三宅唱監督の最新作『旅と日々』が、スイスで開催された第78回ロカルノ国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門で、最高賞である金豹賞(グランプリ)を受賞した。日本映画の同賞受賞は、2007年の小林政広監督作品『愛の予感』以来18年ぶりとなる歴史的快挙である。さらに、ヤング審査員賞も同時に受賞し、W受賞の栄誉に輝いた。

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第78回ロカルノ国際映画祭で日本映画がW受賞の快挙
現地時間8月16日に行われた授賞式で、三宅唱監督の最新作『旅と日々』が最高賞の金豹賞に選ばれたことが発表された。
ロカルノ国際映画祭は、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアと並び世界的に権威のある映画祭の一つ。その歴史の中で、日本人監督が金豹賞を受賞するのは、衣笠貞之助、市川崑、実相寺昭雄、小林政広の各監督に続き、三宅監督が史上5人目となる。
本作はヤング審査員賞も受賞しており、国際的に極めて高い評価を受けた形だ。海外メディアからも「人間の悲しみと物語の本質をそっと見つめる静謐な傑作」(Publico)など、公式上映後から称賛の声が相次いでいた。
審査員長も絶賛「胸を打つ体験を提供してくれる」
インターナショナル・コンペティション部門の審査員長を務めた映画監督リティ・パン氏は、授賞式で本作を次のように評した。
「この作品は非常に繊細で、観る者を心に響く物語へと引き込みます。映像の美しさが人生の儚さと強さを映し出しています。物語は巧みに演じられており、ひとつひとつの場面が深い感情を呼び起こし、胸を打つ体験を提供してくれます」
また、ヤング審査員賞の選評では、「夏と冬の鮮烈な対比は、場所というものがどのように登場人物を形づくり、彼らの選択に影響を与えるのか、そして人生の脆さやリアルな側面をいかに浮かび上がらせるのかを物語っていた」と、その映像表現と物語性が高く評価された。
三宅唱監督、シム・ウンギョン、河合優実ら喜びの声
受賞を受け、現地に参加している三宅唱監督、キャストのシム・ウンギョン、河合優実、そして日本で吉報を受けた高田万作(※高は「はしごだか」)から喜びのコメントが寄せられた。
三宅唱監督 コメント全文
ロカルノ国際映画祭、審査員の皆様、選考委員の皆様、すべてのスタッフ、そしてすべての観客の皆様に心から感謝申し上げます。 そしてなにより、この映画に多大なインスピレーションを与えてくださったマンガ家のつげ義春さん、ならびにふたつのマンガの映画化を許諾してくださったつげ正助さんに心から感謝申し上げます。 とても驚いています。いい言葉がみつかりません。一緒に働いたすべての俳優、すべてのスタッフの本当に美しい仕事が、このロカルノの地で評価されたことを心から光栄に思います。ぼくらは最高のチームです。 この映画をつくるまえ、最悪なことがたくさん起きているこの世界で、一体映画になにができるか、深く悩んでいました。ただ、この映画を撮りはじめて、私は映画そのものに対する愛や信頼、そしてこの世界への愛をふたたび感じることができました。完成した映画を通して、多くの方とそれを共有できるなら、とても幸せです。
シム・ウンギョン(主人公・李役) コメント全文
旅と日々で、李を演じることができて光栄に思います。 監督に頼りながらスタッフの皆さんと一緒に旅したゴールがロカルノでとても、とても嬉しいです。審査員の方々、最高です!
河合優実(渚役) コメント全文
びっくりして声が出ました。 三宅唱監督、本当におめでとうございます! 皆で映画を作った道のりのすべて、初めて完成を観た瞬間、ずっと心を奪われ続けたこの作品が冠をいただき、心から嬉しいです。 関わってくれた全ての方と喜びを分かち合いたいです。
高田万作(夏男役) コメント全文
作品の魅力が国や言葉を超えて届いたことを誇りに感じます。三宅監督をはじめチームの情熱と挑戦が、さらに大きく羽ばたくことを願ってやみません。こうして素晴らしい作品に関われたことを光栄に思います。
映画『旅と日々』作品情報
映画『旅と日々』は、2025年11月7日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国でロードショー公開される。
- 公開日: 2025年11月7日(金)
- 公開劇場: TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国ロードショー
- クレジット: (c)2025『旅と日々』製作委員会