エンターテインメント大手のディズニーは、人気深夜トーク番組「ジミー・キンメル・ライブ!」を一時的に放送停止した決定をめぐり、一部株主から法的措置を前提とした資料開示請求を受けていることが明らかになった。この問題は言論の自由をめぐる議論に発展し、同社の株価は一時急落。時価総額が約40億ドル減少するなど、経営にも大きな影響を及ぼしている。
株主がディズニー経営陣の「受託者責任違反」を指摘
米国教員連盟と国境なき記者団を含む株主グループは、ディズニーに対し書簡を送付。先週のジミー・キンメル氏の番組停止決定に関する資料の開示を要求した。
書簡では、ディズニーの取締役会が「不適切な政治的配慮や系列局との関係を優先」し、投資家に対する「受託者責任に違反したと疑うに足る信頼できる根拠がある」と指摘している。
さらに、「『ジミー・キンメル・ライブ!』の停止による余波は、言論の自由への攻撃として批判を呼び、ボイコットやキンメル氏への組合の支持を引き起こした。ブランドイメージの毀損や、政府の過剰な介入とメディア検閲に屈したとの懸念から、ディズニーの株価は急落した」と述べ、経営陣の判断を厳しく批判した。
番組停止に至る経緯と市場の反応
事態は急速に展開した。発端は、連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長が、キンメル氏がチャーリー・カーク氏を殺害したとされる男性の政治的信条を誤って伝えたとの非難をめぐり、ABCネットワークに対して措置を講じる可能性を示唆したことにある。
この脅迫めいた発言から5時間も経たないうちに、ABCの系列局を多数所有するネクスター社が番組の放送中止を発表。その直後、ABCも圧力に屈する形で番組の放送停止を決定した。
この一連の動きは、検閲をめぐる全米規模の議論を巻き起こした。SNSではディズニーのサービス解約を呼びかけるボイコット運動が起こり、一部のタレントからはキンメル氏が復帰するまで同社との仕事を停止するとの声も上がった。結果として、先週ディズニーの株価は2%以上下落し、時価総額は約40億ドルも減少した。
株主が要求する具体的な資料の内容
株主側は、潜在的な不正行為を調査する目的で、「帳簿および記録」の開示を要求している。具体的には以下の資料が含まれる。
- キンメル氏の番組停止に関連する取締役会の資料
- この決定に関する政府関係者、ネクスター社、シンクレア社との通信記録
- 系列局に番組の放送中止権を認めるディズニーとの契約書の写し
- 深夜番組のコンテンツ管理に関する社内ポリシー
- ディズニーの他事業分野における規制当局からの承認取得能力に関する情報
調査の結果次第では、株主は会社に対して損害賠償を求める株主代表訴訟を提起する可能性がある。書簡では「取締役会と経営陣が、会社と株主の最善の利益よりも、不適切な政治的配慮や系列局との関係を優先することで、忠実義務、注意義務、善管注意義務に違反した可能性があると疑うに足る信頼できる根拠がある」と強調されている。
やまぬ波紋、大手メディアの姿勢が問われる
キンメル氏はすでに番組に復帰しているものの、ディズニーの対応がもたらした波紋は広がり続けている。トランプ前大統領は自身のSNSで「この件でABCを試してみようと思う。どうなるか見てみよう」と投稿し、さらなる政治的圧力を示唆した。
株主側の代理人を務めるロベルタ・カプラン弁護士は、「大手メディア企業は、憲法に反する脅迫や恐喝に屈するべきではない」と声明で述べた。同氏は、トランプ氏に対する性的虐待および名誉毀損訴訟でE・ジーン・キャロル氏の代理人を務めたことで知られる。
今回の事態は、単なる番組の放送停止問題にとどまらず、巨大メディア企業が政治的圧力にどう向き合うべきか、そして企業のガバナンスのあり方を問う深刻な問題へと発展している。