マグミクスに、マンガとアニメの版権問題の複雑な事情について書きました。
アニメーターの二次創作は著作権侵害? 漫画家の苦言で議論勃発…アニメ業界の版権事情 | マグミクス
SNS上で大きな議論になっていたことをうけて書いたものです。ことの発端は森川ジョージ先生が、アニメーターが描いたと思しきイラストをファンからリプライで見せられたことで、アニメーターのサイン入りの色紙であったことで、これは自分のキャラクターを勝手に使われたものだと苦言を呈したというものです。
これは絵描きのルールに反すると森川先生は主張、しかし、当該アニメーターは『はじめの一歩』に参加したアニメーターさんで、自分が参加したアニメ作品のイラストをファンにプレゼントするのがそんなに悪いことなのかと、様々な視点から意見が噴出しています。
この問題、そもそもどうして問題になるのかという背景と、二次創作文化への波及効果、SNS時代にこうした事例はどうあるべきなのかについて、書いてみました。とても難しい問題ですが、アニメーターにはなんの権利も保障されないというのは、正直きついことで良いおとしどころはないか探るための一助になればと思い、筆をとった次第。
以下、原稿作成時のメモと構成案。
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参考
著作権法|条文|法令リード
森川ジョージ先生が海外ファンから見せられたコレクションに端を発した、海外のコミッションで描かれる色紙についての話 (2ページ目) – Togetter
森川ジョージ on X: “https://t.co/f8WJR4OBa5” / X
加藤直之(スタジオぬえ)SFイラストを描いてます。 on X: “原作付きのアニメでは、「製作会社が原作者と契約する際」関わったスタッフが「ファンなどに向けたイベントで」「原作のキャラクターを描くときどうすればいいか」をきちんと契約項目に入れておくようにすればいいと思います。 *ぼくはアニメの原作者の一人として契約を交わした経験があります。” / X
映画予告に「スタッフクレジットない」有名監督が憤慨 アニメ制作現場の本音トーク…「職業を軽視している」の声も: J-CAST ニュース
5つのケーススタディで考える著作権侵害にならないイラストの使い方 topcourt
友達に模写したイラストをプレゼントするのは違法ですか? – 弁護士ドットコム 犯罪・刑事事件
SNS社会とグレーの相性の絶対的な悪さ
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同人カルチャーが生み出した創作の活性化のエッセンスを保持するための法律と契約対応を必死で模索するしかないのか。
権利者の権利ばかりを守ると今度はファンの気持ちには答えられない。嬉しそうにコレクションしていたファンの気持ちはどうなる。一人ファンを失うことで誰かのメリットになるか。
アニメの著作権
著作権法第16条(映画の著作物の著作者)
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、 又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、 制作、監督、演出、撮影、美術等を担当して その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。 ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。
– クリエイターの権利を守る! 「著作権契約」について知ろう
また、映画の著作物、つまり、映像作品の場合には著作権の帰属について特殊な規定があり、映画の製作者に著作権が帰属します(著作権法29条)。「映画の製作者」は、映画の著作物の製作に発意と責任を有する者とされていて(著作権法2条1項10号)、製作を企画し、資金を出して、法律上の権利、義務や経済的な収入、支出の主体になる者のことをいいます。
著作権法でいう「映画の著作物」は、劇場用映画だけではなくて、テレビCMやゲームなど映像による表現を広く含む概念なので注意が必要です。どの著作物にせよ、契約書で権利の帰属について明確にしておくことが大切です。
木村:グレーゾーンという意味では正しいです。理論的には著作権侵害になるリスクもあるという言い方になりますが、実際には権利行使されないケースも多いです。二次創作の許諾を求められたらNOと言わざるを得ないとか、権利行使をどんどんしていく権利者もおり、スタンスは著作権者によって様々です。二次創作が宣伝になる側面もあり、黙認されていることも多いです。
Guide: What Animators Need to Know About Animation Copyright
work for hire | Wex | US Law | LII / Legal Information Institute
似ているケース
【悲報】飲食店に色紙を送って炎上したウマ娘同人作家のあきのすすきさん、謝罪する : あとはまとめるだけ
構成
この問題の本質は何か
経緯
サイン色紙が原作者に見せられる、ツイッターによって?
