クエンティン・タランティーノ監督の代表作の一つ『キル・ビル』の完全版、「キル・ビル:ザ・ホール・ブラッディ・アフェア(Kill Bill: The Whole Bloody Affair)」が、遂に2025年12月5日より全米で劇場公開されることが決定した。
これまで、このバージョンはタランティーノ監督が所有する個人プリントがロサンゼルスなどで散発的に上映されるのみであり、鑑賞機会は極めて限られていた。映画ファンにとってはまさに待望の全国公開となる。配給はライオンズゲートが担当する。
271分の「完全版」- 新規アニメシーンも追加
今回公開される「ザ・ホール・ブラッディ・アフェア」は、カンヌ国際映画祭で上映された258分のカットがベースとなる。
さらに特筆すべき点として、これまで未公開だった新作のアニメシークエンスが追加されることが明らかになった。これにより、総尺は**271分(約4時間31分)**という、さらに長大かつマキシマリストな作品へと進化を遂げている。
タランティーノ監督のフィルム純粋主義(celluloid purist)の理想を反映し、一部の市場では70mmおよび35mmフィルムでの上映も予定されている。
編集がもたらす決定的な違い(※ネタバレ注意)
「ザ・ホール・ブラッディ・アフェア」は、単に『Vol. 1』と『Vol. 2』を繋ぎ合わせたものではない。タランティーノ監督によるいくつかの巧みな編集変更が、映画全体の感情的なインパクトを根本から変えている。
(※以下、物語の核心に触れる内容を含む)
最も大きな変更点は、『Vol. 1』のラストシーンでビル(デヴィッド・キャラダイン)がブライド(ユマ・サーマン)の娘が生きていることを明かす場面が削除されている点である。
この変更により、観客はブライドが娘の生存を知るのとまったく同じタイミングで、その事実を知ることになる。映画開始から約4時間を経て訪れるこの瞬間は、それまでの物語の積み重ねによって、計り知れないほどの力強い感動を生み出す構造となっている。
無修正・フルカラーで描かれる「究極の映画体験」
本作は「Unrated(無評価)」として公開される。これは、カンヌ版で描かれた全てのゴア(流血)シーンが、修正なしのフルカラーで復元されることを意味する。
この形態で鑑賞する『キル・ビル』は、「多ければ多いほど良い(more is more)」を体現する究極の映画と言える。
暴力的でありながら、可笑しく、甘美で、意地悪く、感動的。瞑想的かつ熱狂的、大衆的(パルプ)でありながら哲学的。映画が提供しうるあらゆる喜びと感情が、最初から最後まで詰め込まれている。
この待望の公開は、映画狂(シネフィル)にとって、これ以上ない早めのクリスマスプレゼントとなるだろう。
予告編(トレーラー)
今回の全米公開決定に合わせ、トレーラーも公開された。
