Brancに、第1回コンテンツ産業官民協議会・第1回映画戦略企画委員会について書きました。
「映画は国の財産」と明記、コンテンツ産業の支援強化促す官民協議会が初開催 | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-
この開催が何を意味するのか、今後のコンテンツ産業についてどんな意義があるのかについて解説しました。
今年に入って、国の文化支援の議論が活発化しており、コンテンツ産業の支援をしっかりやっていこうという機運が高くなっています。まずはその重要な第一歩を刻めたというところでしょうか。第一回なので顔合わせ程度の意味かもしれませんが、とても意味の大きな発言もあったりしたので、内容をおさらいし、これまでの歩みも合わせて紹介しています。
課題も指摘していますが、ようやくまともな文化支援策が実現する可能性が出てきているので、期待しています。
以下、原稿作成時のメモと構成案。
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参照
本日、総理大臣官邸にて、コンテンツ産業官民協議会、映画戦略企画委員会の第一回目の会議が開催されました。
下記及び添付にて、参加メンバー、当日配布資料掲載URL、ぶら下がり写真、コメントをお送りいたしますのでご確認ください。
▼URL
関連の会議等開催状況|新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議|内閣官房ホームページ (会議資料)
令和6年9月9日 コンテンツ産業官民協議会・映画戦略企画委員会合同開催 | 総理の一日 | 首相官邸ホームページ
▼メンバー
コンテンツ産業官民協議会
【政府側構成員】
議長 内閣官房副長官(衆)
議長代行 内閣官房新しい資本主義実現本部事務局長代理
議長代行 内閣府知的財産戦略推進事務局長
公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長
総務省情報流通行政局長
文化庁次長
文化庁参事官(芸術文化担当)
経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ長
経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ文化創造産業課長
【民間側構成員】(五十音順)
浅沼 誠 株式会社バンダイナムコフィルムワークス代表取締役社長
庵野 秀明 アニメーション・実写監督・プロデューサー
市井 三衛 映像産業振興機構専務理事・事務局長
稲葉 延雄 日本放送協会会長
遠藤 龍之介 株式会社フジテレビジョン取締役副会長
大沢 たかお 俳優
翁 百合 株式会社日本総合研究所理事長
是枝 裕和 映画監督
坂本 和隆 Netflix合同会社コンテンツ部門バイス・プレジデント
辻本 春弘 株式会社カプコン代表取締役社長
松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科教授
松岡 宏泰 東宝株式会社代表取締役社長
村松 俊亮 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役社長
柳川 範之 東京大学大学院経済学研究科教授
山崎 貴 映画監督
映画戦略企画委員会
【政府側構成員】
議長 内閣官房副長官(衆)議長代行
内閣官房新しい資本主義実現本部事務局長代理
議長代行 内閣府知的財産戦略推進事務局長
公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長
文化庁次長文化庁参事官(芸術文化担当)
経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ長
経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ文化創造産業課長
【民間側構成員】(五十音順)
庵野 秀明 アニメーション・実写監督・プロデューサー
市井 三衛 映像産業振興機構専務理事・事務局長
内山 隆 青山学院大学総合文化政策学部教授
大沢 たかお 俳優
是枝 裕和 映画監督
近藤 香南子 アングルピクチャーズ株式会社現場スタッフマネージャー
松岡 宏泰 東宝株式会社代表取締役社長
山崎 貴 映画監督
和田 丈嗣 株式会社プロダクション・アイジー代表取締役社長
▼会議終了後の是枝監督ぶら下がり取材、是枝監督