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その作品のアニメに参加したアニメーターが描いたものだという
↓
漫画家が著作権違反だとして、警告
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アニメーターを中心に波紋が広がり、議論は二次創作のあり方にまで発展、*議論*百出
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実際、漫画家は個人に向けて、と書いているが、事実としてかなり射程の広い指摘だったことは間違いない
論点整理が必要
Point(論点)
著作権。。。映画・アニメの著作権はどうなっているかを確認、マンガの著作権もどうなっているか確認
アニメーターの権利問題・・・何の権利もない状態は適切なのか。。。つまり著作権は正しいのか、という問いになる
SNS社会とグレーゾーンカルチャーの相性は良くないという問題・・・グレーは水面下だから許容されているが、SNSはあらゆるものを表に出してしまうシェアカルチャー。
タイムラグ問題。。。今、グレーで見逃されても5年後、10年後に黒だとされる可能性(色紙もいつ描かれたものか)
グローバルカルチャーとも相性が悪いグレーゾーンカルチャー・・・
コンプラ社会とも当然相性が悪い
グレーゾーンは社会的条件によっては、かえって創作の萎縮を生む可能性がある。
ジャニーズ問題も結局はかつては、男性への性加害を報道機関すら「グレー」だと思っていたから報じなかったのではないか。それが今、黒になった(ある種のグローバル化によって)
私たちは今、日本社会に生きている、同時にグローバル社会にも生きている(特にSNSはそう)。2つの社会に同時に属している。(強制的に所属させられているというべきか)
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やっぱり法整備と細かい契約の慣習化は必要では。展開可能なグラデーションをしっかり定めるしかない気がする。
ポートフォリオ作れない問題も入れておくべきか。。。
Intro
– 騒動の経緯
サイン色紙が原作者に見せられる、ツイッターによって?
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その作品のアニメに参加したアニメーターが描いたものだという
↓
漫画家が著作権違反だとして、警告
森川ジョージ先生が海外ファンから見せられたコレクションに端を発した、海外のコミッションで描かれる色紙についての話 (2ページ目) – Togetter
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アニメーターを中心に、同人界隈にも波紋を呼んだ。
Body1 アニメーターに著作権がない理由
映像の著作権の帰属先。。。著作権法上より、アニメーターどころか監督にもない、会社に帰属するケースが多い。※アニメの著作権から引用していく
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これの是非。。。法律上正当ではある
マンガの著作権は当然作者に帰属している。そのキャラクターも同一性保持の観点から保護される。
権利を持たないアニメーターが勝手に描いてはいけないのは、著作権理解として正しい理解。
Body2 なぜアニメーターは傷ついているのか。
正しいのにどうして傷つく人が出ているのか。
ほとんど善意だったと思われるから。多少の商売をしていたとしても、自分の関わった作品は、原作者ではく著作者でもなく権利もないとしても、仕事をしたうえでの愛着も誇りもある。それが潰されたような気持ちになる人はいる。
Body2 波及効果
気持の問題とは別に、創作全般の法と運用の実態の問題について波及効果の大きい発言だった。
個人的なことする本人のツイートもあったが、これは波及効果の大きい話であることは間違いない
意図せぬ波及効果の大きさがあった問題と言える。
著作権者としてあれを言える権利は当然有しているが、文化の促進という面でどうなのかという点がある。個人的な問題だというけれど、その意思とは裏腹に波及効果の大きな発言だったことは確か。
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二次創作全般はどうなるのか、という観点にも関わる話になる。
同時にアニメーターの問題でいえば、ツイッターに原画やりましたとイラストをアップすることにもバッティングする要素を含んでいる。(このあたりは契約時にクリアしていると思うが)
ポートフォリオも公開しにくい。
– TPPで著作権の非親告罪化が議論された時も、最終的な線引きは、どうなったか。
具体的には、
①侵害者が侵害行為の対価として利益を受ける目的を有している場合や、著作権者等の利益を害する目的を有している場合であること、
②侵害される著作物等が、現に市場において権利者により有償で提供又は提示されている著作物等であること、
③原作のまま、著作物等に改変を加えずに利用する侵害行為であること、
④著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合であること、
という要件を示した。これにより、市販の作品等に対する海賊行為が非親告罪の対象となる一方で、二次創作行為については対象から除かれるとしている。整備法案も、この小委員会報告書の考え方に沿った内容になっている。
