弁護士JPに、『セクシー田中さん』の著者、芦原妃名子さんが死去した件でクローズアップされている著作者人格権について、詳しい弁護士に話を聞き、記事にしました。
『セクシー田中さん』問題で注目される「著作者人格権」 アメリカよりも強力に保護されていた原作者の権利とは? | 弁護士JPニュース
本当に悔しくて、苦しい事件です。何かできることはないだろうかと、弁護士JPのに相談して著作者人格権の行使について詳しく話を聞いてみようと思いました。これをみなが正しく理解していれば、もしかして違う結末もあり得たのではないか、詳しい経緯はまだわからない部分がありますが、そもそも原著作者の持つ権利が軽んじられている気がしてならないのです。
出版社も、映像制作側も、原著作者も、関わる全ての人がこの権利を正しく理解することからまず初めて、その上で契約、制作経緯にどんな問題があったのかを明らかにしていくことが今求められていると思います。
以下、原稿作成時のメモと構成案。
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シンプルに「著作者人格権」を解説する、そして今回のケースに(可能であれば)当てはめてみる。
参考
『セクシー田中さん』“改変”問題に漫画協会理事長「里中満智子氏」が緊急提言 「脅してくるような人にだまされないで」 | 概要 | AERA dot. (アエラドット)
漫画「セクシー田中さん」の実写ドラマ化を巡る問題から、原著作者の著作権を尊重するテレビ局のガバナンス体制のあるべき姿を考える – アサミ経営法律事務所
(1) 中泉 拓也 – 芦原妃名子さんの痛ましい事件から、著作者人格権や再創造の問題が再び脚光を浴びているので、少しやる気が出てきて、Xに書い… | Facebook
オプション・アグリーメントの交渉ポイント~小説を映画化する場合を例に~ 松島恵美|コラム | 骨董通り法律事務所 For the Arts
構成
Thesis
著作者人格権の重要さと大きなを再認識する
Point3つ
著作者人格権の基本的なこと
セクシー田中さんの場合、契約書がない場合、人格権の侵害か。そのレベル感
どうすればよかったか。原作者の権利の軽視が問題ではないか。
アメリカの事例もいれるか
ntro
セクシー田中さんの件、
あらまし、どう何を書くべきか
事の発端から書くか?
原作に忠実通りにやってほしいとのお願い。
何度もやりとりをしていたようだが、最終的には最終2話の脚本を自分で書いた。
SNSで論争に発展し、炎上状態となり、攻撃したいわけではなかったとツイートを最後に残し。その後、遺書のようなものを残し、命を絶ったと見られている。
SNSの攻撃性の問題もあるが、発端となった原作の改変を巡り大きな論争となっている中、著作者人格権が改めてクローズアップされている。
クローズアップされる、原著作者が持つ著作者人格権
これはどういうものなのかの基本的な部分を知財に詳しい弁護士、折田先生に解説してもらった。
Body1著作者人格権は譲渡できない著作者の権利
著作者人格権とはそもそもどういうものなのだろうか。折田先生はこう語る。
→著作物を創作した著作者が享受できる人格権で、公表権(著作権法18条)、氏名表示権(同19条)、同一性保持権(同20条)、名誉声望を害する方法での利用を禁止する権利(同113条11項)の4つがその内容です。著作物の財産的な価値についての権利である「著作権」とは別の権利であり、著作権とは異なり譲渡できない権利とされています(同59条)。
ポイントは著作権と異なり、譲渡不可能な現著作者が持つ権利であるということ。
Body2 契約書がない場合、どうなるのか。侵害とそのレベル感
著作者人格権は実務上どのように一般的に取り扱われるのか。
どういうとき、侵害になるか、契約書に不行使の定めがあった場合
著作者人格権は譲渡不可能なために、契約で不行使を約束させる場合がある。
→例えば、AさんがBさんにある著作物を創作する業務を発注したとして、著作権は創作者であるBさんに発生しますが、契約上はBさんの著作権を全てAさんに譲渡させる条件を設けるのが一般的な実務上の取扱いです。ただ、著作者人格権は譲渡できないので、「Bさんは、Aさんその他Aさんが指定する第三者に対して著作者人格権を行使しない。」という条件を定めます。このような著作者人格権の不行使特約は、有効だと考えられています。
契約書に人格権についての明記がなかったとしたら、同一性保持の侵害となるのか。
③『セクシー田中さん』のドラマ化をめぐっては、原作者がドラマ化に際して提示した条件が守られずに意図しない改変があったようです。契約書がない場合、これは同一性保持権を侵害したことになるのでしょうか。
→そうですね。漫画のありとあらゆる要素を忠実に同一性を保って実写化できないことは当然ですから、原作者として社会通念上許容すべき改変はあるわけですが、例えば漫画の台詞はほぼ忠実な再現が可能ですので、これを改変すれば同一性保持権の侵害になるでしょう。台詞に限らず、いかなる要素であれ、原作者が意図しないレベルの改変がなされたとなると、それが同一保持権の侵害になることは疑問の余地はないと思います。。
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社会通念上、許容すべき改変のラインは存在するのか。客観的に。
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④「同一性保持の侵害」に客観的な指標はあるのでしょうか(どれくらい改変したら侵害にあたるなど)。あるいは、現原著作者が納得しないものは全て侵害となるのでしょうか。
→上述のとおり、漫画の実写化に伴って社会通念上許容すべき改変があることは否定し得ないわけですが、客観的な指標を示すことは困難であって、程度問題といわざるを得ないところであり、最終的には司法の判断になります。とはいえ、原作者が納得できないレベルの改変であれば、ほぼ間違いなく同一性保持権の侵害が認められるでしょう。
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ちなみに、アメリカの場合と比較する人も多いが、日本の人格権の方がはるかに強力だという
アメリカの場合は?