会議後の囲み取材で是枝監督は、会議において、「人材育成を担うのは一番は制作現場なので、そこで働いて生活できるような場所になるように改善していくために何ができるか、ということを中心にお話ししました。時間をかけて(今日)ここまできた。みなさんと問題意識は共有できたので、その認識をどういう風に現場に還元するか、具体的な動きはこれからだと思います。クリエーター支援基金というものがいい形で実現したとして、どのように現場に落とし込んでいけるか?これからの議論になるので気を抜かないようにしていきたい。」と述べた。また、記者からの「スタッフ、クリエイターの待遇改善、未来の担い手に対しては?」という質問には、「自分は監督なので、監督がまず変わらないといけない。スタッフにどのような環境で働いてもらうかは、監督、プロデューサーの意識改革がまず必要。その上で、その下支えを業界なり、政府なりにしてもらうかが課題。まずは、自分の現場から。」と答えた。さらに、政府と一緒にやることについてのスタンスは?という質問には、「先日(4/17)第26回新しい資本主義実現会議でも下支えはするが内容には口を出さないと繰り返し言ってもらっているので、そこは大前提として死守しながら、自分たちのことは自分たちで考えて、決める。その上で連携できればと。」と締めくくった。
政府のコンテンツ産業官民協議会に、庵野秀明ら参加 映像産業に税制優遇求める
映画・アニメ 国際競争力の強化にクリエーター育成後押し 政府 | NHK | エンタメ
映画戦略企画委の第1回会議、メンバーと議論の中身 – [文化通信.com]
政府/コンテ産業官民協・映画戦略企画委第1回開催 – [文化通信.com]
これまでの歩みの記事
4月:政府は今度こそコンテンツ産業の人材支援に向かうか。是枝監督も提言した新しい資本主義実現会議の内容とは | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-
6月:縦割り行政を打破できるか。映画に特化した支援機関の設立に向け一歩前進 | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-
史料2「映画戦略企画委員会の開催について」はこの一文から始まる。
映画は、我が国の誇るべき財産である。
アニメ制作会社数の増加
2011年419社、2020年は811社、
庵野秀明の資料
アニメや特撮映像に関わる資料を収集、整理し、保管し、研究し、デジタル化し、利活用可能な状態とし、世に広報し、これらの活動の為の人材を育成していくには、個別の企業や個人の利害を超えることが必要です。中間生成物に直接触れる事は子供や若者がクリエイターへの道のキッカケとなり、更に現役クリエイターのモチベーションの高揚、センスや技術の向上にも役立ちます。この国には是非、中核となる拠点、組織を整備いただくことを希望します。
アニメ業界の就業環境をご心配いただく声は根強いですが、世界的なアニメ市場拡大もあり、状況は随分改善されました。今は必ずしも、アニメ業界=ブラックではありません。
諸外国では、早くからアニメを含めた映像産業の幅広い波及効に着目し、いわゆるタックス・クレジット等、映像産業への税制優遇制度を設けており、その数は少なくとも 50 ヶ国以上にのぼります。然るに、日本にはこの種の制度がなく、我々は国際競争の観点で不利益な立場に置かれています。イコールコンディションを整えていただく意味でも、なるべく早期に映像産業に対する税制優遇制度を設けていただくことを希望します。
是枝裕和の資料
学校教育の場 〜「観客」の育成〜
⼩学校・中学校の教育カリキュラムの中に⾳楽や図⼯と同様に映像(もちろん映画に限りません)という科⽬を設置し、こどもの⽣育環境にとって現在最も⾝近で影響⼒のある映像に対するリテラシーを⾼める取り組みを公的に⾏う必要があります。その為には現在増えつつある映像系の⼤学もしくは教育学部にこの「映像教育科」を設置するなど教育⽀援体制を強化して、卒業⽣が教育に従事出来る将来設計を可能にしたいです。
ミニシアター 〜「鑑賞」の場の確保〜
①に関連してですが、学校で⾏うこの映像教育を全国に約 100 館あるアートハウス(ミニシアター)との連携で⾏なっていく。
現在経営難(DCP システムのレンタル期限が 2025 年に迫っておりこの設備投資の 1000 万円が準備出来ていない映画館が全国に約 70 館あります)に喘いでいる劇場そのものに公的助成をするというのは今までも実現していないのですが、このような教育プログラムを⽀援することは可能なのではないか?と考えます。
**将来的にはこのミニシアターを地域の図書館と同じような映像⽂化発信基地として定着させ、ここにも映像学芸員として、映像系⼤学⽣が就職出来るようにしたいです。**
これはある意味業界にセイフティーネットを作る取り組みです。「映画なんてやっても⾷えないし、つぶしがきかない」という常識を変えていくことが結果的には⼈材のパイを増やすことにつながるはずです。新しい資本主義実現会議の場で「コンテンツ産業から⼤⾕翔平を」とある委員の⽅が⾔われてましたが、⼤⾕が⽣まれる為の⼟壌を豊かにすることがまずは必要です。
世界⽔準に近付けると制作費が上がります。恐らく今の 1.5 倍必要です。そうなると、資⾦回収のリクープラインが上がりますから、現在作られている映画の本数が減るはずです。リスクの⼤きい、つまり、チャレンジ精神のある企画から消えていきます。よっぽどお⾦を出す側に「育成」の意識が無い限り難しいでしょう。この⼤きな志を持つ⼩さなインディペンデント映画を守っていくことは、将来的な⼤⾕を⽣む為にも必要です。これは現在⾏われている⽂化庁や VIPO に代表される取り組みを1本化し、明確な指針のもとに拡充していくことで可能になるだろうと考えています。