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つまり金銭的損害を与える、悪質性がある場合に非親告罪となる。漫画村とかファスト映画とか。
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それ以外のちょっとした二次創作とか、そういうのは見逃して創作を委縮させないでほしいという願いがここにはこもっている。努力した関係者たちの想いも入っている。
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それでも著作者がダメだと言えばダメと言える権利があるのだが。
Body3 グレーの運用について
気持の問題だけを論じても解決できない部分がある。
今回の騒動は、かつて(法的には)グレーな対応(グレーをどこかできちんと定義する)とは。。。何らかの法的問題はあるが、とりあえず(メリットもあったりするや、対応のコストなどの理由で)黙認されている状態を指すと思われる。
SNSと相性の悪い部分があるグレー運用。。。。グレーな二次創作カルチャーはある種、水面下で行われるから黙認され、著作者にも大きな金銭的損害を与えないがゆえに黙認されているもの。しかし、SNSのシェアカルチャーは表に出す文化。
グローバルカルチャーとも相性が悪い。。。僕らは(特にSNSでは)グローバル社会に強制的に存在させられている。これは不可避。
– コンプラ社会とも相性が悪い。。。違法行為に近いグレーゾーンは、立ち入らないことが企業コンプライアンスとして重要。このあたり、アメリカの企業などでは、法令遵守のゾーンだけで絶対に活動せよというところも多い。
法令順守ゾーン
グレーゾーン
違法ゾーン
今回の騒動の発端は、SNSで海外のファンからのシェアというものだった。しかもタイムラグもあったと思われる。最近描かれたものかどうか、確認できないが、
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この社会的条件の中では、グレーだから触らない。という判断はある程度合理性がでるので、むしろ創作活動を停滞させる可能性もあるのでは。
グレーゾーンカルチャーが豊かであるには社会的条件が必要。環境が変化したら立ち行かない部分が出てくる。
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グレーであることで、「やらない方が無難」という判断が増えれば、創作活動を逆に停滞させる恐れもある。
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契約をきちんと明記して、利用のグラデーションをはっきりさせる方が、創作活動を活発にできる可能性もあるのでは。
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二次創作等に関しては,各企業やタイトルごとにガイドラインを公表する動きも広がっている。
アニメの仕事に関しても契約内容を明記させる動きは増えていると思うが、今後はより細かく決めていくことになるのではないか。
全面的にアニメーターたちに使用許諾をする人がいてもいいし、全く使用させたくない人がいてもいい。アニメーターはそういう状況も含めて仕事を選択していくことになる。
二次創作の同人活動や個展の開催なども含めて、明記しておくといいのでは。売上の数%を還元することを条件にすることも場合によってはあるのでは。
Body5グレーはいつまでグレーでいられるか
ジャニーズの問題は、結局昔は黒ではなくグレーくらいの認識だったので見過ごしてきた面がある。特に報道しなかったことについては。
で、今は黒になったので、糾弾されている。
著作権関係で過去のグレーを黒にされることが起きないとは言えない。
グレーは法的にはリスキーで、それは今だけでなく、今後も続くリスクになる。
それは必ずどこかで委縮効果を生む。
契約で明記した方がはるかに安心感が生まれるのでは。
件のサイン色紙もSNSにアップしなければ騒ぎにならなかった。タイムラグを経て、アップされて可視化された結果としてのグレーゾーン議論が起きたとも言える。
グレーで創作を豊かにしきれない領域が増えているのはまちがいない。それは時代の変化。
この時代に創作活動を豊かにできる契約や法律のあり方を面倒くさいけど考える必要がある。
修正
一点、原稿全体として抽象度が高めですので、具体的なエピソードも織り込んで共感性を高めたいです。たとえば、アニメーターの不遇エピソードを強く訴えかける具体例として、「ベテランアニメーターでも権利がなくて個展を開けなかった」という逸話をサラッと入れていただけると良いかなと思いました。
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メモ終わり。
最終的には、TPPの時の著作権の非親告罪化にかんする議論の話は削っています。そこまで一つの記事で広げると読みにくいし、頭に入りにくいだろうと思ったので。
あと、ジャニーズ問題とか芸能界もグレーゾーンで運用してきたみたいなものも削りました。直線関係ない話なので。
とりあえず、今回の問題の見取り図としては、ある程度わかりやすく書けたのではないかと思います。参考にしてもられば幸いです。