リアルサウンド映画部に、アニメの音楽描写についてのコラムを書きました。
『耳をすませば』~『BLUE GIANT』に至るアニメ演奏描写の変遷 手描き、ロトスコープ、モーションキャプチャが与える効果の違い – Real Sound|リアルサウンド
『BLUE GIANT』の幻想的な描写が注目を集めています。そして一方で3DCGによる演奏の描写は議論の的になっていますね。それをきっかけに、これまでのアニメでどのような演奏描写があったのかを振り返り、その進化を知ろうという目的のコラムです。
技法も様々なものが使われます。ロトスコープを用いたものや、参考動画を撮影しているもの、モーションキャプチャを使うものなどなど。そして、アニメと音楽というものは相性がいいものなのかと問うような内容になっています。
メディアミックス戦略の中でも音楽は重要という点もあって、アニメと音楽はこれからも密接に関わり続けていくと思います。演奏をどう描写するのかは、そういう点でも重要ですね。
以下、原稿作成時のメモと構成案。
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参考
岩井澤監督の『音楽』
臨場感あふれる演奏シーン 『坂道のアポロン』アニメ制作の舞台裏を公開 | ORICON NEWS
『けいおん!』『バンドリ!』『うた☆プリ』……アニメーションにおける演奏表現の進化を辿る|Real Sound|リアルサウンド 映画部
(78) 『響け!ユーフォニアム』「三日月の舞」アニメーション制作資料用 演奏動画【5周年記念】 – YouTube
uron on Twitter: “#ぼっち・ざ・ろっく ライブCGディレクター担当しております。 ライブパートのアセット制作及び、モーションキャプチャとバーチャルカメラを使用した3DLOで協力させて頂きました。 何卒宜しくお願い致します🎸🥁💫” / Twitter
梅原翔太 on Twitter: “ぼっち・ざ・ろっく!5話ありがとうございました!経験したことがない演奏シーンへの挑戦でしたが、すべてを手描きアニメーションで描くということは今回集まって頂いたスタッフでしかできないものになったと思います。オンエアは一瞬で過ぎさっていきますが、その一瞬に全てをかけた皆さまに感謝を! https://t.co/rhtpZ0jL10” / Twitter
GEN OKAMURA / 岡村 弦 on Twitter: “遂に4人での演奏シーンが。楽曲は「ギターと孤独と蒼い惑星」作曲はOPに続いて音羽-otoha-さんが担当!ぼざろ制作の割と初期に書いていただきました。曲に勢いあるし、モーションキャプチャーから起こした演奏シーンが素晴らしいっ! #ぼっち・ざ・ろっく” / Twitter
メインスタッフが語る『ぼっち・ざ・ろっく!』のライブシーン制作舞台裏(前編) | Febri
【原作者・石塚真一先生が来仙!】 映画『BLUE GIANT』公開記念スペシャルインタビュー | 日刊せんだいタウン情報S-style Web
石塚 色々な映像化のオファーをいただいた時に、ストーリーディレクターのNUMBER8さんと「アニメが一番説得力のある表現ができるかも」と話していたんです。実写ですと演奏シーンなどを表現するのがすごく難しいですが、アニメーションなら音楽表現の自由度が増してより可能性が広がると思いました。そして何より映像化するなら映画館で迫力のある映像と音響で観て欲しいという思いが強かったので、アニメーション映画が一番ぴったりきたんです。
石塚 演奏シーンは本当によく動いていましたよね。その躍動感のある動きも若々しさを表現するためのアニメならではの見どころ。特に漫画ではサックスを吹く姿を描くのは意外とバリエーションが限られていて悩むところなのですが、映画では色々なアングルや自由な動きで大の演奏シーンが表現されていて、「さすが監督」と感心しっぱなしでした。
2ページ目:アニメ映画『BLUE GIANT』立川 譲監督インタビュー | アニメイトタイムズ
回り込むシーンは、演奏している人の心情を表現しました。ゾーンに入って遠くへ行っているような。自身を置き去りにして、演奏している意識に集中しきっているような。
