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『わたしは、ダニエル・ブレイク』の脚本家ポール・ラヴァティ氏、パレスチナ支援Tシャツで逮捕 政府への批判広がる


映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』や『麦の穂をゆらす風』『家族を想うとき』などで知られるスコットランドの著名な脚本家ポール・ラヴァティ氏が、エディンバラで逮捕された。英国で禁止団体に指定されている「パレスチナ・アクション」への支持を示唆するTシャツを着用していたとして、テロリズム法違反の容疑がかけられている。

エディンバラの警察署前で抗議中に逮捕

事件が起きたのは、エディンバラ市内のセント・レナーズ警察署前であった。ラヴァティ氏は、「パレスチナのジェノサイド、行動の時(Genocide in Palestine, time to take Action)」と書かれたTシャツを着用したことでテロリズム法第13条違反の容疑で起訴される予定だった支援者、モイラ・マクファーレン氏を支持するための抗議活動に参加していた。

スコットランド警察は、68歳の男を「禁止組織への支持を示した」としてテロリズム法に基づき逮捕したことを認め、現在も捜査が継続中であると発表した。

ポール・ラヴァティ氏とは:社会派の巨匠ケン・ローチ監督の盟友

ポール・ラヴァティ氏は、社会派映画の巨匠として知られるケン・ローチ監督の長年の協力者(コラボレーター)として世界的に有名な脚本家である。

代表作には『カルラの歌』、『スイート・シックスティーン』、そしてカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを受賞した『わたしは、ダニエル・ブレイク』などがある。また、アイルランド独立戦争を描いた『麦の穂をゆらす風』でもローチ監督と共にパルム・ドールを獲得しており、その作品は常に社会的なメッセージを強く打ち出してきた。

背景にある「パレスチナ・アクション」禁止措置

今回の逮捕の背景には、英国政府による抗議団体「パレスチナ・アクション」の禁止措置がある。

同団体は、メンバーがブライズ・ノートン空軍基地に侵入し、軍用機2機にスプレー塗料で損傷を与えた事件などを受け、イベット・クーパー内務大臣が禁止を発表。7月5日に正式に禁止団体として指定された。

この禁止措置が施行されて以来、英国全土で「パレスチナ・アクション」に言及する集会に参加した数百人が個人または集団で逮捕される事態となっている。

広がる波紋と政府への批判

この一連の動きに対し、英国内では批判の声も上がっている。元労働党閣僚のピーター・ヘイン氏は先週、英国政府が「パレスチナ・アクション」を巡る問題で「墓穴を掘っている」と指摘。労働党の同僚議員らが同団体の禁止に賛成票を投じたことを後悔していると述べた。

また、ヘイン氏は労働党のステラ・クリーシー議員と共同でガーディアン紙に寄稿し、「現状は平和的な証言をテロリズムと同一視することを意味しており、持続可能ではない」と政府の対応を強く批判した。

抗議活動は今後も続く見通しで、禁止措置に反対する圧力団体は9月6日にロンドンで1000人以上の参加を呼びかける大規模なデモを予定しており、さらなる逮捕者が出る可能性も懸念されている。今回の著名な脚本家の逮捕は、英国における表現の自由と抗議活動の権利を巡る議論に、さらなる一石を投じることとなった。

ソース

Joss Barratt, Sixteen Films 2019/© Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2019