昭和100年を迎える2025年、映画ファン垂涎のイベントが幕を開ける。
松竹と映画専門雑誌『映画秘宝』がタッグを組んだコラボレーション企画、「松竹×映画秘宝 映画祭」の開催が決定した。本イベントでは、1960年代から1970年代にかけて製作された松竹映画の中から、強烈な個性を放つ傑作全20作品が厳選され、東京・名古屋・大阪の3都市で上映される。

目次
禁断のラインナップ:カルト、狂気、そして規格外のエネルギー
今回の特集上映における最大の見どころは、「松竹×映画秘宝セレクション」と銘打たれたそのラインナップだ。これまでDVD化やテレビ放送がなされた作品も含まれるが、その多くは鑑賞機会が極めて限られていた「幻の映画」である。
カルト的な支持を集める作品、狂気に満ちた演出、規格外のエネルギーが迸るアクションなど、7つのカテゴリーに分類された全20作品がスクリーンに復活する。
7つのカテゴリーと注目作品
上映作品は以下の7つのテーマに分類されている。各カテゴリーの注目作を紹介する。
1. スリラー王・野村芳太郎のもうひとつの顔
『砂の器』などで知られる巨匠・野村芳太郎の、没後20年を記念した特集。
- 『八つ墓村』:横溝正史原作、大ヒットを記録した祟りと恐怖のミステリー大作。
- 『配達されない三通の手紙』:エラリイ・クイーン原作、地方名家を舞台にした不穏なサスペンス。
- 『影の車』:松本清張原作。日常に潜む恐怖を描き、観る者に衝撃を与えるスリラー。
2. 松竹Sci-Fi&Horror
クエンティン・タランティーノも絶賛したカルト作を含む、異色のSF・ホラー枠。
- 『吸血鬼ゴケミドロ』:『遊星からの物体X』にも影響を与えたとされる、伝説的SFホラー。
- 『怪談残酷物語』:登場人物全員が悪人という、柴田錬三郎原作の鮮烈な時代劇。
- 『魔性の夏 四谷怪談より』:蜷川幸雄の映画初監督作。撮影中の怪現象も話題となったわくつきのホラー。
3. 松竹ニューウェイブ不良路線
若者の熱量と暴走を描いた、鋭利な青春映画たち。
- 『乾いた花』:篠田正浩監督×石原慎太郎原作。賭博に魅入られた男と少女の異常な関係を描く。
- 『太陽の墓場』:大島渚監督作品。大阪のドヤ街を舞台に性と暴力を描いた青春残酷物語。
4. 異形の松竹ゴシック・ミステリー映画
- 『渚の白い家』:ラスト20分のどんでん返しが語り草となっている和製ジャーロ(イタリア風スリラー)。
- 『この子の七つのお祝いに』:増村保造監督の遺作にして、横溝正史ミステリー大賞受賞作の映画化。
5. 松竹ハイパーアクション(隠れた傑作選)
- 『俺の血は他人の血』:火野正平初出演。マフィアの血を輸血され超人化した男のSFアクション。
- 『狼よ落日を斬れ』:池波正太郎原作、三隅研次監督。豪華スター共演の壮絶な剣客ドラマ。
6. 松竹DIG路線(映画本に載らないヤバい映画)
- 『追いつめる』:田宮二郎と渡哲也が初共演。元警官とヤクザの激闘を描くハードボイルド。
- 『異聞猿飛佐助』:篠田正浩監督の松竹ラスト作。忍者の激突を描くアクション大作。
7. 石井輝男 異色の松竹作
没後20年となる「キング・オブ・カルト」石井輝男監督の松竹作品群。
- 『日本ゼロ地帯・夜を狙え』:夜の組織に挑む男たちを描く鮮烈なドラマ。
- 『神火101・殺しの用心棒』:香港・マカオを舞台にした痛快アクション活劇。
開催劇場とスケジュール
本映画祭は以下の3館で開催される。地域によって上映期間やスケジュールが異なるため注意が必要だ。
東京:新文芸坐
2025年11月から2026年4月にかけて、月替わりでテーマごとの作品を上映。
- 11月:野村芳太郎特集(『八つ墓村』ほか)
- 12月:SF&ホラー(『吸血鬼ゴケミドロ』ほか)
- 以降、順次カテゴリーごとに上映予定。
愛知:ミッドランドスクエア シネマ
- 期間:2025年11月28日(金)~2027年6月
- 内容:毎月1作品を1週間限定で上映するロングラン形式。
大阪:シネ・ヌーヴォ
- 期間:2026年1月2日(金)~1月30日(金)
- 内容:1ヶ月間に全20作品を一挙上映する集中開催。
トークイベントも開催決定
東京・新文芸坐では、上映に合わせたスペシャルトークイベントが予定されている。
- 『吸血鬼ゴケミドロ』トークイベント
- 日時:2025年12月17日(水)19:30の回上映後
- ゲスト(予定):吉田伊知郎(映画評論家)、高鳥都(ライター)
- 『その口紅が憎い』トークイベント
- 日時:2026年1月20日(火)上映後
