする。婚約者の裏切り、父親の激昂、そして母親の直接的な介入。カヲルにとって、早苗の言葉は、愛実との間に決して越えられない「高い壁」があるのだと突きつけられるに等しかった。
だからこそ、彼は「もう生徒ごっこはいい」と、愛実が築いた脆い壁を自ら壊しにかかる。そして、最後に絞り出した「先生のことは大嫌い」という言葉。それは、ホストの営業トークなどでは断じてない。好きで好きでどうしようもないのに、身分や立場の違いによって結ばれることが許されない。その絶望とやるせなさが、「大嫌い」という最も強い拒絶の言葉に凝縮されていた。それは、愛しているからこそ出てくる、痛切な愛の告白だったのだ。
完全に崩壊してしまった“先生と生徒”の関係。本心を偽り、互いを傷つけ合った二人は、どこへ向かうのか。あまりにも切ないラストシーンは、今後の展開がさらに過酷なものになることを予感させる。
登場人物
小川愛実(木村文乃)
カヲル(ラウール(Snow Man))
町田百々子(田中みな実)
川原洋二(中島 歩)
竹千代(坂口涼太郎)
佐倉栄太(味方良介)
田所雪乃(野波麻帆)
沢口夏希(早坂美海)
つばさ(荒井啓志)
ヒロト(別府由来)
香坂奈央(りょう)
小川早苗(筒井真理子)
小川誠治(酒向 芳)
松浦小治郎(沢村一樹)
宇都宮明菜(吉瀬美智子)