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柳楽優弥 坂東龍汰出演『ライオンの隠れ家』完結!障害者と社会の関わりを丁寧に描いたドラマ

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ウミネコが飛び立つように、二人の兄弟が飛び立つ。

こういう結末になったのか。最終話直前のレビューでは、洸人(柳楽優弥)の「小説家になる夢」を追いかける決断でエンドかなと思っていたが、大学に入り直してやり直すという展開になったか。

『ライオンの隠れ家』最終話は、小森兄弟が2人とも今の家から巣立つこととなった。その展開をウミネコが自由に飛び立つということになぞらえるように。

10話で急に失踪した洸人は案外すぐに戻ってきた。ふらふらと東京に行って、元いた大学の前で何かを思う洸人。一方の美路人(坂東龍汰)は依頼された絵を完成させていた。

ずっと弟のために生きてきた洸人は、自分のための生きる方法がわからないのだろう。そして、そうやって生きてきたから、自分にはなにもないということに気づく。そして、それを改めて見つめ直して、自分の道を選ぶ過程を丁寧に描いた最終話だった。

「行ってきます」と姉の愛生(尾野真千子)に挨拶して出ていくのはエモい。だって、かつて失踪した姉ですからね、その姉が今度は送り出す側として家を守る立場になって、弟たちが巣立っていく。立場が逆転しているのがまたなんとも言えない良さがあった。

正直、10話で事件のすべては解決していたので、11話は良い話だったとしても蛇足になるのではないかと不安だったのだけど、杞憂だった。上手く主人公たちの巣立ちの物語として、暖かい終りを迎えた。

貞本のパーティでの洸人のスピーチは良かった。自閉スペクトラム症の弟のことをあまり他人に話さなかったと吐露できたことによって、自分に欠けていたものを認めることができたわけだ。庇護対象と思っていた弟をリスペクトしているとも言っていた。

自閉スペクトラム症の弟を守る生活から、ライオンという小さな男の子を守る展開となり、事件の解決を通じて、守られていたのは自分も同じだと思い至る主人公の心の成長を丁寧に描けた良作だった。

坂東龍汰は素晴らしい演技を見せたと思う。ASD監修で「さくらんぼ教室」というところの方が監修に入られている。プロデューサーの熱意が動かしたのだというのが、このエントリーでわかる。
ASD監修『ライオンの隠れ家』いよいよ本日・最終回!22:00 | さくらんぼ教室

監修者のインタビューもある。こちらもとても読み応えがある。
子どもたちの成長を見守り続けてきた『ライオンの隠れ家』ASD監修・伊庭葉子氏が語る「互いを知る」ことの大切さ|TBSテレビ

本作は障害者と社会との関わりを丁寧に描いたという点も良かったのではないか。登場人物の誰もが、みっくんをありのままに受け止めているのも印象的だった。だからこそ、最終話で、洸人と美路人、両方の巣立ちを等しく描くという姿勢も、健常者も障害者も等しい存在と見て描いているのだということなんだろう。

包摂とか受容とか、そういうことではなく当然に社会に生きている存在として描くという姿勢が良かった。わかりあうとか、障害者も同じだ、とか安易な綺麗事に終わらせない、特異性も十分に描いた上で、当然に生きている人として描くことに成功していた。
 
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