→米国の著作権法の下では、著作者人格権は、視覚芸術著作物(visual art)に限られており、「自己が創作していない視覚芸術著作物の著作者として、自己の氏名を使うことを防止する権利」と「自己の名誉や名声を害するような、視覚芸術著作物の変更、切除その他の改変がなされる場合に、同著作物の著作者として氏名が使用されることを防止する権利」が明記されているだけです。公表権はありませんし、著作権者の名誉や名声を害しなければ、同一性保持権も機能しないので、日本の著作権法よりはかなり緩いです。ですから、他人の著作物を茶化したパロディ作品を創作することは、日本では常に同一性保持権の侵害の問題を孕んでいますが、米国ではパロディ作品は広く許容されています。
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日本の著作者人格権の守る範囲について少し触れる、公表件、氏名表示権、同一性保持権文化庁、著作者人格権について
これが強く機能すれば、ほとんどのパロディも二次創作も機能しなくなる可能性がある?
Body3出版社や映像制作側はどうすべきだったか。
ある意味、日本の法律の方が原著作者の権利を分厚く守っていることになる。ではなぜ、今回のような悲劇が起きてしまうのか、出版社や制作側がどうすべきだったのか。
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→漫画の実写化における原作者とのトラブルということでは、漫画家の佐藤秀峰氏が原作者である「海猿」を巡るトラブルが著名です。「海猿」の映画はヒットしましたが、もはやテレビやネットで見ることはできません。佐藤氏がノーといっているからです。
-映画はDVD化されてから観ました。
クソ映画でした。
僕が漫画で描きたかったこととはまったく違いました。―
-出版社は、テレビ局には「原作者は原作に忠実にやってほしいとは言っていますけど、漫画とテレビじゃ違いますから自由にやってください」と言います。
そして、漫画家には「原作に忠実にやってほしいとは伝えているんだけど、漫画通りにやっちゃうと予算が足りないみたい」などと言いくるめます。」-
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この佐藤氏の主張を前提とすれば、このような原作者の軽視が問題の根幹。今回の芦原氏の誠に痛ましい結果も正にこの問題といえます。原作者にとって、作品は自分の子どものようなものとしばしば形容されますが、それほど大切なものなのです。この思いを踏まえれば、原作者が脚本に注文を付けるのは当然のことなのですから、映像を制作する側は、このような原作者の思いをより尊重し、しっかりとこの思いに目を向ける必要があるのではないでしょうか。映像を制作する側には、原作者との十分なコミュニケーションを図り、視聴者のみならず原作者にも満足のいくような映像作りに期待したいです。
Concl
著作者人格権が協力でることが前提とした事業の組み立てをする必要が本来はあるが、それが意識されていない現状があるのでは。
著作者人格権を当然ある権利として、それを前提に全体の事業を組み立てられるべきで、出版社も映像制作側も著者もこれを意識する必要がある。
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メモ終わり。
詳しくは弁護士JPの記事を読んで欲しいですが、様々に重要なポイントについて語っていただけたと思います。
こんなことは合ってはいけないことです。ただ、この死に責任があるのは出版社とテレビ局だけでなく、SNS世論の過剰なヒートアップにもあると僕は思っています。このSNS世論には、明確な主体がないので反省機能が作用しません。実はここが一番やっかいな問題かもしれないと思っています。
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