さわだーじ、お前・・・。
『海に眠るダイヤモンド』最終話は、すべての考察要素と謎が明らかにされるのか、そして端島と現代を股にかけた人間ドラマがどのように結末を迎えるのか、注目された。【8話までの感想】
テレビドラマとしては大型の予算をかけた作品として、また、野木亜紀子、塚原あゆ子、新井順子のトリオ作品としても注目された。
残るなぞは、主に3つ。
・鉄平(神木隆之介)とリナ(池田エライザ)は駆け落ちしたのか否か?
・滝藤賢一演じる古賀は賢将(清水尋也)と百合子(土屋太鳳)の息子なのか?
・鉄平のノートを黒塗りしたり一部を破り取ったのは誰で、そこには何が書かれていたのか?
これらのきれいに答えた上で、ドラマとしての決着をしっかりつけないといけない。しかも、端島の過去パート現代パート両方ある。2時間スペシャルとはいえ、結構いっぱい詰まっていて、盛りだくさんの2時間であった。
鉄平とリナは駆け落ちしたのか否か?
まず、鉄平とリナは駆け落ちではなかった。リナと進平(斎藤工)の子供・誠を助けるための苦渋の決断だった。やくざ者に追われていたリナだが、そいつらがまたも端島にやってきて、以前進平が殺した男を探して誠を誘拐。誠を救うためにはやくざ者からリナと誠、鉄平の3人は小舟で逃げていた。まあ、駆け落ちではなかったわけだ。
リナの過去がここで伏線として生きてきた。あの問題は解決していたのかと思いきや、ここでガツンと来た。しかも草笛リナは全くの偽名だった。誠の出生届を進平の前の妻、荒木栄子の名前で出すことで、誠の保険加入をする。前の奥さんの死亡届をだしていなかったらしい。
事情を知らない朝子(杉咲花)は待ちぼうけ。小さい頃に鉄平にもらった瓶を片付けるカットが切ない。そして、いづみさん(宮本信子)の結婚相手だった銀座食堂の池ヶ谷寅次郎に対しても、いづみさんは愛情を持って夫婦をやっていたこともわかってきた。いづみさんの娘(美保純)はお父さん子だったらしい、きっといいお父さん子だったんだろう。
滝藤賢一演じる古賀は賢将と百合子の息子なのか?
その通りだった。そして鉄平のノートをいづみさんに渡したのは、古賀だった。そして、そのノートを破ったり黒塗りしたのは、鉄平自身であった。そして、実はもう一冊のノートがあることが判明、それを隠したのはさわだーじこと秘書の澤田(酒向芳)だった。
鉄平のノートを黒塗りしたり一部を破り取ったのは誰で、そこには何が書かれていたのか?
これは最大のサプライズかもしれないが、さわだーじは、リナと進平の息子・誠だった。澤田は、鉄平が失踪せねばならない理由はリナと進平にあると思っており、自分たち家族の罪が明るみになることを恐れたというのだ。秘書になったのも、もともといづみさんのことを知っており、母親のリナがいづみさんの活躍を新聞で追いかけていたそうだ。
さわだーじにここまで大きなドラマが用意されていたとは。この数奇な運命のドラマは引き込まれた。やくざ者から逃げた鉄平とリナだが、鉄平は自分ひとりが罪を背負い、リナと誠は平穏に暮らす道を作り出す。鉄平は、一人、各地を転々とする生活をおくることを決意する。想像以上に過酷な人生を送っていてびっくりだ。
端島ロケの素晴らしい効果
すべての真相がわかって、いづみさんと玲央は端島へと向かう。ここでまさかの本物の端島ロケのシーンがあるとは思わなかった。ここまでCGとオープンセットで描いてきた活気ある端島の廃墟は、時間の流れの残酷さと寂寥感を最大限に表現していた。やはり、本物の持つ力は強い。実際の廃墟の端島は、確かに生活していた跡が感じられるのだ。そして、どんなに栄えたものもいつかは滅んでいく、諸行無常、盛者必衰だ。今の端島を目の当たりにして、緑が生い茂っている光景を見て、いづみさんは「人間がいなくなれば簡単に生えてくるのは、お前たちは」と言うが、人が滅んで緑が栄える。過去に屋上緑化を推進していた朝子にとっては複雑だろう。
そして、鉄平の現在の居場所が判明。しかし、すでに故人であったので直接の再会は叶わなかった。しかし、鉄平の記憶の中にはずっと朝子がいたことがわかり、いづみさんの心は晴れていく。
人は死んだものと共に生きている
とても良い最終話だった。石炭は死骸だ。死骸に端島は生かされていた。それは生きている者は死んだ者とともに生きているということではないだろうか。石炭はそういうことのメタファーだったのかもしれない。端島の関係者はいづみさん以外、もう故人だ。みんな死んでも、いづみさんとともに生きている。そう映像で力強く思わせる最終話だった。
玲央と鉄平を神木隆之介が演じたことの意図は、物語上で血縁などの関係ではなかった。二人を繋いだのは、時を超えた想いのようなものだった。でも、それくらいのつながりで良かったかもしれない。日本の過去は、今を生きる僕らにとっても無関係ではない、当たり前だけど、過去があって今の僕らがある。僕らも過去の死者とともに生きているのだし、生かされているのだと思う。
しかし、いづみさんを演じた宮本信子さんのチャーミングさは素晴らしいな。最後にインスタデビューするのもなんか良い。なんでインスタにしたのだろう、脚本的にどういう意図なんだろう。単純に今っぽいことやらせようということなのか。気持ちが若返ったというか。
現代パートのドラマも家族の絆が戻ってきて、きちんと落着した。玲央も新たな人生を初めて、きれいに物語が決着した。人の人生は色々だ。波乱万丈にいろんなことが起きて、大変なこともあるけれど、それぞれの生きた記録と記憶は振り返ってみればかけがえのないものなんだな。誰の人生も価値があると思わせてくれる良作だった。
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