「BLUE GIANT」原作者・石塚真一インタビュー なぜマンガから音が聞こえるのか? アニメで説得力のある音楽に – MANTANWEB(まんたんウェブ)
アニメの映像を見て、こういうやり方があるんだ!と気付いたところもあって、マンガでも使えないかな?と勉強させていただきました。アニメの映像は強くて、説得力があるんですよね」と太鼓判を押す。
BLUE GIANT・・・CGは確かに馴染んでいない。しかし、内臓をひっくり返すような、ミュージシャンの内面に入り込んだかのような演出力が優れている
モーションキャプチャ―とロトスコープ両方ある・・・これをごっちゃにしている人が多そう
演奏シーン描写別
作画・・・エンジェルビートとか、ハルヒ
参照動画を元に作画・・・響けユーフォニアム、坂道のアポロンなど
モーションキャプチャによる3DCG・・・バンドリ、ピアノの森
作画とCGのハイブリッド・・・ぼっち・ざ・ろっく(表に見える映像は作画、モーキャプを下描きにしている)
ロトスコープ・・・音楽
Point3つ
BLUE GIANTの演奏描写の凄い部分
ミュージシャンの内面に入り込むかのような演出
音と一緒にカメラがワイドに弾いていく、音の伸びとカメラワークが一致するカット
回り込むシーンは、演奏している人の心情を表現しました。ゾーンに入って遠くへ行っているような。自身を置き去りにして、演奏している意識に集中しきっているような。2ページ目:アニメ映画『BLUE GIANT』立川 譲監督インタビュー | アニメイトタイムズ
アングルを工夫、極端な煽りで迫力をだしている。光の乱反射など、印象的なカット、観客のリアクションも含めて、臨場感と創出、言葉にしがたい抽象イメージも用いて、音楽そのものを絵にしようという試み。音の洪水、奔流をイメージでぶつけてくるという演出は非常に特異
アニメの演奏描写の発展・種類
作画、
参考動画を見る作画。。。プレイ動画は必ずしも、完成絵コンテのアングル通りでもないし、カメラワークも異なる
ロトスコープ。。。元映像が完全にコンテ通りである必要がある
モーションキャプチャ・・・作画との馴染ませ問題が発生
モーションキャプチャの下描きに作画。。。ロトスコープの映像をCGでやるということか。
演奏描写はただ自然ならそれでいいということではない
Intro
音楽をフィーチャーしたアニメの話題が尽きない。ワンピースの大ヒット、ぼっち・ざ・ろっくなどなど。
今ヒット中の話題のBLUE GIANTも絶賛が相次いでいる
アニメと音は相性が良いと言える。ミッキーマウスは蒸気船ウィリーで口笛を吹いているのは、音に合わせリズミカルに動く様が気持いい、そこにアニメーションの魅力も乗せやすいからだろう。
BLUE GIANTのような劇場作品は、映画館の音響設備で魅力を増幅できるタイプの作品で、音をフィーチャーした映画は今強い。本作も上原ひろみの音楽に負うところが大きい
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その迫真の音楽を、いかに映像は支えるか。アニメの演奏描写を観る。
その描写方法はいろいろある。近年のアニメの動向を見てみよう。
Body1作画する方法別に紹介
作画、
ライブaction
ロトスコープ
CG
モーションキャプチャ
それらのハイブリッド
2000年代のエンジェルビートやハルヒのバンドシーンは、短いながらもリアリティを感じさせる。
坂道のアポロンはジャズを扱った作品。これは10台のカメラで撮影した映像を、参考動画に作画をしている。
映像をなぞったロトスコープではない。
参考動画を見て描くのと、映像をトレースするロトスコープは何が違うか。
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2つの例
参照動画の例、ユーフォ・・・そもそものもと映像は、コンテ通りではない。芝居のタイミングも違う
ロトスコープの例、音楽・・・元の映像がコンテ通りである必要がある。
坂道のアポロンやユーフォ、耳をすませばの演奏シーンなどは、参考の動画をレファレンスにして描かれている。けいおん!もそうか(要確認)
