ヴェネツィア国際映画祭の開幕を目前に控え、マルコ・ベロッキオ、ケン・ローチといった世界的な映画監督たちが、パレスチナへのより積極的な連帯を表明するよう映画祭側に求める公開書簡を発表した。これに対し、主催者であるヴェネツィア・ビエンナーレは迅速に声明を発表し、「対話に開かれている」との姿勢を示した。
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映画監督ら、ヴェネツィア映画祭に「より明確な非難」を要求
「V4P (Venice4Palestine)」という旗印のもとに集まった、主にイタリアの映画業界関係者を中心とするグループが、ヴェネツィア国際映画祭とその主催団体に対し、パレスチナ問題へのより踏み込んだ姿勢を求める公開書簡を発表した。
この書簡は、映画祭の主催団体であるヴェネツィア・ビエンナーレ、および独立並行部門である「ヴェネツィア・デイズ(Giornate degli Autori)」と「国際批評家週間」に対し、「イスラエル政府と軍によってガザで行われている現在進行中のジェノサイドと、パレスチナ全土で行われている民族浄化を、より勇敢かつ明確に非難する」よう強く求めている。
書簡は「時計を止め、星の光を消せ」という一文で始まり、「これまで通りの生活を続けるには、その重荷はあまりにも大きい。約2年間、ガザ地区とヨルダン川西岸から、疑いようのない明確な映像が我々に届き続けている。我々は信じがたい思いで、無力感に苛まれながら、イスラエル国家によってパレスチナで生中継されるジェノサイドの苦しみを目撃し続けている」と訴えている。
ケン・ローチ、アベル・フェラーラなど国際的な著名人も署名
この公開書簡には、イタリアの著名な監督であるマルコ・ベロッキオ、マッテオ・ガローネ、アリーチェ・ロルヴァケルらに加え、国際的にも名高い映画人が名を連ねている。
署名者には、『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』などで知られるアベル・フェラーラ監督、社会派の巨匠ケン・ローチ監督、金獅子賞受賞作『事件』のフランス人監督オードレイ・ディヴァン、そして今年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞したパレスチナ人監督デュオ、アラブ・ナセルとタルザン・ナセルなどが含まれている。
主催者ビエンナーレは迅速に声明「対話に開かれている」
この動きに対し、ヴェネツィア・ビエンナーレは迅速に声明を発表し、映画祭の立場を表明した。
声明では「ビエンナーレと映画祭は、その歴史を通じて常に、社会と世界が直面する最も差し迫ったあらゆる問題に対する開かれた議論と感受性の場であった」と述べた。
上映作品を通じて多様な視点を提供と主張
ビエンナーレは声明の中で、その証拠として具体的な上映作品を挙げている。今年のコンペティション部門に出品されるチュニジア人監督カウテール・ベン・ハニアの『The Voice of Hind Rajab』は、2024年にガザでイスラエル軍の攻撃を受けた車内に取り残され、後に遺体で発見された5歳のパレスチナ人少女の殺害を題材にした作品である。アーティスティック・ディレクターのアルベルト・バルベーラは、監督が少女と母親との間の実際の通話音声を使用したと、感動をあらわにしながら紹介した。
さらにビエンナーレは、昨年のラインナップには、10月7日のハマスによる攻撃の直後に撮影されたイスラエル人監督ダニ・ローゼンバーグの『Of Dogs and Men』が含まれていたことにも言及した。この作品は、テロ攻撃の最中にいなくなった愛犬を探すためにキブツに戻る16歳の少女を描いている。
声明は「ビエンナーレは、常にそうであるように、対話に開かれている」との言葉で締めくくられた。映画祭は火曜日に開幕し、芸術と政治をめぐる議論は今後も続いていくものとみられる。
ソース:Venice Film Festival Responds to Pro-Palestine Open Letter