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OpenAI「Sora 2」がハリウッドIP無断使用で全面対決へ サム・アルトマンの危険な賭け


OpenAIがリリースした動画生成AI「Sora 2」の新機能が、ハリウッドを震撼させている。同社は、主要スタジオが保有する知的財産(IP)を、事実上の「オプトアウト方式」で利用可能にした。これは、権利者が明確に拒否しない限り、AIが人気キャラクターなどを生成できてしまう仕組みである。この強硬な姿勢に対し、ハリウッドのタレントエージェンシーや大手スタジオは猛反発しており、シリコンバレーとエンターテインメント業界の対立は新たな局面を迎えた。

欺瞞に満ちた交渉とハリウッドの不信感

騒動の発端は、OpenAIがSoraの新ソーシャルメディアアプリをリリースする直前の9月下旬に遡る。複数のハリウッド大手タレントエージェンシーは、OpenAI側から事前の説明を受けたものの、その内容は混乱を招くものだった。

あるエージェンシー幹部によると、OpenAIは当初、クリエイターの知的財産や肖像権を保護する「オプトイン方式(事前許諾制)」を導入すると繰り返し説明していたという。しかし、各社が情報交換を進めるうち、OpenAIの説明がそれぞれで異なっていることが発覚した。「彼らは意図的に誤解を招くような説明をしていた」と、この幹部はOpenAIへの不信感を露わにする。

特に、俳優の顔や声などの「肖像権」と、キャラクターなどの「知的財産権」の扱いに関する説明は二転三転した。ある企業には両方ともオプトインが必要だと伝えられた一方で、別の企業にはその逆が伝えられるなど、OpenAIのメッセージは一貫性を欠いていたのである。

「オプトアウト方式」の強行と人気IPの無断利用

大手エージェンシーのWMEは、マシュー・マコノヒーやライアン・レイノルズといった所属クライアントの肖像が無断で使用される可能性について、OpenAI側に強く抗議した。当初、「使用を望まないなら、クライアントが個別にオプトアウト(拒否申請)する必要がある」と伝えられたWMEのパートナーは、「そんなことをクライアントに提案すれば、即刻クビになるだろう」と猛反発したという。

リリース前日の9月29日、OpenAIはWMEに対し、肖像権については許可なく使用しない方針を伝えた。これはエージェンシー側にとって部分的な勝利であった。しかし、その一方で、キャラクターなどの知的財産については、スタジオ側が個別に利用停止を要求する「オプトアウト方式」が強行された。

その結果、リリースされたSora 2のアプリでは、『ボブズ・バーガーズ』、『スポンジ・ボブ』、『ポケモン』、『グランド・セフト・オート』といったハリウッドやゲーム業界の著名なIPをフィーチャーした動画が、ユーザーによって次々と生成された。アプリは瞬く間にApp Storeの人気ランキング上位に駆け上がった。

計算された戦略か サム・アルトマンCEOの狙い

この一連の動きについて、あるエージェンシー幹部は「サム・アルトマンCEOによる、非常によく計算された一連の行動だ」と断言する。「彼らは、保護機能やガードレールなしでこれをリリースすればどうなるか、正確に理解していた」

これは、「許可を求めるな、後から許しを請え(Ask forgiveness, not permission)」という、シリコンバレーのスタートアップがしばしば用いる戦略そのものである。まずサービスを市場に投入してユーザー基盤を確立し、既成事実を作ってから交渉を有利に進めるという狙いだ。

AI動画生成ツールであるSoraにとって、ユーザーが知っている有名キャラクターを生成できるか否かは、その魅力を左右し、収益化に直結する重要な要素である。OpenAIは、この点を突くために、あえてハリウッドとの対立を選んだと見られている。

法的措置も辞さないハリウッドの反撃とジレンマ

ハリウッド側の怒りは頂点に達している。業界のトップロビー団体であるモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)をはじめ、WME、CAA、UTAといった大手エージェンシーは次々とOpenAIを公然と非難する声明を発表した。

ディズニーは9月下旬、OpenAIに対し「著作権法上の権利を維持するために、自社作品の利用を『オプトアウト』する必要はない」とする強い口調の書簡を送付。著作権侵害に対する断固たる姿勢を示した。法律の専門家も「彼らは著作権の原則を根底から覆そうとしている。権利者がオプトアウトしないのが悪い、という偽りの取引を設定している」とOpenAIの手法を厳しく批判する。

現在、各社は法務担当者を交えて協議を進めており、大規模な訴訟も検討されている。しかし、ハリウッドのスタジオ側にはジレンマも存在する。AI企業を訴えることで、将来的にAI技術を活用したパートナーシップを築く機会を永遠に失ってしまう可能性があるからだ。あるWMEのパートナーは「彼らを訴えれば、提携への道は閉ざされる。それが大きな難問だ」と語る。

問われる業界の未来 「インターネットの悪夢」の再来か

この状況は、かつてエンターテインメント業界がインターネット黎明期に海賊版対策で後手に回り、大きな打撃を受けた歴史を彷彿とさせる。AI企業が長年にわたり、インターネット上から映画やテレビ番組を無断でスクレイピングし、学習データとして利用してきたことに対し、スタジオ側の対応が遅れたとの指摘もエージェンシー内には存在する。

OpenAIのサム・アルトマンCEOはブログで「これは『インタラクティブなファンフィクション』であり、権利者にとっても新たな価値を生む」と主張するが、ハリウッドがこの論理を受け入れる気配はない。

OpenAIが燃やした「交渉の橋」の先で、AIとクリエイティブ産業は共存の道を見いだせるのか。それとも、法廷での全面対決に突き進むのか。この対立の行方は、今後の知的財産のあり方を占う重要な試金石となるだろう。

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