音楽はロトスコープを全面的に採用。髪の毛一本にいたるまでトレースして動かす驚異的な演奏シーンを生み出している。
近年はモーションキャプチャで演奏者の動きを収録して3DCGで表現する作品もある。
これの代表格はバンドリだ。フィルムライブは全編に渡り演奏シーンのみで構成されているが、モーションキャプチャを採用している。フル3D作品であるがゆえにモーキャプは相性がいい。
もちろんアニメーターによる芝居づけがアニメとしてのリアリティラインに沿っているからリアリティがある。
ぼっち・ざ・ろっくはハイブリッドと言えるやり方だ。
モーションキャプチャのデータを下描きに作画を試みている。・・・この利点は、キャプチャデータを作成した後から、3Dカメラでコンテを検討しレイアウトも自由に作れる点だ。実映像を用いるロトスコープは最初からコンテ通りの映像である必要がある。
表に見えるキャラクターの芝居は基本的に手描きの作画だ。
メインスタッフが語る『ぼっち・ざ・ろっく!』のライブシーン制作舞台裏(前編) | Febri
Body2リアルだけの追求ではないBLUE GIANTの演奏描写
モーションキャプチャ、ロトスコープ、作画が混在する演奏シーンだ。あらゆる技術を総動員している。
その結果、各技術を下敷きにしたカットが馴染んでいない部分もある。特にCGパートだろう。
しかし、本作の演奏描写はリアリティとは別の水準でハイレベルだ。
内臓をひっくり返すという、作中の言葉を反映するかのように、演奏中のミュージシャンの内面で、どんなことが起きているのか、その中身にまで入り込むような演出を試みる。
時にはサックスの中に吸い込まれ、時にそこかれ音が会場に伸びていくのに合わせてカメラが縦横無尽に動く。
カメラが廻り根来るシーンは、何かがゾーンに入る瞬間の快感を味合わせる。リアルな演奏を観客に見せるだけでなく、演奏している本人と観客を一体化させるような演出を仕掛けている。
回り込むシーンは、演奏している人の心情を表現しました。ゾーンに入って遠くへ行っているような。自身を置き去りにして、演奏している意識に集中しきっているような。2ページ目:アニメ映画『BLUE GIANT』立川 譲監督インタビュー | アニメイトタイムズ
威風堂々のアオリカットも特徴的。間近に捉える演奏者の熱をそのままダイレクトに伝えるようなアングルが効果的。
抽象的なイメージ映像の氾濫は、言葉にならない音楽をそのまま具現化したような試みだ。
馴染んでいないCGカットは確かに欠点と言えるが、決定的に演奏者がゾーンに入る瞬間は作画が選択されている。その取捨選択はかなり注意深くされていると思われ、ここは絶対に作画でいかねばいけないというカットの完成度は非常に高い。
演出レベルでいうと、音楽アニメの新しいステージに突入したという印象を受ける。
2010年前後から増加。
けいおん、エンジェルビーツ、坂道のアポロン、アイドルマスターやラブライブなど。
『ぼっち・ざ・ろっく』や『BLUE GIANT』は、演奏の最中にドラマが進行する。誰かがミスをしたり、それを別の誰かがカバーしたり、演奏中にキャラクターが覚醒したりと、演奏シーンはただの見せ場ではなく、ドラマとしても重要な意味を持つように構成されている。今後はリアルな演奏だけでなく、演奏中にミュージシャンはどんな意識になり、メンバー間でどんなケミストリーが起きているのかなど、深い内面を描写するような作品が増えれば、音楽アニメはさらなる進化をするのではないか。音楽家のドラマは演奏の真っ只中にこそ起きているはずだから。
これまでのアニメの演奏シーンとは異なるレイヤーに挑んだ作品と言っていいだろう。
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メモ終わり。
『BLUE GIANT』は弱点はあるかもしれないけど、とにかく素晴らしい作品なので、是非一度見てみてください。劇場で観た方が絶対に良い作品です。アニメという表現媒体と音楽の相性について、これまでとは異なる挑戦をして、その相性をさらに深めたと言っていいと思います。
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