米Variety誌は、世界的な社会現象を巻き起こしている『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』について、外崎春雄監督や制作スタジオ「ufotable」のスタッフへのインタビューを交えた記事を掲載した。
アカデミー賞への期待が高まるなか、驚異的な映像美の裏側にあった技術的課題や、3年半に及ぶ制作の道のりを明らかにしている。
これまで、スタジオジブリ(宮崎駿監督作品)以外の日本アニメーションが、米アカデミー賞において主要な存在感を示すことは稀であった。しかし、クランチロールは『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』でその歴史を塗り替えようとしている。
本作は、全世界で6億8,200万ドルという驚異的な興行収入を記録し、日本映画として史上最高額を更新。さらに、ゴールデングローブ賞の選出作品(アニメ映画部門)にもノミネートされるなど、賞レースにおいても大きな注目を集めている。
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「2Dと3Dの融合」:外崎監督が語る映像制作の難しさ
制作を担うufotableは、伝統的な2Dアニメーションと高度なCGを見事に融合させている。外崎春雄監督はVarietyの取材に対し、キャラクターはすべて手描き(2D)で制作されていることを強調した。
本作における最大の挑戦について、外崎監督は「CGで構築された背景や環境の中に、2Dのフレームをいかに違和感なく馴染ませるか(マリッジさせるか)だった」と振り返る。通訳を介して語られたその言葉によれば、それは「これまでで最も困難な融合の一つ」であったという。
この緻密な作業を実現するため、制作工程には特別なステップが追加したという。
- アニメーターが描いた原画(キーフレーム)を3Dチームに送る。
- 3Dチームが、その動きを周囲の3D環境に完璧に一致させる。
- 再びアニメーターの手元に戻し、一枚一枚のフレームを磨き上げる。
この妥協のないプロセスが、無限城という異空間でのダイナミックなアクションを支えている。
当初は3時間を超えていた?ストーリー構築へのこだわり
ufotableの代表であり、チーフディレクターを務める近藤光氏は、絵コンテの段階では映画の長さが当初3時間を超えていたという事実を明かした。
スタジオが最も重視したのは、キャラクターや物語を愛するファンが、感情的に深く入り込める構成にすることだ。そのために、制作には3年半以上の歳月が投じられた。
圧倒的なスケール感:無限城という「巨大な戦場」
撮影監督の寺尾優一氏は、激しいバトルアクションの視覚的なスペクタクルと、感情に訴えかけるストーリーテリングのバランスを保つ重要な役割を担った。
感情的なバックボーンが確立された後、次に求められたのは「壮大な空間」の構築だ。物語の舞台となる「無限城」は、かつてTVシリーズの初期にも登場したが、劇場版ではより巨大で圧倒的な空間として再構築された。
寺尾氏は、城内での破壊描写や物理演算を用いたエフェクトが、ファンに新しい体験を提供すると自信を見せる。「スタジオ全員が一丸となって取り組んだ大きな挑戦だった」と述べた。
アニメーションを芸術の域へ:アカデミー賞への挑戦
クランチロールは、本作がアカデミー賞の投票者の心に響き、アニメーションの地位をさらに向上させることを期待している。同社のグローバル・コマース担当シニア・バイス・プレジデント、ミッチェル・バーガー氏は、本作を「美しい芸術作品」と評した。
バーガー氏は、「この作品に注ぎ込まれた職人技、配慮、そして愛を多くの人々に知ってもらうこと自体が素晴らしいことだ」と語り、賞レースを通じてアニメーションという表現技法そのものを高めていきたいという意欲を示している。
