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ヴェネツィア国際映画祭2025、金獅子賞はジム・ジャームッシュ監督『Father Mother Sister Brother』に決定!受賞結果一覧


【記事本文】 世界で最も歴史ある第82回ヴェネツィア国際映画祭の授賞式が現地時間9月6日に開催され、最高賞である金獅子賞に、アメリカのインディペンデント映画の巨匠、ジム・ジャームッシュ監督の『Father Mother Sister Brother』が輝いた。

ジム・ジャームッシュ監督、初の金獅子賞を獲得

今年のコンペティション部門は有力候補がひしめく大混戦となったが、その頂点に立ったのはジム・ジャームッシュ監督の『Father Mother Sister Brother』であった。トム・ウェイツ、アダム・ドライバー、ケイト・ブランシェット、ヴィッキー・クリープス、シャーロット・ランプリングといった豪華キャストが集結した本作は、それぞれ異なる3つの物語を通して、成人したきょうだいとその親との緊張感ある関係性を繊細に描いた作品だ。

サプライズでの受賞となったジャームッシュ監督は、トロフィーを手に「驚いた」と述べた後、次のようにスピーチを行った。 「我々映画製作者は競争のために映画を作っているわけではないが、この予期せぬ栄誉に心から感謝する。アートは、直接的に政治を語る必要はない。だが、我々の間に共感と繋がりを生み出すことができる。それは私たちが抱える問題を解決するための第一歩だ。我々の静かな映画を評価してくれてありがとう」

パレスチナ問題を描いた『The Voice of Hind Rajab』が銀獅子賞

授賞式前の下馬評で本命と目されていたのは、チュニジアのカウテール・ベン・ハニア監督による『The Voice of Hind Rajab』であった。本作は、イスラエル軍の攻撃で親族を殺されたガザ地区の6歳のパレスチナ人少女が、救助を求める必死の叫びを描いた衝撃的なドラマだ。ワールドプレミアでは映画祭史上最長級となる21分間のスタンディングオベーションを受け、圧倒的な評価を得ていた。

結果として、最高賞は逃したものの、審査員大賞にあたる銀獅子賞を受賞。ベン・ハニア監督は「この賞をパレスチナ赤新月社と、ガザで命を救うために全てを危険に晒した人々に捧げる。ヒンドの声はガザ自身の声であり、世界中が聞いた救助を求める叫びだった。しかし、誰もそれに答えなかった。彼女の声は、説明責任が果たされ、正義がもたらされるまで響き続けるだろう」と力強く語った。

監督賞はベニー・サフディ、主演男優・女優賞も決定

銀獅子賞(最優秀監督賞)は、総合格闘技(MMA)の世界を描いた伝記映画『The Smashing Machine』のベニー・サフディ監督が受賞した。弟のジョシュ・サフディと離れ、初の単独長編監督作となった本作で、主演のドウェイン・ジョンソンを本格的なドラマ俳優として開花させた手腕が高く評価された。

最優秀女優賞は、中国のツァイ・シャンジュン監督作『The Sun Rises on Us All』で心を揺さぶる演技を見せたシン・ジーレイが受賞した。

また、最優秀男優賞は、イタリアの名優トニ・セルヴィッロが獲得。パオロ・ソレンティーノ監督と再びタッグを組んだ『La Grazia』でイタリア大統領を人間味豊かに演じ、批評家から絶賛された。二人のコンビは『グレート・ビューティー/追憶のローマ』で米国アカデミー賞国際長編映画賞を受賞しており、再びの快挙に期待がかかる。

オリゾンティ部門では藤元明緒監督作品が審査員特別賞を受賞

革新的な作品が集まるオリゾンティ部門では、日本の藤元明緒監督作品『Lost Land』が審査員特別賞を受賞した。本作は、マレーシアを目指す2人のロヒンギャ難民の子供たちの過酷な旅路を描いた物語。

第82回ヴェネツィア国際映画祭 主な受賞結果一覧

コンペティション部門

  • 金獅子賞(作品賞)
  • 『Father Mother Sister Brother』(監督:ジム・ジャームッシュ)
  • 銀獅子賞(審査員大賞)
  • 『The Voice of Hind Rajab』(監督:カウテール・ベン・ハニア)
  • 銀獅子賞(監督賞)
  • ベニー・サフディ(『The Smashing Machine』)
  • 審査員特別賞
  • 『Below the Clouds』(監督:ジャンフランコ・ロージ)
  • 最優秀女優賞
  • シン・ジーレイ(『The Sun Rises on Us All』)
  • 最優秀男優賞
  • トニ・セルヴィッロ(『La Grazia』)
  • 最優秀脚本賞
  • ヴァレリー・ドンゼッリ、ジル・マルシャン(『At Work』)
  • マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)
  • ルナ・ウェドラー(『Silent Friend』)

オリゾンティ部門

  • 作品賞
  • 『En El Camino』(監督:ダビド・パブロス)
  • 審査員特別賞
  • 『Lost Land』(監督:藤元明緒)
  • 監督賞
  • アヌパルナ・ロイ(『Songs of the Forgotten Trees』)
  • 女優賞
  • ベネデッタ・ポルカローリ(『The Kidnapping of Arabella』)
  • 男優賞
  • ジャコモ・コーヴィ(『A Year of School』)

その他の賞

  • 新人監督賞(ルイジ・デ・ラウレンティス賞)
  • 『Short Summer』(監督:ナスティア・コルキア)
  • 生涯功労金獅子賞
  • ヴェルナー・ヘルツォーク

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