東宝社長松岡さんの資料
1映画産業に関する統括的な公的機関(対外的な窓口)の設置
2 映画関連のクリエイターが安心して持続的に働ける環境の整備
3 日本映画製作に関する支援の強化
・文化庁「日本映画製作支援事業」 (芸文振補助金)の拡充
・文化庁「国際共同製作映画支援事業」(文化芸術振興費補助金)の拡充
・文化庁「若手映画監督育成事業(ndjc)」の拡充
・映画ファイナンススキームの確立(官民ファンド設立、日本版SOFICA導入、完成保証保険実証実験)
4 日本映画の海外展開・発信に関しての環境整備への支援
・東京国際映画祭(TIFF)及びTIFFCOMへの支援の拡充
5 映画のロケ誘致及び映画ロケ撮影における規制緩和促進に関する支援
岸田総理
映画・アニメ・音楽・ゲーム・マンガなど、日本のコンテンツ産業は、鉄鋼や半導体産業に匹敵する輸出規模があり、その競争力の源泉は、会社と共に、映画監督や制作現場の方といった、クリエイター個人にあります。
他方で、コンテンツの制作現場では、労働環境や賃金の支払といった側面で、クリエイターが安心して働ける環境が未整備、という課題があります。
クリエイター・コンテンツ産業に対する一貫的で強力な支援体制を構築するため、クリエイター支援・事業者支援双方を束ね、クリエイター支援基金に統合し、施策の抜本強化を図ってまいります。
本日、委員の皆様から頂いた意見をしっかりと念頭に置いて進めてまいりますので、コンテンツ産業活性化戦略の早期実行に向けて引き続き御協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
構成
Point3つ
これまでの議論の経緯・・・岸田総理の新しい資本主義会議で議論されてきた。今年4月、6月の動きをおさらい、、庵野さんの出席した会議も
重要論点について、、、東宝の社長、松岡氏も資料を提出して、
女性が少なすぎる現状を打開しないといけない。
Intro
6月の新しい資本主義会議で実施を決定していた、コンテンツ産業官民協議会と映画戦略企画委員会の第一回会議が開催された。
官民連携の一元化されたコンテンツ支援の実現のためにようやく一歩を踏み出せた。
Body1 これまでのおさらい
4月:政府は今度こそコンテンツ産業の人材支援に向かうか。是枝監督も提言した新しい資本主義実現会議の内容とは | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-
6月:縦割り行政を打破できるか。映画に特化した支援機関の設立に向け一歩前進 | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-
文化庁、メディア芸術ナショナルセンター整備に向け予算要望 9300万円計上
漫画やアニメの拠点整備で初会合 庵野監督ら、役割議論―文化庁:時事ドットコム
肝は、これまで経産省、文化庁などバラバラだったコンテンツ行政を一元化して機能を強化していくための会議であるということ、その下に映画の戦略委員会が置かれるという体制になるということ。
Body2 重要論点について
史料2「映画戦略企画委員会の開催について」はこの一文から始まる。
映画は、我が国の誇るべき財産である。
↓
東宝の社長もメンバーに加わり、資料を提出している。
東宝社長松岡さんの資料
1映画産業に関する統括的な公的機関(対外的な窓口)の設置
2 映画関連のクリエイターが安心して持続的に働ける環境の整備
3 日本映画製作に関する支援の強化
・文化庁「日本映画製作支援事業」 (芸文振補助金)の拡充
・文化庁「国際共同製作映画支援事業」(文化芸術振興費補助金)の拡充
・文化庁「若手映画監督育成事業(ndjc)」の拡充
・映画ファイナンススキームの確立(官民ファンド設立、日本版SOFICA導入、完成保証保険実証実験)
4 日本映画の海外展開・発信に関しての環境整備への支援
・東京国際映画祭(TIFF)及びTIFFCOMへの支援の拡充
5 映画のロケ誘致及び映画ロケ撮影における規制緩和促進に関する支援
↓
統括的な公的機関の設置を東宝社長が遅ればせながら言及している。
かねてからaction4cinemaの是枝さんは、東宝など映連に対して、民間でそうした組織の設置を提案していたが、法律がかわればやるという認識だった。政府が動いたことで東宝の重い腰が上がったとみるべきだろう。
是枝監督が、教育機関との連携でのミニシアター支援策を提案。
Body3 女性が少なすぎる現状を打開しないといけない。
今後、メンバーに女性が増える必要がある。
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メモ終わり。
岸田政権は9月で終わりですが、新政権にはこの流れを引き継いでいただきたい。このコンテンツ産業支援策は、岸田総理が始めた「新しい資本主義実現会議」で議論されてきたものなので、正直言うと、もっと具体的な形が定まってから、退いてほしかったです。政治情勢が混沌とすると、この話し合いもベンディングになる可能性があるので。
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